「大きく成長し過ぎた柿の木を剪定して小さくしたい」と思っていませんか?
庭の広さに合った大きさにして、ついでにキレイな樹形に仕立てられたらうれしいですよね。
じつは、柿の木は今まで放置されていた場合であっても、自分で簡単に仕立て直すことができます!
なぜなら切るべき枝の選び方や切り方はとてもシンプルだからです。
また、剪定方法や剪定時期を間違えなければ枯れてしまうこともありません。
つまり、初心者でも安心して剪定できるということ!
当記事では、あなたが今すぐにでも柿の木を剪定できるように、以下のことを解説します。
- 大きい柿の木を小さくする剪定方法
- 切るべき枝の選び方と切り方
- 柿の木に適した剪定時期
- 柿の木の剪定に必要な道具
- おいしい柿の実を収穫する方法
お読みいただければ、伸び放題だった柿の木もスッキリとまとまり、見栄えの良いお庭を作ることができます。
また、来年以降はおいしい柿の実の収穫を楽しむこともできるはずです。
ぜひ参考にして柿の木の剪定を覚えてください!
目次
放置していた柿の木を小さくする剪定方法
最初にお伝えするのは、放置して大きく成長してしまった柿の木を、小さく切り戻す剪定方法です。
やることはたった2つだけ!
- 幹を切って樹高を下げる
- 長い枝を分岐点のつけ根で切る
単純に「高い部分」と「横に出っ張っている部分」を切り取るということです。
これだけで今まで伸び放題だった柿の木も小さくまとまります!
切り方や切る時期に注意すれば、枝をたくさん切り落としても枯れる心配はありません。
切る時期については、のちほど「柿の木を枯らさないための剪定時期」でご紹介しますので、先に切り方を解説していきます。
幹を切って樹高を下げる
幹は切らない限り上に向かってどんどん伸び続けます。
そのため、まずは幹を切ってそれ以上高くならないようにしなければいけません。
幹を切る位置と切り方について、図を使って説明していきます。
幹を切る位置
幹を切る位置は、幹から生える枝のすぐ上です。
下図でいうと②~⑤のどれかになります。
①は残す枝が細すぎるため切ってはいけません。
残す枝が細いと木が弱ってしまい枯れることがあるため、最低でも直径が幹の3分の1の太さがある枝を残すようにしましょう!
②~⑤であればどこで切ってもかまいません。
②で切ってもまだ高いと感じるのであれば③で切る、③でもまだ高い場合は④で切る、という具合に理想の高さに近い場所を探して、幹を切るようにしましょう!
実の収穫を楽しみたいのであれば、幹の高さは2m前後にするとよいです。
それ以上の高さにすると、手の届かない場所に実が付いてしまい収穫が大変になります。
⑥と⑦に関しては、残す枝の数が少なすぎるため切ってはいけません。
幹から生える枝を主枝といいますが、柿の木では最低でも主枝を3本は残しましょう。
主枝が2本以下だと充分なエネルギーを得ることができず枯れてしまうことがあります。
幹は一気に短く切りすぎると枯れてしまうことがあります。
そのため、一度に切るのは最も高い位置から1/3程度までにしましょう!
それ以上短くしたい場合は、一年後にまた切るようにしてください。
幹の切り方
次に幹の切り方ですが、下図の赤線のラインで切るようにしてください。
木の幹と枝の間にはバークリッジと呼ばれるひだのようなものがあります。
バークリッジの先端部分(C点)から真っすぐ横切った箇所(B点)とバークリッジの少し上(A点)を結ぶ線が切り口になります。
この切り方はCODIT論という考え方に基づいたものです。
参考書籍:『現代の樹木医学』 ALEX L. SHIGO 著 一般社団法人 日本樹木医会 訳・編
CODIT論とはアメリカの生物学者が提唱した理論ですが、現在ではもっとも腐朽菌の侵入を防ぎやすい切り方とされています。
※腐朽菌:木を腐らせる菌。切り口などから侵入して木の成分を分解する。
幹の切り方にはほかにも以下のような方法がありますが、いずれもCODIT論と比べると腐朽菌が侵入して枯れてしまうリスクが高いです。
そのため、幹を切るときは必ずバークリッジを確認して、適切な角度で切るようにしましょう!
長い枝を分岐点のつけ根で切る
幹を切って高さを決めたら、次は長い枝を切っていきましょう。
例えば、柿の木が下図のような形になっていた場合、赤線が枝を切る場所になります。
赤線箇所を切ると下図になります。
だいぶスッキリしましたね!
このように「この枝少し長いなぁ」と感じる枝は、どこから伸びているかをたどり、分岐している箇所から切るようにしましょう!
1つ目の分岐点だとまだ長いようであれば、2つ目の分岐点までたどってみてください。
そうして枝の分岐点をたどっていくことで、ちょうどいい長さを探して剪定しましょう。
このときの注意点としては、枝を途中で切ることはしないということ。
上図〇印箇所のように、枝は必ず分岐している箇所の上で切るようにしてください!
✕印箇所のように枝を途中で切ってしまうと、その枝には十分な養分が行かなくなり、最終的には枯れ枝になってしまいます。
枯れ枝は病害虫の原因にもなってしまいますので、枝を途中で切ることはしないようにしましょう。
柿の木を美しくするために切るべき3つの枝
幹と長い枝を切るだけで、放置していた柿の木はずいぶんと小さくなります。
大きくなりなりすぎてお困りの場合は、それだけでも解決できるでしょう。
しかし、せっかく柿の木が庭にあるのであれば、見栄えのよい美しい柿の木にしたいと思いませんか?
もし美しい柿の木にしたいとお考えであれば、以下の3つの枝も剪定してしまいましょう!
- 真上に伸びている枝
- 内側に伸びている枝
- 混み合っている枝
これら3つの枝を剪定することで、健康的な木に育ち見た目がさらにキレイになります。
それぞれどのような枝なのか、また、どのように切ったらよいのか紹介しましょう。
真上に伸びている枝
真上に向かって勢いよく伸びる枝は「立ち枝」や「徒長枝」と呼ばれます。
基本的に木は上へ上へと枝を伸ばす性質があるため、立ち枝には養分が多く行きわたります。
立ち枝を残しておくと、立ち枝だけがどんどん太く長くなり、そのほかの枝は細いままであったり枯れてしまったりするのです。
その結果、縦に長い樹形になってしまい見た目が不格好な木になってしまいます。
反対に、立ち枝を切り取っておくと全体にまんべんなく養分がいきわたり、横に広がるキレイな木に仕上がります。
そのため、立ち枝はすべてつけ根から切り取るようにしましょう!
内側に伸びている枝
木の内側(幹)に向かって伸びている枝は「内向き枝」や「逆さ枝」と呼ばれます。
内向き枝は木の内側に向かっているため、日陰になりやすく枯れやすいです。
また、樹形を作る枝にもなりませんし、ほかの枝と絡んで病害虫の原因になってしまうことも。
内向き枝に養分を与えるよりは、その分をほかの枝や実に行きわたらせるほうがよいので、立ち枝と同様にすべてつけ根から切り取るようにしましょう!
混み合っている枝
立ち枝や内向き枝のような特殊な生え方をしている枝ではありませんが、混み合っている枝も切るべき枝になります。
例えば、下図のような枝の生え方をしていた場合、赤線箇所で切るとよいです。
赤線箇所で切ると下図のようになります。
どうでしょう、スッキリした印象を受けるのではないでしょうか?
枝を選ぶときのポイントとしては3つあります。
ポイント1.枝と枝の間に均一のすき間を作る
ポイント2.下に向いている枝を切り、横や斜め上に向いている枝を残す
ポイント3.できるだけ枝先が「八」の字になるようにする
枝と枝の間にすき間があると、枝がぶつかることがなくなりますし、日陰ができて枯れてしまうこともなくなります。
また、下に向いている枝は日陰になりやすいため、できるだけ横向きや斜め上向きの枝を残すようにしてください。
枝先は「八」の字のような二股にわかれるようにすると、すき間が作りやすいですし、見た目も美しくなります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、失敗してもまた枝は生えてきますので、まずは思い切って剪定してみてください。
慣れてきたらどこを残すべきなのかが自然とわかるようになります!
柿の木に実をつけるために残すべき枝
さて、ここまでは柿の木を小さくする剪定方法、柿の木の見た目を美しくするために切るべき枝を解説してきました。
次は、柿の木に実をつけるために残したほうがよい枝を紹介します。
先ほど紹介した切るべき3つの枝は、柿の木の見た目をスッキリさせることが目的であれば、切ってしまって問題ありません。
しかし、実をつけたいのであれば例外的に残したほうがよい枝もあるんです!
どのような枝を残すべきなのか解説します。
先端にふっくらと太った芽がついている枝はできるだけ残す
柿の木に実をつけたい場合は、枝の先端部分にふっくらと太った芽がついている枝を残すようにしてください。
先端にあるふっくらと太った芽は「花芽」と呼ばれ、来年に実をつける枝へと成長します。
もし花芽がついている枝をすべて切り落としてしまうと、来年実がつくことはありません。
そのため、柿の実を収穫したい場合は花芽がついた枝は残す必要があります。
ただし、花芽があるからといって花芽つきの枝をすべて残すと、今度は樹形が整わなかったり枝が混み合ったりすることもあります。
全体のバランスを考えながら、残す枝と切る枝を選ぶようにしましょう!
柿の木を枯らさないための剪定時期
ここまでが柿の木の剪定方法と枝の切り方になります。
ここからは柿の木に適した剪定時期を解説しましょう。
柿の木は剪定時期を間違えると、枯れてしまったり実がつかなかったりします。
適した時期に剪定をすることで、健康的に育ち毎年安定して実が収穫できるようになるため、覚えておきましょう!
本格的な剪定は11~3月におこなう
枝をたくさん切り落とすような本格的な剪定は、葉っぱが散った後の11~3月におこなってください。
柿は冬に備えて夏の間に養分をたくさん体内に蓄えるため、冬に枝を切っても枯れることはほとんどありません。
反対に、夏に枝を切ると光合成ができなくなり枯れてしまうおそれがあります。
そのため、葉っぱが散ったあとの11~3月に剪定するようにしましょう!
軽い剪定なら6月にもできる
枝を数本切り落とす程度の剪定であれば、6月頃におこなっても問題ありません。
冬の剪定で切り忘れた枝や、残したけどやはりいらないかなと思う枝は、6月に切ってしまいましょう!
とくに、枝が混み合い日陰になっている箇所は切ってしまったほうがよいです。
日陰だと光合成ができないため、養分を吸い続けるだけの枝になってしまいます。
そのような枝に養分を与えるよりは、光合成するための枝や実をつけるための枝に養分を与えるほうがよいです。
そのため、6月になったら柿の木全体を見渡してみて、日陰にある枝は切るようにしてください。
柿の木の剪定に必要な道具
さて、柿の木の剪定についてだいぶわかってきたのではないでしょうか。
次は柿の木の剪定に使う道具について紹介します。
まだ剪定したことがない方は、剪定道具をなにもお持ちではないかと思います。
ですので、これから初めて剪定する方に向けて必要な道具を一通りお伝えします。
必要な道具は以下の5種類です。
道具 | 用途・選び方・詳細 |
剪定バサミ | 直径1.5cm以下の枝を切るための道具。 剪定でもっとも使用頻度が高いため、手になじみ使いやすいものを選びましょう。 |
ノコギリ | 直径1.5cm以上の太い枝を切るための道具。 できるだけ軽いもののほうが疲れにくくオススメです。 また、刃が折り畳み式で持ち手部分に収納できるタイプだと、保管するときに場所を取らずケガもしづらいです。 |
手袋 | ケガをしないための道具。 素手でおこなうと手を切ったりするおそれがあるため、軍手などを用意しておきましょう。 ゴム付きのすべりにくいものだとより安全です。 |
脚立 | 高い位置の幹や枝を切るための道具。 新たに購入する場合は、四点脚立よりも園芸用の三点脚立の方が場所を取らないためオススメです。 すでに四点脚立をお持ちの場合は、一度使ってみて不便だと感じたら三点脚立の購入を検討してみてください。 |
癒合剤 | 太い枝の切り口に塗り、病原菌の侵入を防ぐための道具。 直径1.5cm以上の幹や枝を切る場合は、切り口に癒合剤を塗っておきましょう。 必ずしも癒合剤がないと木が枯れてしまうわけではありませんが、あったほうが病原菌侵入のリスクは低下できます。 直径1.5cm以下の細い枝には塗る必要はありません。 |
上表の5種類があれば柿の木の剪定ができますので、事前に必ず用意しておきましょう!
どれもホームセンターや通販などで購入することができます。
おいしい柿の実を収穫する2つの方法
最後になりますが、よりおいしい柿の実を収穫する2つの方法をお伝えします。
普通に柿の木を育てていても実はつきますし、収穫して食べることもできます。
しかし、せっかくなら農家の方が作るような甘くておいしい柿を食べたいと思いませんか?
じつは、収穫するまでにたった2つの作業をおこなうだけで、おいしい柿の実を作ることができるんです。
その作業をおこなうと収穫できる実の数は減りますが、味の質は向上します!
また、隔年結果を防ぐことにもつながりますので、ぜひ実践してください。
※隔年結果:収穫できる果実が多い年と少ない年を繰り返す現象。収穫量が安定しないため、農家では隔年結果を防ぐように育てている。
その2つの作業について紹介します。
4月下旬~5月上旬に弱い蕾を摘み取る【摘蕾】
おいしい柿の実を作るための1つ目の作業は、弱い蕾(花)を摘み取る「摘蕾(てきらい)」と呼ばれる作業です。
開花する直前の4月下旬~5月上旬におこないます。
摘蕾の適期は短いため逃さないように注意しましょう。
やり方は以下の法則に従って蕾を摘み取るだけです!
- 葉っぱが5枚以下の結果枝についている蕾は、すべて摘み取る
- 葉っぱが5枚以上の結果枝についている蕾は、1つだけを残してほかは摘み取る
- 残す蕾は「枝の4節から5節程度」にある「外側」の「大きな蕾」
- ガク片が2~3枚の不完全花は、すべて摘み取る
※ガク片:花の外側にある葉。
結果枝とは、去年生えた新しい枝(結果母枝)から生える枝です。
蕾がつくのは結果枝だけですので、わかりづらい場合は蕾がついていたら結果枝であると覚えておいてください!
摘蕾をおこなうことで残った蕾に養分が集中するようになるため、より質の高い実が育ちます。
7月上旬~中旬に未成熟の実を摘み取る【摘果】
おいしい柿の実を作る2つ目の作業は、未成熟な実を摘み取る「摘果(てきか)」と呼ばれる作業です。
6月の生理落果(せいりらっか)が終わった後の7月上旬~中旬におこないます。
※生理落下:物理的ではなく生理的な原因で実が落ちること。原因は多岐に渡り、受粉が不十分、実の数が多い、日照不足、肥料の過不足などが考えられる。
生理落下前に実を摘み取ってしまうと、残した実が生理落下することで実の数が極端に減ってしまうおそれがあります。
そのため、必ず生理落下が終わってから摘果するようにしましょう!
7月に入っていれば生理落下はほぼ終わっています。
摘果では、1つの結果母枝につき1~2個の実を残すのが目安です。
以下の基準を参考にして質がよい実を1~2個残し、それ以外の実は摘み取ってしまいましょう!
- ほかの実と比べて大きいもの
- 果頂部がへんでいないもの
- ヘタに傷がないもの
- ヘタが大きいもの
- 緑色が濃いもの
- 下向きに着果しているもの(※上向きだと日焼けしやすい)
- 日当たりのよい場所に着果しているもの
摘果をすることで、さらに実を厳選していきます。
残った実にはより多くの養分が行きわたるため、甘くおいしい柿に仕上がります。
9~12月になったら収穫して、おいしい柿を味わいましょう!
細かい収穫適期は柿の品種によって違うため、実際に食べてみていつ頃が食べごろになるかを確認してみてください。
まとめ
今回は、放置して大きくなり過ぎた柿の木を小さくする剪定方法をお伝えしてきました。
簡単にまとめると、覚えるべきことは以下の5つです。
- 幹を切って柿の木を低くする
- 長い枝を切って全体的に小さくする
- 不要枝を切ってさらにスッキリさせる
- 剪定時期は11~3月、軽い剪定なら6月も可能
- 甘くおいしい柿を作るには摘蕾と摘果が大切
柿の木は成長が早いため、放っておくとどんどん大きくなります。
今後は毎年剪定をして、キレイな樹形を保ってみてはいかがでしょうか。
おいしい柿の実も収穫できるようになりますし、剪定を趣味の1つとして楽しめるようにもなるかもしれません。
初心者でも柿の木の剪定はできますので、ケガにだけ気を付けてあなたもぜひ挑戦してみてください!