ヌートリアを聞いたことがないという方もいらっしゃると思います。ヌートリアはアライグマと同じで本来日本には分布していなかった特定外来生物です。
画像を見てみると大変愛らしい姿形をしており、害獣という言葉のイメージからはかけ離れているように思いますが、実はヌートリアによる農作物の被害は全国で1億円にものぼるといわれています。
現在は中部、関西、中国・四国地方を中心に分布しているようですが今後アライグマのように分布図が全国に広がっていく可能性も十分考えられます。今回はあまり聞いたことのないヌートリアと、害獣としての被害状況や対策についてみていきたいと思います。
ヌートリアが日本に分布した理由とは?
ヌートリアは齧歯目(げっしもく)ヌートリア科に属する体重が5キロ程度の小型の動物です。大きなオレンジ色の前歯が特徴で、ドブネズミやカピバラに似ており、その愛嬌のある外見によって一部の人から人気があるようです。ネズミ類の特徴である長いしっぽや歯などがある反面、横から見ると顔が四角く見えるなどの違いもあります。
基本的に夜行性で、流れの穏やかな河川や沼地に生息しています。そのため、後ろ足の指には水かきがついており、泳ぎがとても得意で、長距離の移動や数分間の潜水も可能だそうです。また、前・後脚にはともに鋭い爪があり、穴を掘ることも得意です。最大で直径30センチメートル、奥行きが6メートルほどの枝分かれした巣穴を作ることもあるそうです。
ヌートリアは一夫多妻制で、基本的にメス同士は巣のすみわけをしているようです。また、メスの行動範囲は巣穴付近であるのに対し、オスはその3倍ほどあるそうです。その範囲内で、1頭のオスは2-3頭のメスと繁殖を行います。
ヌートリアは本来日本には存在しない動物で、もとは南米の河川に生息していた動物です。しかし、第二次世界大戦の影響により日本内で軍用服の需要が高まり、毛皮が必要とされるようになりました。ヌートリアの毛皮は、とても良質だったため、個体が日本に多く輸入されました。
しかし、終戦後に毛皮の需要が一気に減ったため、飼育されていたヌートリアの多くが野に放たれ、日本に分布するようになってしまいました。寒さに弱いヌートリアは、現在では比較的暖かい西日本に多く分布しているようです。
害獣としてのヌートリア
ヌートリアは様々な被害を引き起こします。ヌートリアの巣には決まった形は無いようで、土手や堤防などに穴を掘って巣穴としたり、水面上に植物集めて浮巣を作ったりするそうです。そのため、日本では田んぼや河川などが荒らされてしまう被害や、電源ケーブルなどを齧って断線させるなどの被害も多く発生しているようです。
また、ヌートリアは草食動物で、主に水辺の農作物や地下茎などを好んで食べます。そのため、日本ではイネやカボチャ、白菜、大根、ニンジンなど多くの野菜や穀物で被害を受けているそうです。さらに、日本のヌートリアには天敵がおらず、水鳥などの在来種とエサを巡って競合関係にまで発展し、日本の生態系を脅かす可能性もあります。
駆除を繰り返しても増える理由とは?
ヌートリアに対して大規模な駆除は何度も行われており、年々捕獲総数は増加傾向にあるのですが、いまだに生息数が増えているそうです。一体なぜでしょうか。
ヌートリアは凄まじい繁殖力を持っています。なんと、一年中繁殖が可能で、年に2~3回、多くて9匹も子供を産むそうです。また、生後3~6か月で繁殖可能となり、寿命は2年程度ですが、環境によっては、10年ほど生きる個体もいるようです。また、水中での哺育を可能にするため、脇腹の背中側にも乳頭が付いているなどの繁殖に特化した身体的特徴もあります。
ほかにも、愛嬌のある見た目から人間が餌付けをしてしまうケースも少なくないようです。そのため、もとは草食だったヌートリアも、最近では雑食化している個体も多く、日本の環境に適応してさらに繁殖能力を伸ばしています。
ヌートリア対策を適切に行うには?
ヌートリアは高い知能と学習能力を持っており、生半可な侵入対策ではあまり効果がありません。ヌートリアに対して有効な侵入対策は、棚を設ける場合は高さ60センチメートル以上にし、ヌートリアの体長よりも高くしましょう。ヌートリアは身長の1.4倍までの高さの直壁を乗り越えます。
柵板のつなぎ目は完全に密閉しましょう。1か所でも脆弱な個所が見つかると、ヌートリアは学習してその部分だけを集中して侵入するようになるようです。柵の下にネットを敷いて下からの侵入を防ぐとより強固な対策となるでしょう。
捕獲には『はこわな』が効果的です。ヌートリアが頻繁に使う移動経路に設置すると良いでしょう。水上に木材などで足場を作り、そこに『はこわな』を設置するのもよいでしょう。
ただし、ヌートリアは国から指定外来生物に指定されているため、一般人の捕獲・飼育・運搬などは法律で原則禁止されております。特殊な手続きや許可が必要となることを覚えておきましょう。
このように法律の絡みもあり、ヌートリアの駆除は一般的に無難しいと言われています。適切なヌートリア対策はプロに相談する方が無難といえそうです。
まとめ
第二次世界大戦ごろに輸入されたヌートリアは、もともと日本に生息していなかった外来種で、非常に高い繁殖能力を有しており、天敵もいないためどんどん数を増やしています。
ヌートリアの習性や生態は、農作物や環境に大きな被害を及ぼします。また、私たち人間の影響によってさらに被害が拡大することもあります。野生動物へはむやみに接触しないようにしましょう。
ヌートリアによる被害で困っている場合は綿密な対策が必要ですが、法律の関係でヌートリア駆除は基本的に追い出しになります。法に触れることなく、安全かつ適切に防除を行うためにも害獣駆除のプロにお願いすることをおすすめします。