「バラは育てるのが難しそう!」
いいえ、そのようなことはありません。むしろバラは強い植物なので、園芸が初めての方でも花を咲かせて楽しむことができます。
そして、花を咲かせるには剪定がとても重要です。枝を切ることで生育を手助けし花付きがよくなるからです。
今回は、バラ栽培に慣れていない方に向けて、基本的な剪定方法の内容をまとめました。
みなさんが安心して剪定できるように、わかりやすくイラストを交えながらお話していくので、ぜひお役立てください。
バラの種類と分類について
2万種類以上あるといわれているバラですが、分類に正式な決まりがありません。樹形や花の形状などでどのようにでも分類できてしまうため、サイトや書籍によって分け方はさまざまです。
当記事では複数の参考書籍から情報を集め、初心者の方でもわかりやすい分類を心がけました。今回はガーデン店など市場によく出回っている下記4種類をご紹介しています。
(バラの分類詳細はバラの分類と種類の章へ)
【基本のバラ(木立ち四季咲きバラ)】
・ハイブリットティ・ローズ
・フロリバンダ・ローズ
・ミニチュア・ローズ
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・つるバラ
【基本】バラの剪定時期
バラの剪定時期は、夏と冬の年2回です。
■冬剪定
12月~2月の寒い時期におこないます。多くの植物は冬になると休眠期に入り、栄養分をしっかり貯めています。
そのため、根元から切るような大胆な剪定をしてもダメージが少ないのがメリットです。
■夏剪定
8月下旬~9月上旬です。夏の終わりのバラは樹高が高く樹形が乱れているため、おもに樹形を整えることが目的です。また、秋に花が咲くバラの場合、きれいに咲かせるための準備でもあります。
【秋バラを咲かせたいなら】
剪定をして約1ヵ月半後に秋バラは開花します。春と似た気温(18~22度)の時期に開花させるとバラにとって快適なので、遅くても9月中旬までには剪定をしておいてください。
【基本】バラの剪定方法
バラは、バッサリと枝を切っても平気です。むしろ、大胆に切ることで花付きがよくなり樹形も整います。
剪定後は葉がなく枝も短く残念な姿となりますが、すぐに成長するので見守ってあげてください。
もし切り過ぎて一時的に枯れても、必要な箇所で再剪定をしたら来年には復活するので心配ありません。
この章では、木立ち四季咲きバラの3種(ハイブリットティ・ローズ/フロリバンダ・ローズ/ミニチュア・ローズ)から、冬剪定と夏剪定の方法を解説します
冬:枝をバッサリ切って短くする切り戻し剪定(強剪定)
夏:密になっている枝や葉を減らす間引き剪定(弱剪定)
【用語解説】
シュートとは…主軸以外で元気に生えてくる若枝のこと。
樹形を乱すシュートや主軸にならないシュートは不要枝となります。
(シュートの詳細は第4章へ)
【大輪】ハイブリットティ・ローズ
14センチメートルほどの大輪の花が咲くハイブリットティ・ローズは、豪華な印象で人気の品種です。
【冬剪定の方法】
- 葉をすべてむしり取る
- 樹高の1/2を目安に枝を切る
- 枯れた枝、細い枝は根元から切る
- 2年以上前の枝は根元から切る
- 不必要なシュートを切る
【夏剪定の方法】
- 二番花の咲いた枝を、長さ1/2~1/3で切る
- 咲き終わった花は摘み取る
- 秋バラの開花時期を調整するため、つぼみも摘み取る
- 混み合った枝は切る
- 元気のない枝は切る
- 病害虫の被害にあっている葉はすべて取る(もし全部葉がなくなっても気にしない)
【中輪】フロリバンダ・ローズ
8センチメートルほどの中輪の花が咲くフロリバンダ・ローズは、20房以上の花をつける華やかで人気の品種です。
剪定方法はハイブリットティ・ローズと似ています。
【冬剪定の方法】
- 葉をすべてむしり取る
- 樹高の1/2を目安に枝を切る
- 枯れた枝、細い枝は根元から切る
- 2年以上前の枝は根元から切る
- 細い枝は残しておく
- 不必要なシュートを切る
【夏剪定の方法】
- 二番花の咲いた枝、長さ1/2~1/3で切る
- 咲き終わった花は摘み取る
- 秋バラの開花時期を調整するため、つぼみも摘み取る
- 混み合った枝は切る
- 元気のない枝は切る
- 病害虫にあっている葉はすべて取る(もし全部葉がなくなっても気にしない)
【小輪】ミニチュア・ローズ
世界最小といわれるバラでかわいらしく、鉢植えとしてとても人気の品種です。
【冬剪定の方法】
- 葉をすべてむしり取る
- 樹高の1/2を目安に枝を切る
- 枯れた枝は根元から切る
【夏剪定の方法】
- 5枚の葉(5枚葉という)がついた枝を、先5センチメートルほどで切る
- 咲き終わった花はこまめに摘み取る
POINT!枝の切り方
- 外芽の5ミリメートルほど上を水平もしくはややナナメに切る
切った芽から新しく枝が伸びます。もし内芽の上で切ると株の内側へどんどん枝が伸びていき、枝同士が大渋滞してしまいます。
バラの理想の樹形はこんもりとした丸みのあるデザインです。できるだけ外へ枝を伸ばし、丸く切っていくときれいなバラの樹形が作れます。
つるバラの剪定&誘引方法
つるバラ(クライミング・ローズ)の剪定は誘引と一緒におこないます。剪定したあとは枝がサッパリしているので誘引しやすくなります。
また、寒すぎるとつるが硬くなり曲げづらく折れてしまうこともあります。遅くても2月前には誘引を終わらせておきましょう。
つるバラは自立できないので伸びたつるを曲げて、支柱やアーチに沿わせ人工的に樹形を整えていきます。
冬剪定と夏剪定の方法
つるバラはつるを活かすように意識して剪定します。
【冬剪定】
- 1年目以降の元気のない枝は切る
- 3年目以降の枝は根元から切る
- 葉をむしり取る
- 細枝、枯れ枝は切る
- 残す枝から伸びている側枝を、根本10センチメートルを残して切る
【夏剪定】
- 随時、咲き終わった花を摘み取る
- 枝が伸びて混み合うときは、先端から1/2ほどで切ってもよい
誘引方法
- 誘引用の支柱を用意する
- 長い枝を横へ曲げ、ひもで結んでいく
- つるをアーチに沿わせる(枝同士、交差してもよい)
- できるだけ日光が全体に当たるように、重なり合わないようにつるを曲げる
- 前年の太い枝や元気のあるシュートを誘引する
- 頂芽優勢を崩す
いちばん高い位置に伸びている芽へ、優先的に栄養が集まり成長する性質があります。これを「頂芽優勢」といいます。すると下のほうで新しく成長しようとしている芽に栄養が届かず開花や成長をあきらめてしまいます。
そこで枝に勘違いをさせます。極端にいえば枝を横に倒してしまうことで、いちばん上はいなくなります。すると新しい芽が”自分がいちばん上かも“と思いぐんぐん伸びていきます。
シュートの処理方法
5~10月に発生する新しく元気のある枝のことをシュートといいます。主軸の世代交代という大切な役割をもつ若枝です。
シュートは栄養を優先的に奪ってしまうので、適切な処理が必要になります。シュート以外の枝に栄養分がまわらず、花が咲かなかったり枯れてしまったりするからです。
- 根元から伸びる枝:ベーサルシュート
- 枝の途中から伸びる枝:サイドシュート
木立ち性バラのシュート
シュートの処理は2つの方法があります。
- シュートが発生したときに切る
- 成長してから他の枝と栄養を分けるため、少し低めに切る
シュートは栄養も水分も多く含み、活発旺盛な若枝です。花つきがよいのでたくさん開花しますが、花のサイズは小さくなりがちです。
特に秋バラの場合は、春よりも小さめに咲くことが多いので、大きく開花させたいときは栄養を集中させるためシュートは切ってしまいます。
これは好みによるので、小さくてもたくさん花をつけたいのならシュートは残しておくとよいでしょう。反対に、少数で立派な花を開花させたいときは早めに処理をするのがおすすめです。
また、シュートは背が高く大きく成長しているため、重みでポキッと根元から折れてしまう危険性も持ち合わせています。シュートの放置には注意してください。
【シュートピンチ】
シュートを放置すると、ほうき状のつぼみを複数つけ成長がとまります。成長が止まっては翌年以降、開花が望めないので枝の先端を手でつまみ取ってください。
つるバラのシュート
- つるバラのシュートは伸ばす
- つるが折れないように支柱やフェンスで支える
- 誘引は冬におこなう
長いつるで好きな樹形のアーチが作れるので、つるバラのシュートは伸ばしておきます。また、長く伸ばせばたくさん花芽がつくので、春に多くの花を楽しむこともできます。
しかし、注意したいのが折れてしまうことです。支柱などで支えてあげる必要があります。
誘引はシュートが伸びている段階ではおこないません。休眠期の冬に作業をしてください。夏は伸ばすことを優先し、折れないように気を付けてあげてください。
(※あまり伸ばしたくないときは、シュートを切ってもかまいません。)
バラの年間作業カレンダー
バラを美しく育てるためには剪定以外にも、肥料や害虫予防も必要です。
年間の作業をまとめたのでご参考ください。
■わき芽かき:芽が複数出ていたら、中心の主芽だけ残し、他を摘み取る
■花がら切り:咲き終わった花の枝を切る
■寒肥:植え付け2年目の株へ施す(鉢植えは不要)
■追肥:生育中の株へ施す
■病害虫
病気:うどんこ病、べと病、黒星病
害虫:アブラムシ、ハマキガ、ハダニ
バラの分類と種類
今回、解説にあたり大きな特徴から人気の品種である以下4種に絞っています。
- ハイブリットティ・ローズ
- フロリバンダ・ローズ
- ミニチュア・ローズ
- クライミング・ローズ(つるバラ)
- バラは大きく3種に分けられる(ワイルドローズ/オールドローズ/モダンローズ)。
- モダンローズは、樹形や花の特徴で分けられる。
つる :枝を長く伸ばして自立できない
半つる:木立ちとつるの両方の性質をもつ
一季咲き:春に一度だけ開花する
返り咲き:春以外にもう一度だけ開花する
ここから四季咲きの、木立ち性とつる性に分けました。
まとめ
バラは枯れても花が咲かなくても、剪定しだいで復活し、花を咲かせることができる強い草木です。そのため、バラ栽培が初めての方でも育てやすく人気の花です。
とはいっても、やはり剪定などお手入れは必要です。時期と方法を守って、愛情こめて大切に育てていけばきっと花を咲かせてくれるので、ぜひがんばってみてくださいね。
『バラ名人が選ぶバラ100選』淡交社、2002
後藤みどり『はじめてのバラづくり12ヵ月』家の光協会 2011年
浜崎雅子『失敗しないバラの育て方』西東社 2004年
『主婦の友生活シリーズ すてきなガーデニング バラとハーブ』主婦の友社 1997年
『輝くバラたち―この一冊でバラの全てがわかる!』ベネッセコーポレーション 2008年