デコポンはミカン科の常緑果樹で、2.5~3m前後にまで大きく成長することもあります。自家結実性のため、株1本あれば果実の収穫を楽しむこともできます。しかし果実をつけるためには、正しい育てかたを覚えておく必要があります。間違った剪定方法や肥料のやりかたでは、実をつけるどころか、株自体を枯らせてしまうこともあるのです。
こちらのコラムでは、デコポンの剪定方法や肥料の与えかたなど育てかたのポイントについて解説します。またおいしい実をつけるためのポイントについてもふれていますので、これからデコポンを育てたいと思っているかたは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
植え付けは3~4月が適期
デコポンの植え付けは、3月下旬から4月上旬が適期です。日光を好むので、鉢植えを置く場所や地植えする場所は慎重に選ぶ必要があります。とくに地植えの場合は、日当たりのよくない場所を選んでしまうと、せっかく植えても必要な栄養を得られず株を枯らしてしまうおそれがあるのです。
また市販されている苗木には1~2年生苗がありますが、デコポンの果実を結実させるには3~4年の年月をかけて育てていかなくてはいけません。途中で枯らすことがないよう正しい植え付けのしかたを知っておきましょう。ここでは、まず鉢植えと地植えの方法や注意点を解説します。
鉢植え
デコポンは細い根が多いことから、鉢植えする場合は根詰まりを起こさないように気をつけなくてはいけません。苗木のポットよりもひと回り大きな鉢を用意して、植え付けをします。また、生育の度合いや鉢の大きさにもよりますが、通気をよくするためにも2年に1度は植え替えすることをおすすめします。
使用する土は、水はけがよく保水性の高いの配合土(赤玉土7:腐葉土3)が適しています。柑橘系の培養土があれば、混ぜる手間がなくすぐに使えるので便利です。水はけが悪いと、根が弱くなるので注意しましょう。苗木を鉢に植えたら50㎝前後の高さに切り戻し、たっぷりと水を与えたあと日当たりのよい場所で管理します。
地植え
デコポンの実をたくさんつけたいのであれば、大きく育てるためにも鉢植えよりも地植えがおすすめです。デコポンを地植えする際は、日照時間が重要なポイントになります。とくに地植えは鉢植えと違い移動ができないため、日当たりを考えて植え付けすることが必要です。
地植えする際は植え穴を掘ったあと、腐葉土や完熟堆肥、もしくはヨウリンなどの土壌改良肥料を混ぜておくのがおすすめです。苗を植えて土を戻したらしっかりと踏み固めて、地植えの場合も苗木を50㎝前後に切り戻しておきます。そしてたっぷりと水を与えたら、植え付け完了です。
デコポンの手入れ方法
デコポンの植え付けができたら、日ごろの手入れについても覚えておきましょう。水やりや肥料はもちろんですが、病害虫には注意を払う必要があります。
水やり
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら鉢底の穴から水が少し流れるくらいまでたっぷりと与えます。夏の乾燥しやすい時期は、水切れを防ぐために受け皿に水をためて管理するのもよいでしょう。ただし、夏以外は根腐れを起こしやすくなるので注意が必要です。地植えの場合、植え付けと夏の乾燥しやすい時期以外は、基本的に水やりをする必要はありません。
肥料の与えかた
デコポンは適した時期に肥料を与えることで根の張りがよくなり、実のつき具合もよくなります。肥料は毎年3月に油カスや有機質肥料を与え、6~8月と10~11月に化成肥料を与えましょう。
病気や害虫
デコポンを健康な株に育てるには、病害虫にも注意しなくてはいけません。放置しておくと成長の妨げなどの原因になるので、こまめにチェックして駆除や防除するようにしましょう。
○アゲハチョウの幼虫
アゲハチョウの幼虫は7~9月に発生しやすく、葉が食害にあうおそれがあります。とくに植え付けたばかりの時期は、栄養分を作るための葉が大変重要です。早期発見して被害を最小限に抑えるためにも、手入れをする際は葉の裏側なども注意しておきましょう。
○カイガラムシ
カイガラムシは、枝や茎に発生し養分を吸い取るため、株の成長を妨げます。さらにカイガラムシの排泄物が原因で、「すす病」などの病気を誘発することもあるのです。このため、カイガラムシを見つけたら早めに駆除するようにしましょう。
○かいよう病
かいよう病は、食害を受けた葉や枝などの傷口から感染して褐色の病斑があらわれます。また雨が原因で伝染していくため、とくに梅雨時期などには注意が必要です。感染してしまった葉も伝染のもとになってしまうので、取り除くようにしましょう。病斑が出てからの薬剤散布にはほとんど効果がないため、防除の徹底が重要なポイントになります。
○そうか病
そうか病は、葉や枝にイボ状やかさぶた状の病斑ができる病気です。かいよう病と同じように、降雨の多い梅雨時期に多発しやすく、胞子が拡散することで被害が拡大しやすくなります。薬剤散布で防除することが必要です。
害虫や病気は対策をしっかりしておかないと、最悪の場合は株自体を枯らせてしまうことがあります。しかしデコポンを育てるのが初めての場合は、葉や枝が病気に侵されているのか自分では判断できないことがあるかもしれません。その場合は、プロの業者に害虫防除を依頼してみることをおすすめします。
本格的な剪定は植え付け4年目以降から
デコポンの剪定は、枝葉が成長し始める3月ごろにおこなうのがおすすめです。ただし、植え付けてから3年はそこまで大きくは育ちません。
コンパクトに育てたい場合を除いては、基本的に植え付けから3年は剪定が不要とされています。デコポンの本格的な剪定は、4年目以降からおこないます。またデコポンの枝にはトゲがあるので、剪定をする際は軍手をするようにしましょう。
1~3年目は「切り戻し剪定」で骨格を育てる
デコポンの樹形は「開心自然形」で仕立てるのがおすすめなので、1~3年は枝の骨格を作ることを考えておくべきです。新梢が出やすくなるように適度に切り戻し剪定をおこなって、形を整えていくとよいでしょう。
4年目以降は「間引き剪定」が基本
植え付けから4年ほど経ったデコポンは、内側に伸びて混みあった枝を切る「間引き剪定」が基本になります。不要な枝を取り除くことで全体に栄養をまんべんなく行き渡らせ、健康な株に育ちやすくなるのです。剪定時には、おもに以下のような枝を切り落としていきます。
・混みあった枝
枝葉が混みあうと日当たりが悪くなり株の成長に影響が出るだけでなく、風通しが悪くなれば病害虫の原因にもなります。不要な枝を付け根から切り落としておくことは、病害虫の予防対策にも有効なのです。
・枯れている枝
枯れている枝は、放置すると病気や害虫がつく原因になります。このため枯れている部分は、すべて取り除いておきましょう。
・細い枝
枝が細く今後も成長を見込めないものは、そのままにしておいても枯れるだけです。健康な枝に栄養が行き渡るように取り除いておきましょう。
・徒長枝
徒長枝とは、勢いよくまっすぐ上に伸びている枝のことをいいます。春から夏にかけて出やすく、果実がつきにくいのも特徴です。徒長枝を残しておくと、栄養分もとられてしまうので取り除きます。
・害虫の被害を受けている枝
害虫の被害を受けている枝葉は、放置しておくと被害が拡大するおそれがあります。症状が重い場合は根元から切り落とすようにして、軽い場合は被害を受けた葉を取り除いたあと薬剤を散布しておきましょう。
・前年に果実のついた枝
前年実がついた枝には、花芽はつかないので取り除きます。花芽のつきやすい枝を優先的に残しておくのも、果実を実らせるためのポイントです。
おいしい果実を収穫するには
デコポンを栽培するなら、おいしい果実を収穫したいものです。健康に株を育てるには、剪定や肥料などももちろん大切ですが、ほかにもいくつかポイントがあるのです。ここでは、できのよい果実をおいしく食べるためのコツについて解説します。
隔年結果を防ぐために摘果は必ずおこなう
7~8月ごろに実がつき始めたら摘果をおこないますが、どれでもよいというわけではありません。摘果するのは、上向きになっているものや傷のあるもの、極端に小さい実などを取り除くようにします。葉80~100枚に対して状態のよい果実1個を残すようにします。
デコポンなどの柑橘類は、1度の収穫ですべての実を取り除いてしまうと、株全体の養分がとられてしまい、翌年結果しなくなるおそれがあります。隔年結果にならないようにするには、株の養分を残しておく必要があるのです。
収穫した果実は3~4月まで貯蔵しておく
デコポンの収穫は、1月上旬から2月上旬が適期です。ただし収穫した果実は、すぐに食べると酸味が強い場合があります。このため収穫した果実は、3~4月まで貯蔵しておくとよいでしょう。貯蔵することで酸味が薄くなり、糖度も増しておいしく食べられるようになります。
プロの業者に手入れを依頼してみるのもひとつの方法
もし、自分でデコポンの剪定することに不安がある場合は、プロの業者に相談してみることをおすすめします。プロに依頼すれば、剪定で失敗して株を枯らすこともなく、手間や時間をかけなくてもいいメリットがあります。
またプロの業者から、手入れのしかたや注意するべき点などのアドバイスがもらえるかもしれません。実際にプロのやり方を目で見て、自分でもできそうだと感じたら、育て方を身につけて自分で挑戦してみるのもよいでしょう。
とくにデコポンを苗木から育てた場合は、結実するまで3~4年かかります。失敗してしまうと、また長い年月をかけてやり直さなくてはいけません。まずは業者に依頼して、自分で手入れをするための知識や技術を磨いてみてはいかがでしょうか。
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