八朔(はっさく)は、苗木から育ててある程度大きくなったら、定期的に剪定をしなくてはいけません。剪定をしないまま放置しておくと、病気や害虫が発生し樹勢が弱まってしまうことがあるためです。大切な株を枯らせてしまえば、果実が実るようになるまで、4~5年かけてまた苗木を育てなくてはいけなくなってしまいます。
こちらのコラムでは、八朔の剪定方法や日ごろの手入れなどについて解説します。おいしい果実を収穫するための「摘果」についても解説しますので、これから八朔を育てたいと思っているかたは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
八朔を剪定する際のコツと注意点
八朔の木を苗木から植え付けした場合は、4~5年はそのまま放置しておいてもかまわないとされています。ただし樹形を整えながら枝の骨格を作っていきたい場合は、定期的に枝の途中で切る「切り戻し剪定」をしながら、新梢を促進させていくのがおすすめです。
5年目以降は2月~3月に「間引き剪定」をする
植え付け5年目以降は、2月~3月に分岐した枝を根元から切る「間引き剪定」をおこないます。大きく育った後は定期的に剪定をしないと、伸びすぎた枝が株の成長を妨げたり、病気の原因になったりするのです。ただし剪定はどの枝でも好きに切ればいいというわけではなく、正しい方法を身につけておくことが大切です。
八朔を剪定するポイントとしては、枝と枝に一定の間隔が空くように切っていくことです。間隔を空けることでたくさんの日光を吸収して栄養を作ることができ、風通しをよくして病害虫の発生を防ぐこともできます。間引き剪定は混みあった枝を間引くのが基本になりますが、ほかにも以下のような枝は取り除くようにしましょう。
- 成長が見込めない細い枝や枯れている枝
- 病気や害虫の被害を受けた枝葉
- 勢いよく上に伸びた徒長枝
- 前年に果実がなった枝 など
強剪定しないように注意すること
八朔の剪定には、注意しなくてはいけない点もあります。たとえば樹高が高くなったからといって、樹形が大きく変わってしまうほど強い剪定をおこなうと、株自体が弱ってしまうことがあるのです。強剪定は、株に負担を与えるので避けるようにしましょう。間引き剪定においても1度に切り落とすのは、樹木全体の2割程度にしておくことをおすすめします。
しかし自分で剪定をおこなうのが初めての場合は、どの枝を切ったらいいのか判断にまようことも多いはずです。とくにはじめて八朔を育てる場合は、どのように樹形を整えたらいいかなかなかわかりにくいものです。
剪定すべき枝の正しい見極めかたを知るには、一度専門の業者に相談してアドバイスなどをもらってもよいかもしれません。また業者に剪定自体を任せてみるのもよいでしょう。弊社ではプロの剪定業者をご紹介しております。もし八朔の剪定などでお困りやお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
剪定以外にも覚えておきたい栽培方法のポイント
八朔を健康に育てるためには、剪定以外にも気をつけるべきことがあります。ここでは、植え付け時や肥料の与えかた、日ごろの手入れなどで注意すべきことについて解説します。
植え付け
植え付けに使う土は、水はけと保水性のバランスがよい配合土(赤玉土7:腐葉土3)がおすすめです。市販されている柑橘用の培養土を使えば、自分で混ぜる必要がないので便利です。鉢植えの場合は根詰まりを防ぐため、2~3年に1度は植え替えをしましょう。
八朔は15℃前後の比較的温暖な気候を好むので、地植えする場合は日当たりのよい場所を選ぶようにします。そして鉢植えも地植えも新梢を伸ばすため、植え付け後は高さ50cmほどに切り詰めておいてください。
水やり
地植えの八朔は、自然の雨と地中の養分だけで育つことができます。このため、日照りの強い日が続いたときや夏の乾燥しやすい時期を除いては基本的に水やりが不要です。
鉢植えの場合は水切れを起こしやすいため、表面の土が乾いたら鉢穴から少し流れるまでたっぷりと水を与える必要があります。とくに夏は水切れに注意し、受け皿に水を入れて管理するのもよいでしょう。ただし、夏季以外で受け皿に水をためておくと根腐れの原因になるので注意も必要です。
肥料の与えかた
八朔は、肥料を与えることで樹勢や根張りがよくなるほか、新梢の促進にも効果的です。何より、果実の結実を促進する効果もあるので、収穫を目的に栽培するときは必要不可欠になります。地植えの場合は、3月と10月の2回、有機肥料や化成肥料を与えます。そして鉢植えは、3・6・10月の年3回施肥しましょう。
防寒対策も立てておこう
八朔の耐寒気温は-5℃といわれており、とくに寒い地域で育てる場合は防寒対策が必要になります。寒い環境下で放置しておくと、株が冬を越せずに枯れてしまうおそれもあるのです。
鉢植えの場合は、あたたかい場所に移動するようにしましょう。移動ができない地植えには、寒冷紗(かんれいしゃ)を使用します。寒冷紗は樹木に覆いかぶせる布で、冬の寒さから守るだけでなく水分の蒸発抑制や防虫効果もあるのです。ただし寒冷紗を使うまえには、必ず害虫を駆除しておくようにしましょう。
病害虫にも注意するべき
枝葉が病気や害虫の被害を受けてしまうと、枝や果実の生育が悪くなります。場合によっては収穫する果実にも発生することもあるので、注意しなくてはいけません。ここでは、八朔に発生しやすいおもな病気や害虫について解説します。
■病気
〇そうか病:そうか病は梅雨時期に発生しやすく、枝や葉にイボ状やかさぶた状の病斑が発生するのが特徴です。そうか病の被害を受けた葉が越冬すれば翌年も発病しやすくなるため、感染した葉はこまめに取り除くようにしましょう。
〇かいよう病:新梢がかいよう病の被害を受けると二次伝染源になりやすく、枝や葉が枯れて樹勢が弱くなる原因にもなります。また伝染は、雨や風でできた傷口、害虫の被害を受けた跡などから拡大しやすいのも特徴です。
■害虫
〇エカキムシ:エカキムシに食害されると、葉が白くなるのが特徴です。エカキムシの食害を受けるとかいよう病などの病気を誘発するため、徹底的に防除しなくてはいけません。エカキムシ対策としては、退治と予防が一緒にできる浸透移行性の薬剤を使うとよいでしょう。
〇カイガラムシ:カイガラムシは枝などに発生し養分を吸い取るため、枝枯れの原因になる害虫です。そして文字通り表面が硬い殻で覆われているため、薬剤が効きにくい厄介な害虫でもあります。
また害虫は、アリと共生しているケースが多くあります。このため、枝葉にアリが多く見られた場合は害虫の存在を疑ったほうがよいかもしれません。
病害虫はできるだけ早く防除する必要がありますが、とくに女性は自分で害虫駆除ができないというかたも多いのではないでしょうか。もし自分で害虫駆除ができないということであれば、業者などに依頼してみるのもよいでしょう。
おいしい八朔の果実を実らせるためには
八朔の収穫は、12月ごろから可能になります。八朔の果実は冬の寒さや冷たい風にさらされると、寒害を受けるリスクが高くなってしまいます。このため寒さが厳しくなる1月前後までには、果実の収穫を終えておくようにしましょう。
また収穫した果実はすぐに食べるのではなく、2か月ほど貯蔵しておくことをおすすめします。貯蔵することで酸味が弱まり糖度が増すため、さらにおいしい八朔を楽しめるようになるはずです。
実をつけやすくするには受粉樹を植えるのがおすすめ
八朔は1本でも実をつけることができますが、自分自身の花粉で実をつける自家結実性が弱いという特徴があります。そのため、実つきのよい年と悪い年を交互に繰り返す隔年結果になりやすいのです。
そこで、八朔の近くに甘夏や夏みかんなど別の品種の木を植えると、その木の花粉を受粉することで実がつきやすくなります。このように授粉をさせるために植える木を受粉樹といいます。
また、結実させるために人口受粉という方法もあります。園芸店やネットショップなどで別の木の花粉を購入し、それを筆や綿棒などを使って八朔の花につけるのです。もう1本木を植えるのは難しいという場合には、こちらの方法がよいでしょう。
摘果は必ずおこなうこと
摘果は果実に栄養分を行き渡らせるために、果実の数を適度に減らす作業です。少ない果実に栄養を集中させることで、より大きくておいしい実をつけることができます。摘果をおこなう適期は7~8月ごろです。不要な実に養分がいかないように、傷のある実や小さな実などを選んで取り除いていくことがポイントです。
たくさん実を残しても樹に負担がかかるため、60~80枚の葉につき1個の実を残すようにおこなうのが目安です。また樹に負担がかかると隔年結果になりやすいので、毎年果実を楽しむためにも摘果は必ずおこないましょう。
プロの業者に手入れを依頼してみるのもおすすめ
おいしい八朔の実を収穫するには剪定だけではなく、定期的な手入れも重要になってきます。とくに苗木から育てた場合は、4年ほど果実をつけることがありません。もし途中で株を枯らしてしまうようなことがあれば、また苗木から育て直さなくてはいけないのです。
このため、おいしい八朔を実らせるためには、プロの業者に手入れを任せてみるのもおすすめです。プロの業者なら正しい方法で剪定してくれるだけでなく、病害虫に適した薬剤などに関しても豊富な知識をもっているはずです。何より業者に依頼すれば、自分の労力や時間を割かなくてもよい点で大きなメリットがあります。
まずは業者に剪定や手入れの依頼をして、知識や技術を得てから自分で挑戦してみるのもよいかもしれません。弊社では、剪定などをおこなうプロの業者をご紹介しておりますので、もし自分で害虫駆除や手入れをすることに不安があるかたは、どうぞお気軽にご相談ください。
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