「たった3つのコツを覚えるだけで誰でも上手に透かし剪定ができます!」といったら気になりませんか?
透かし剪定は一見難しそうに見えますが、じつはとてもシンプルでコツさえ覚えれば誰でもできるようになります!
もちろんプロの庭師さんほど美しい仕上がりをすぐに実現するのは大変ですが、初心者でもキレイな庭木を作ることは十分に可能です。
当記事ではまず透かし剪定の3つのコツをお伝えします。
そのうえで透かし剪定の手順、透かし剪定に必要な道具、透かし剪定をする時期をご紹介。
伸び放題の庭木をスッキリさせたいものの、どこから手をつけたらいいのかわからないというあなたも、本稿をお読みいただければ、枝の選び方や切り方がよくわかり、美しい庭木へ仕上げることができます。
今後剪定を趣味の1つとしても楽しめるようになりますので、ぜひ参考にして透かし剪定をマスターしてください!
初心者でも失敗しない透かし剪定の3つのコツ
さっそくですが、透かし剪定の3つのコツを紹介します。
コツ1.不要枝を切ってから残りの枝を切る
コツ2.切る枝は「間隔」と「配置」を意識して選ぶ
コツ3.枝は分岐点のつけ根で切る
初めて透かし剪定をするときにまず思うのが「どの枝をどこで切ったらいいの?」という点ですよね。
ボーボーに生えている無数の枝の中から、不要な枝を選び適切な位置で切るのはなかなか難しいと思います。
しかし、上に挙げた3つのコツさえわかっていれば、切るべきかそうではないかが簡単に判断できます!
1つずつ説明しますので覚えておきましょう。
コツ1.不要枝を切ってから残りの枝を切る
透かし剪定の1つ目のコツは、最初に不要な枝をすべて切ってから残りの枝を切ることです。
じつは、木には「不要枝」と呼ばれる明らかに不要な枝があります。
そのような不要な枝を最初に切っておくことで、残りの枝のどれを切ればよいのかがわかりやすくなります。
剪定は基本的には木の上部から下部に向かって切っていきますが、透かし剪定ではまず全体的に見て不要枝を取り除くことが大切です。
具体的な不要枝については、種類が多いためのちほど詳しく説明します。
先に残り2つのコツを見ておきましょう!
コツ2.切る枝は「間隔」と「配置」を意識して選ぶ
透かし剪定の2つ目のコツは、枝と枝の「間隔」と「配置」を意識して切る枝を選ぶことです。
不要枝を取り除いたあとは、全体のバランスを見ながら残りの枝を切って透かしていきます。
そのときに、どの枝を切るべきか迷ったら枝の間隔や配置を意識してください!
例えば、下図は木を上から見た様子ですが、樹形の形成と関係ない枝や上下で重なっている枝、近くの枝と平行に伸びている枝は切ったほうがよいです。
これらを切ることで、枝と枝の間に一定の間隔が空くようになり、バランスよく枝が配置されるようになります。
平行に伸びている枝は、ほかの枝とのバランスを考えて片方を残し、もう片方を切るようにしましょう。
特定の場所に枝の数が偏ることなく、どこも均等に枝がある状態になるのが理想です。
木を真上から見たときに四方に枝が広がるようにすると、より美しい樹形になります。
コツ3. 枝は分岐点のつけ根で切る
透かし剪定の3つ目のコツは、枝は分岐点のつけ根で切ることです。
透かし剪定では上図の✕印がついた箇所のように、枝を途中で切ることはやめましょう。
枝を途中で切ってしまうと、切り口が目立ち不格好になってしまいます。
反対に、つけ根で切ると切り口が目立たず美しい見た目になるのです。
また、枝をつけ根で切ることで切り口が早くふさがるようになり、腐朽菌(ふきゅうきん)の侵入も防ぎやすくなります。
※腐朽菌:木を腐らせる菌。
木の見栄えだけでなく健康面でもメリットがあるため、枝はつけ根で切るようにしましょう!
「木の大きさはこのくらいにしたいな」というイメージを持っているときに、分岐点で枝を切るとイメージに対して短くなりすぎてしまうこともあります。
そのように理想どおりの枝の長さで切れない場合は、「外芽の上」で切ることもできます。
芽は成長すると枝になり、将来そこが枝の分岐点となるため、芽があるところで切るのは問題ありません。
ただし、内芽ではなく外芽の上で切るようにしてください!
外芽は横に向かって伸びていくため、樹形を作るための枝に成長します。
一方、内芽は上に向かって伸びていくため、樹形を作るための枝にはなりづらく、将来不要な枝になる可能性が高いです。
もしかしたら内芽も理想的な方向に伸びていくのかもしれませんが、どちらかというと外芽を残すのが剪定の基本となります。
そのため、枝を途中で切りたい場合は必ず芽の位置を確認するようにしましょう!
これだけは切った方がよい12種類の不要枝
透かし剪定の全体的なコツをお伝えしてきました。
次は1つ目のコツでも紹介しました不要枝について解説します。
不要枝は全部で12種類あります。
これから図を使って簡単に説明していきますが、今すぐ全部を覚える必要はありません!
まずは流し読みしていただいて、実際に透かし剪定をするときに再度確認してください。
そうすることで不要枝を残すことなくキレイに透かし剪定ができます。
【①枝の切り残し】
以前剪定した枝の根元が少し残ってしまったもの。
放っておくとそこからまた枝が生えてきて樹形を乱す原因になります。
【②徒長枝】
上方に勢いよく伸びた枝。
徒長枝には栄養が集中するため、ほかの枝の成長が遅くなってしまいます。
【③交差枝】
枝同士が交差しているもの。
枝が混みあうと通気性や採光性が悪くなり、樹勢が弱ったり病害虫の原因になったりします。
ほかの枝とのバランスを考えて、不要なほうの枝を切りましょう。
【④ふところ枝】
枝元から生える弱々しい枝。
枯れてしまったり、蒸れて病害虫の原因になったりします。
【⑤ひこばえ】
幹の根元から生えている枝。
放っておくと木の上部に栄養が渡りづらくなり、ほかの枝の成長が遅くなってしまいます。
【⑥下り枝】
下に向かって生えている枝。
日光が当たりづらく光合成ができないため、枯れ枝になりやすいです。
【⑦腹切枝】
幹と交差している枝。
見栄えが悪くなるうえに、枯れ葉が溜まり害虫の温床になってしまいます。
【⑧平行枝】
複数の枝が平行して生えているもの。
日当たりや風通しが悪くなり、木の健康を損なってしまいます。
ほかの枝とのバランスを考えて、不要なほうの枝を切りましょう。
【⑨車枝】
1箇所から複数の枝が生えているもの。
車枝から下の幹が太くなってしまい、見栄えが悪くなります。
ほかの枝とのバランスも考慮して、左右対称にならないように切りましょう。
【⑩絡み枝】
ほかの枝と絡んでいるもの。
見栄えが悪くなるうえに、通気性や採光性も悪くなり、樹勢が弱ったり病害虫の原因になったりします。
【⑪逆さ枝】
木の内側に向かって生えている枝。
樹形の形成には関係がないうえに、日が当たらないことで枯れ枝にもなりやすいです。
【⑫胴吹き枝】
幹の途中から生えている枝。
ひこばえと同様に、放っておくと木の上部に栄養が渡りづらくなり、ほかの枝の成長が遅くなってしまいます。
これらの不要枝は樹形を乱す可能性が高かったり、枯れ枝となってしまったり、ほかの枝の成長をさまたげたりします。
そのため、早めに切ることが肝心です。
枝葉が少ない場所であり、不要枝を切ると少し寂しくなってしまうような場合には残すこともありますが、最初のうちはすべて切ってしまいましょう!
剪定に慣れてきたら、ほかの枝とのバランスを考えて残すか切るかを判断してみてください。
詳しくは忌み枝の解説記事をご覧ください。
透かし剪定のわかりやすい4つの手順
さて、ここまでが透かし剪定で切るべき枝や枝の切り方の説明になります。
次は実際に透かし剪定をするときの具体的な手順を紹介しましょう。
透かし剪定の手順は以下のとおりです。
手順1.まずは仕上がりのイメージを考える
手順2.12種類の不要枝を切り枝数を減らす
手順3.長い枝を切り樹形を整える
手順4.細かい枝を切り全体のバランスを整える
たったこれだけでキレイな庭木になりますので、ぜひ覚えてください!
手順1から説明していきます。
手順1.まずは仕上がりのイメージを考える
最初にやることは剪定後の庭木をどのような形にしたいのか、仕上がりのイメージを考えることです。
具体的には木の高さ・幅・形の3つです。
これらが決まっていないと、いざ剪定をしたときにどこまで切っていいのかがわからず、不格好な樹形になりがちです。
そのため、大まかにでもよいので必ず考えておきましょう。
イメージの仕方としてよく使われるのが「ダイヤ理論」という考え方です。
ダイヤ理論とは、木全体をダイヤ型に仕立てるという考え方です。
ダイヤの形をイメージして、できるだけその形に近くなるように枝を切っていきます。
ダイヤを縦長にするのか横長にするのかは自由です。
とにかくダイヤ型になっていればよいので、高さや幅をどのくらいにするのかは、あなたの好みや周囲の環境に合わせて考えてみてください。
ダイヤ型のほかにも卵型、傘型、放射線型などさまざまな型がありますが、比較的どの種類の樹木でも美しく見えるのがダイヤ型です。
そのため、まずはダイヤ型をイメージして透かし剪定をしてみましょう!
今後剪定に慣れてきたらほかの型にも挑戦してみてください。
手順2.12種類の不要枝を切り枝数を減らす
仕上がりのイメージができたら、不要枝を切って枝数を減らしましょう。
先ほどの「これだけは切った方がよい12種類の不要枝」で紹介した枝です。
不要枝を切るだけでもだいぶスッキリしますし、木の健康状態もよくなります。
切るときは「枝の分岐点のつけ根」で切るようにしましょう!
手順3.長い枝を切り樹形を整える
不要枝を切り終わったら、樹形に関わるような長い枝を切っていきましょう。
このときは、木の上から順番に下に向かって剪定していきます。
木の上から見ていったときに、手順1でイメージしたダイヤ型からはみ出している枝を探してください。
ダイヤ型からはみ出している枝を見つけたら、その枝の「分岐点の根元」もしくは「外芽の上」で切りましょう!
木全体が理想の大きさになるまでこの作業を繰り返し、徐々に木の輪郭を作っていってください。
手順4.細かい枝を切り全体のバランスを整える
ある程度木の輪郭がとれてきたら、仕上げとして細かい枝を切りましょう。
ポイントは当記事の「コツ2.切る枝は「間隔」と「配置」を意識して選ぶ」で解説したとおり、枝の間を光と風が均等に通り、どこも均等に枝がある状態にすることです。
枝葉が多い部分の枝を切り、枝葉が少ない部分に合わせていきましょう!
このときも枝を切る位置は「分岐点の根元」か「外芽の上」です。
また、もしどちらの枝を切ったらいいのかわからなくなったときは、より太いほうの枝を切ってください!
透かし剪定では、太い枝を切って細い枝を残すのが基本です。
樹木は太い枝があると無骨に見えますが、細い枝がスーッと伸びていると美しく見えます。
そのため、切る枝に迷ったら太いほうを切るように意識しておきましょう!
透かし剪定に必要な道具
透かし剪定のやり方はおわかりいただけたでしょうか。
実際に作業をおこなうときは、再度当記事を読みながら進めていただけたらと思います。
では、透かし剪定をおこなうにあたって必要な道具について紹介します。
道具は必須のものと必須ではないものがあります。
道具 | 用途・詳細 | |
必須 | 剪定バサミ | 直径1.5cmほどまでの枝を切るためのハサミ。 もっとも使用頻度が高い。 |
植木バサミ (木バサミ) |
葉や茎を切るためのハサミ。 | |
手袋 | ケガをしないために着用。 すべりにくいゴム付きのものがおすすめ。 |
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場合によっては必須 | ノコギリ | 太い枝を切るために使用。 ※剪定バサミでは切れない太い枝を切る場合に必要。 |
脚立 | 高い位置の枝葉を切るために使用。 4点脚立より、園芸用の3点脚立の方が使いやすくおすすめ。 ※背の高い木を剪定する場合に必要。 |
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必須ではないがあると便利 | 養生シート | 剪定前に木の周辺に敷くために使用。 切った枝葉が養生シートの上に溜まるため、片付けが楽になる。 |
熊手・ホウキ | 切った枝葉を片付けるために使用 | |
癒合剤 | 剪定後に枝の切り口に塗るために使用。 癒合剤を塗ることで切り口の治りを早くし、腐朽菌のリスクを下げる効果がある。 |
必須の道具は剪定バサミ・植木バサミ・手袋です。
最低限この3つは事前に用意しておきましょう!
ノコギリや脚立は場合によっては必須ですので、あなたの庭木の大きさや状況などに合わせて、必要であれば用意してください。
養生シートや熊手、ほうき、癒合剤も必須ではありませんが、用意しておくと後片付けが楽になったり、腐朽菌のリスクを低下させたりできます。
余裕があれば用意するようにしてください。
すべてホームセンターや通販などで販売されているため、必要な道具はあらかじめ購入しておきましょう!
詳しくは最低限必要な剪定道具をまとめた記事をご覧ください。
透かし剪定をおこなう時期
最後になりますが、透かし剪定をおこなう時期を紹介します。
時期を間違えると木が枯れてしまうこともありますので、しっかりと覚えておきましょう!
透かし剪定をおこなう時期は、落葉樹と常緑樹でそれぞれ違います。
樹木のタイプ | 剪定時期 | 代表的な樹木 |
落葉樹 | 12~2月 | ドウダンツツジ、アオダモ、ヤマボウシ、ハナミズキ、ライラック、モクレン、エゴノキ、スモークツリー、サルスベリ、ミツマタ |
常緑樹 | 3月、6月、9月 | 松、コニファー、シマトネリコ、ヒイラギ、ユズリハ、ミモザ、トキワマンサク、ツツジ、キンモクセイ、ツバキ |
落葉樹は冬に向けて、十分な養分を体内に蓄える性質があります。
そのため、養分が豊富な冬の時期であれば、枯れる心配をせずに剪定することができます。
一方、常緑樹は1年中葉をつけて光合成するため、養分を体内に蓄える性質がありません。
日差しが弱い冬に剪定をすると、養分が足りず枯れてしまうため、初夏がもっとも適した剪定時期になります。
ただし、注意点が1つあります。
それは、落葉樹も常緑樹も花を楽しみたい場合は剪定時期が変わるということ。
花を楽しみたい場合の剪定時期を説明します。
花を楽しみたい場合は「花後剪定」をしよう
花木を剪定するときは、花が咲き終わったあとすぐに剪定をしましょう!
花が咲き終わったあとすぐにおこなう剪定を「花後剪定」といいます。
樹木のタイプ | 剪定時期 | 代表的な樹木 |
花木 | 花が咲き終わったあとすぐ | ドウダンツツジ、サツキ、ツバキ、サザンカ、ハナミズキ、ミモザ、キンモクセイ、カイヅカイブキ、フジ |
花木は花が咲き終わりしばらくすると、翌年に咲く花の芽が育ってきます。
先ほど伝えた剪定時期にはすでに花芽が育っているため、通常どおりに剪定すると花芽を切ってしまい、翌年にはほとんど花が咲かない状態になってしまうのです。
花が咲き終わったあとすぐの剪定であれば、まだ花芽ができる前になるため、翌年の開花に影響することなく不要な枝を切ることができます。
樹形を整えるだけで花は咲かなくてもよい、という方は落葉樹と常緑樹の剪定時期に従って透かし剪定をしてください。
詳しくは剪定時期の解説記事をご覧ください。
まとめ
以上が透かし剪定のやり方やコツになります。
透かし剪定は作業者の腕で仕上がりの美しさが変わる剪定方法ではありますが、初心者にはできないということは決してありません。
正しい知識をもって取り組めば誰でもおこなうことができます。
少しずつ上達していけば剪定をする楽しみもきっと大きくなりますので、あなたもぜひ挑戦してみてください!
上条祐一郎『
剪定 「コツ」の科学 いつどこで切ったらよいかがわかる』講談社、2016