自分の敷地内に侵入した隣の木の枝を伐採するのは法律に違反する行為です。しかし、緊急を要する場合は違反とならない場合もあります。
また、隣家の木の枝により車が傷つけられるなどの損害を受けた際には、木の所有者に損害賠償を請求することができます。ただし、その家が空き家だった場合は土地の所有者を調べる必要があります。
隣の家の木の枝が、自分の敷地内に侵入することはよくあるかもしれません。そんな些細なことが、大きなトラブルへと発展する前に解決策や民法などのルールを知っておくことが大切です。
目次
隣の木の枝を伐採って勝手にできるの?
隣の木の枝が自分の敷地内に入ると、大きな影響がなくても気になってしまう人は多いかもしれません。敷地内に入っているのだから、隣家の木の枝でも伐採していいのではと考えることもあるでしょう。しかし、それをしてしまうと木の所有者に損害賠償を請求される場合があります。
では、枝の被害を受けていた側がどうして損害賠償を支払わなければならなくなるのかを、民法とともにご紹介していきます。
隣の木の枝が侵入してきた……勝手に枝を伐採してもよい?
民法223条によって、敷地内に隣家の木の枝が侵入していたとしても、勝手に隣の木の枝の伐採をしてはいけないということが定められています。枝だけでなく果実も、その木の所有者の所有物ですので採ってはいけません。
もし、隣のご自宅へ了承を得ず枝を切ってしまった場合、違法行為とみなされ罰金や責任を負わなくてはならなくなる可能性があります。しかし、侵入している部分が枝ではなく根である場合は自分で切り取っても違法行為にはなりません。
まずは隣の人に伐採してもらうよう依頼しよう!
隣の木の枝でトラブルが発生しているときは、自分で切ってしまうのではなく、まずはその木の所有者に報告をしてみましょう。所有者が、枝を切るまたは木の植え替えをするなど改善策を講じるという流れが理想的です。
木の所有者に相談した際に、侵入している分の枝を切っても構わないといわれた場合は、のちのトラブルを回避するために、その旨を同意書として紙に書き残しておきましょう。木の所有者のサインなどがあるとよいです。
相手に断られた場合は?
侵入している枝のトラブルを報告、相談しても木の所有者が対策をしてくれないときは、竹木切除権により裁判所に訴えることが可能です。その際は民法414条により木の所有者の費用で枝の切除を請求できます。
しかし裁判で、侵入した枝により起こる問題がないと判断されてしまった際には、枝を切除してもらうことができない場合があります。そのため、枝の切除を強く請求したいときは証拠として、侵入した枝が起こしている問題を写真に撮り、記録しておくことがおすすめです。
危険性が高い場合は、強制的に切ることも可能です
隣家が所持している木によって起こる問題の危険性が高いとされた場合は、強制的に切ることができることもあります。危険性が高い場合とは、その木が地震や落雷、台風や寿命などが原因で倒れることにより、家が壊れる、玄関がふさがれてしまうなどの可能性があるときです。
隣家が空き家だった場合はどうする?
近年増えている空き家ですが、古い家であればその庭に木が植えてあることもあります。その際はまずその家の所有者を調べなければなりません。空き家の所有者がわからない場合の調べ方をご紹介します。
市役所に連絡して所有者を調べる
空き家の所有者がわからないときは、市役所や法務局に調査を依頼してみてください。土地の所有者を調べる場合は法務局で登記事項要約書を確認してみましょう。
登記事項要約書を閲覧する際には450円の手数料がかかります。なお、この登記事項要約書では現在の土地の所有者を調べることが可能です。
ほかにも、固定資産課税台帳を確認するという方法もあり、これも市町村役場にて保管されているものです。これには地番や広さ、所有者などの情報が記載されています。その土地がある市町村に固定資産税を納めている人であれば、縦覧期間のみ第三者も確認することが可能です。
所有者が特定できない場合は家庭裁判所へ
土地の所有者の行方がわからない場合や連絡が取れない場合は家庭裁判所へご相談ください。家庭裁判所に申し立てたのち、財産管理人に木や枝の切除を請求することが可能です。
市役所で調べてもわからなかった場合でも、家庭裁判所を頼れば問題を解決できる場合がありますので大きな問題が起こる前に相談してみることがおすすめです。
隣の木の枝が侵入したまま放置すると……?
隣の木の枝を放置したとき、一体どのようなトラブルの発生が考えられるのでしょうか。小さな問題と思いきや大きな問題へと発展することもあります。
所有物に傷をつけられる恐れがある
例えば、侵入した枝が風にあおられた際に、ベランダに置いてある鉢植えやものが倒される危険性があります。さらに、ベランダ落ちたものが下にいた人に当たってケガを負うおそれもあります。
なお、このように家の壁や屋根、車などが破損した場合は木の所有者に損害賠償を請求することができます。
落ち葉や害虫の被害にあうことも
枝についている葉や虫が自分の敷地内に落ちてしまうことがあります。枝から落ちた害虫によって、自宅で育てている植物に被害がでる可能性もありますので、敷地内に落ちた葉や虫の処理は自分でおこなわなくてはなりません。
事態が悪化する前に伐採をお願いしよう!
先ほど、隣家の木の枝によってものが破損した場合、その賠償責任は木の所有者にあることをお伝えしました。しかし、今後の関係性や穏便に事態の悪化を防ぐためには早めに相談することがおすすめです。
伐採の了承を得ても、隣家の木が大きく、素人では切ることができない場合は業者に相談してみてください。業者によっては無料で見積りをだしてもらうことも可能です。
庭木の伐採を業者に依頼したときの費用
木の伐採にかかる費用は、木の大きさや高さ、種類よって違いがあります。そして、一律ではありませんので、依頼する業者によってもかかる費用は異なります。どれだけ費用がかかるかなどの詳細は、見積りを取ることで調べることが可能です。
業者によっては相談や見積りが無料でおこなえますので、そういったサービスを利用するとよいでしょう。
伐採にかかる費用を調べることによって、真剣に困っていることを隣家に伝えることができるでしょう。見積り内容は、隣家と木の伐採について相談するための資料のひとつにもなります。
まとめ
自分の敷地内に侵入していたとしても、隣の木の枝を伐採してはいけません。まずはその木の所有者に報告と相談をしてみてください。もしその際に、枝の伐採を検討してもらえない場合は、裁判を起こすことも可能です。
しかし、今後の隣人との関係のためにもできるだけ穏便に済ませたいものですよね。そのためにも、まずは困っていることを伝え、みずから見積りを取るなどして協力的な姿勢で一緒に問題を解決していくのがよいのではないでしょうか。