伐採といえば、森林を切り崩すような大規模なものをイメージされる方も多いかもしれませんが、意外と身近に溢れているものなのです。たとえば庭木が育ちすぎてしまった場合、近隣への影響なども考慮して伐採をおこなわなければならない状況などが挙げられます。そんなときに「自分で伐採してみようかな?」と考える方もいるでしょう。
しかし、伐採は高い技術と豊富な知識、数多くの道具がそろった状態で初めて安全におこなえるものです。自力で伐採をおこなう難しさとして、あまり知られていない伐採道具や重機、大型車の役割などを解説します。
安全第一!身を守る大事な道具
服装や身に付けるものはとても重要であり、1つでも欠けてしまうと伐採の安全性や作業効率が大幅に低下してしまいます。使用する道具や機材には危険度の高いものが多く、少しでも手元や足元が狂ってしまえば取り返しのつかない大怪我をする危険性が十分に考えられるのです。
安全に伐採をおこなえる環境作りをすることは、ご自身の怪我の防止のみならず数多くのトラブルを回避することにもつながります。
事故を減らすための道具も必要です
伐採をおこなう際には身の安全を確保するだけではなく、さまざまな道具などを駆使して周辺の安全にも配慮をする必要があります。測量機器を用いて、事前に周囲の状況をしっかりと把握することも大切です。
そして、事故を防ぐためにもっとも重要なのは、道具の使用方法と倒木方向の調整です。これらは一歩間違えただけでも大きな被害が生じることがありますので、念には念を入れて、慎重かつ丁寧に作業をおこなわなければいけません。
そのほかにも、滑車を使えば小さな力で大きなものを運ぶことが可能となり、作業効率の大幅アップ、ひいては事故要素を減らすことにもつながります。
名称 | 使い方・用途 |
---|---|
クサビ | 堅い材料で作られたV字または三角形の道具。チェーンソーなどで樹木に入れた切れ目に挟むと倒木を任意の方向へ誘導させることができる。 |
枝切りはさみ |
安全のため、伐倒前に枝や葉を落とす必要があるときに使う。
|
一本はしご | 高さのある樹木の枝落としなどをおこなう際に使う。一本はしごを木に密着させてしっかりとロープで固定してのぼる。 |
のこぎり | 木を切る道具。伐採には「横挽き」という、木の繊維を直角に断ち切れる刃ののこぎりが適している。 |
パワーウィンチ | 倒木方向の微調整に使う。ほかにもけん引具として、プラロックと呼ばれる道具も同様の効果がある。 |
ランヤード |
いわいる「命綱」。高い樹木などにのぼる場合には必須ともいえるアイテム。
|
フェリングレバー | かぎ爪をひっかけることで、樹木を倒したり、運んだりする道具。てこの原理を利用して、倒木方向を変えることもできる。 |
ワイヤーロープ |
切り込みを入れた樹木をワイヤーロープでけん引して倒す。倒木方向の調整や伐倒規制にも使用する。
|
リギングロープ |
枝払いの際に太い枝をつり下ろしたり、作業者が樹木にのぼったりするためのロープ。
|
電動のこぎり |
木を切る道具。電動のこぎりを使用する際は、少しずつ細かな角度調整をおこなうなどの専門的な技術が必要。
|
重機なしの大規模伐採は考えられません!
大規模伐採をおこなう場合には、重機や大型車などの使用が不可欠です。重機には伐採をおこなうものや伐採後の樹木を任意の場所へ移動させるものなどがありますが、なかには最先端の技術によりまるでロボットのようにあらゆる作業を自動でおこなってくれるものまで存在しています。
これらは必ずしも購入しなければならないものではなく、レンタルすることも可能です。ただし、使用の際には専用の免許や資格が必要になる場合があります。
名称 | 使い方・用途 |
---|---|
ハーベスタ | 立木の伐倒から枝払い、玉切り(※)、集積まですべてを一貫しておこなえる万能な重機。名前の由来は「収穫者」を意味する「harvester」。 |
グラップル |
樹木の束をつかんで運ぶ重機。名前の由来は「しっかりつかむ」の意味をもつ「grapple」。
|
バケットグラップル | つかむ部分がバケット状のグラップル。樹木をつかむだけでなく、バケット部分ですくったり、地面をならしたりすることもできる。 |
プロセッサ | 枝払いや玉切りをおこなう重機。名前の由来は「加工装置」を意味する「processer」。 |
フェラーバンチャ | はさみ状のヘッドで立木の根元をつかんで伐倒し、そのまま集積することができる重機。名前の由来は「felling」伐倒と「bunching」集積。 |
油圧ショベル | アーム部分やバケット状のヘッドを油圧で動かし、掘削や整地をおこなう重機。別名に「バックホー」「ショベルカー」などがある。「ユンボ」は油圧ショベルの商品名。 |
スイングヤータ | 油圧ショベルなどの建設用ベースマシンにウィンチ(ワイヤーを動力で巻いてつり上げる機械)を取り付け、架線集材を可能にした重機。 |
ラフタークレーン | 自走式のクレーン。木材をつり上げて運ぶ。公道を走ることもできる。別名「ラフテレーンクレーン」。ラフテレーン(rough terrain)は「起伏の多い地形」という意味で、悪路でも走行や作業が可能。 |
フォワーダ | 林業用に開発された重機で、集材や運搬に特化している。アームを使って自力で木材を積み込むことができる。整地されていない悪路でも安定した運搬が可能。名前の由来は「荷物を運ぶ者」という意味の「fowarder」。 |
※玉切り:樹木を規定の寸法に合わせて切断し、丸太にする作業。
たとえ庭木1本だけでも、安全に伐採をおこなうためには多くの道具が必要です。大規模な伐採ともなれば、大型の重機も欠かせません。そして、道具や重機を適切に取り扱うためには、知識や経験、高い技術もなくてはならないものです。
さらに、住宅街での伐採では近隣への影響も大きな問題です。伐採届の提出など、地域の条例にのっとった手続きをおこない、十分に安全に配慮したうえでの作業が求められます。
日曜大工の感覚で気軽に伐採をおこなうと、重大な事故や思わぬトラブルが発生してしまうかもしれません。伐採をお考えの方は、プロの業者に相談してみることをおすすめします。