防犯カメラの導入を検討する際、最初に見えてくる分かれ道が、カメラを有線にすべきか無線にすべきかの選択肢かと思います。有線カメラも無線カメラも、それぞれ異なる性質を持ち、ゆえに得意不得意が明確に分かれています。特徴を把握し適材適所に設置する手助けとなるよう、有線カメラの特徴とスペック、無線カメラとの比較情報をご紹介していきます。
目次
有線カメラは防犯・監視カメラの基本
有線カメラは、本体から伸びるケーブルを録画制御機器に接続して、直接データのやり取りをするカメラです。無線技術が発達するまでは有線での敷設が一般的でしたので、有線カメラは防犯・監視カメラの基本ともいえます。
まずは有線カメラが具体的にどのような性質を備えているか、以下にご説明します。
有線カメラの特徴
前述の通り、ケーブルによって伝送する有線カメラは防犯・監視カメラの祖ともいえる長い歴史を持っています。
古くは1970年代から配備がスタートしたとされており、今日まで数々の技術とそれを応用した製品が開発されてきました。長く使われているということは、裏を返せばそれだけノウハウが蓄積されており、動作が安定しているということでもあります。
無線技術が普及してなお現役で活躍し続けている有線カメラには、信頼される裏付けがあるのです。
有線カメラについている機能
一般的な有線カメラには、防犯・監視を目的とした以下のような機能を持つものがあります。
▶赤外線暗視機能
光源に乏しい夜間や暗がりにおいて効果を発揮するのがこの暗視機能です。
目に見えない赤外線を捉えて画像を読み取る方式のほか、超高感度素子により画像の明度を上げるものも存在します。
▶レンズ調整機能
バリフォーカルレンズとも呼ばれる焦点調節が可能なレンズは、最短撮影距離をある程度調整することができます。
撮影範囲を柔軟にコントロールできるため、監視する環境に合わせた最適な視界で設置をする手助けとなります。
▶録画条件設定機能
防犯カメラの捉えた映像を常に録画させ続けていると、大容量の記憶媒体でもすぐにいっぱいになってしまいます。
また膨大になってしまった録画データは確認するのにも大変な手間と時間がかかります。/
例えば夜間のみ、誰かが撮影範囲に入ったときに録画を開始するといった条件を設定することで、おそらく大部分を占めるであろう動きのない映像を省くことができます。
▶センサーライト連携機能
範囲内を動く物体や体温に反応して点灯するセンサーライトに連動して、録画を開始する機能です。
前述の録画時間の削減にもつながるほか、ライトによる威嚇で防犯効果の向上も見込めます。
▶録音機能
高感度の内蔵マイクによって、映像だけでなく人の声や環境音を録音する機能です。
映像とは異なる角度からの情報は、防犯・監視用途においても活用できます。
またスピーカーを搭載し、来訪者と言葉のやり取りができる音声双方向機能を備えた商品も売られています。
有線式の防犯・監視カメラの種類と性能
一口に有線式カメラと言っても、外形からしていくつか種類が存在します。
それぞれ固有の特徴を持っており、活躍できる場所や状況が異なります。
ここでは、一般的に普及している3種類の防犯・監視カメラについて概要と性能を解説いたします。
バレット型は屋外で多く使われます
バレット型カメラは読んで字の如くバレット(弾丸)のように流線型のかたちをした防犯・監視カメラです。
ほとんどの場合屋外用として販売されており、雨ざらしに耐えられるよう防水機能のある頑丈なボディを持っています。
また屋外での夜間撮影が可能なよう暗視機能を搭載しているものが一般的です。見た目にも威圧感があり、設置しておくだけで犯罪抑止の効果を期待することができます。屋外設置向けに、ボディと取り付け金具が一体型になっているものが多いことも特徴です。
屋外でも使用可能な防水機能と丈夫さを持っている
一般的に暗視機能が付いている
設置しておくだけで犯罪抑制効果が期待できる
ボディと取り付け金具が一緒になっているものが多い
ドーム型はバリエーションが豊富
ドーム型カメラは小型のレンズの上に半球状のカバーをかぶせてあるタイプのカメラです。
屋内の天井に設置されることが多いほか、屋外においても軒下や壁などさまざまな場所で使われています。外見としてはあまり威圧感がなく、一見しただけではカメラであると判別しづらい形状を活かし、店舗や事務所のフロアなど人の多く集まる場所での監視用途に用いられやすいカメラになります。
撮影範囲を垂直に見下ろすかたちになるため、比較的視界が広いというのも重要なポイントです。
屋内の天井に設置されることが多い
設置してあっても威圧感がなく、人が集まるところでも使用できる
撮影範囲を垂直に見下ろすかたちになるため、比較的視界が広い
ボックス型は防犯用途に向いたタイプ
ボックス型は箱型のボディにレンズが取り付けられた、いかにも防犯カメラといった外見のカメラです。 その見た目から、防犯カメラがそこに存在していることを第三者にアピールし、犯罪抑止に効果を期待できます。
撮影機能のないダミーカメラであっても高い威嚇力を発揮するため、監視網の中にダミーを混ぜて費用を抑えるといった使い方をされることもあります。 またレンズが大きく露出しているため、交換や調整がしやすく、レンズの種類も選びやすいといった利点もあります。
設置しておくだけで犯罪抑制効果が期待できる
レンズが大きく露出しているため、交換や調整がしやすく、レンズの種類も選びやすい
有線か無線かどちらを選ぶべきか?設置は業者にまかせるべき?
有線カメラと無線カメラはそれぞれ異なるメリットとデメリットを有しています。
設置環境や撮影したい対象によって有線と無線のどちらが適するかを吟味し、どちらを導入するか決める必要があります。また本章では有線カメラの代表的なデメリットの一つである、設置の難しさについても解説していきます。
無線のメリット・デメリット
無線カメラはケーブルによる伝送を用いず、無線LANなどを通じて電波を飛ばし、映像データのやりとりをするカメラです。 商品群としてはワイヤレスカメラと呼ばれている場合もあります。
録画機器とカメラ本体との間にケーブルを通す必要がないというのが最大の特徴になります。
ケーブル配線をしないことによって発生するメリットとデメリットについて、下記にご説明します。
●設置工事が不要な場合が多く、施工や増設が簡単
有線式ではカメラと録画機器とをケーブルでつなぐために、スペースや経路の確保が必要なことがあります。
屋外のカメラと屋内の機器とをつなげる場合だと、壁にケーブルを通す穴を開ける工事をしなければならないこともあります。
無線式にはそういった大掛かりな配線工事をせずとも、電気系統の配線だけで導入が可能という大きなメリットがあります。
これは導入当初だけでなく、例えばカメラを増やしたり設置場所を変更したりする場合にも有利にはたらきます。
●伝送ケーブルがないため設置スペースがコンパクトに収まる
配線回りが電源のみに絞られるため省スペースでの設置が可能です。
また、電源さえ確保できるならある程度設置場所に融通が利くというのも重要な利点です。
●ケーブルの断線を気にする必要がない
家人の不注意や、害鳥・害獣による食害、経年や風雨による劣化など、伝送ケーブルが断裂する危険は数多く存在します。
無線であればそれらケーブルのトラブルの一切から解放されるため、設備維持の手間が大きく省けます。
またケーブル配線の場合壁などを大きく迂回しなければならない場合も無線であれば最短距離をつなげられることも多いです。
●映像にノイズが発生する可能性がある
電波を飛ばして映像を送る方式上、途中で邪魔が入るなどして電波がしっかり届かなければ映像の品質が低下します。
ノイズは物理的な障害物だけでなく、近くで動いている家電製品や車などが原因となることもあります。
●画質や容量に制限がつきやすい
電波に乗せて送れる情報量には限りがあるため、有線に比べると伝送速度の面では不足しがちです。
このため最大フレームレートの高い大容量のデータをやり取りすることは苦手な場合が多いです。
●電波を第三者に傍受される可能性がある。
有線のメリット・デメリット
有線カメラを導入する場合のメリットとデメリットも、以下にご説明します。
・録画映像が安定している
有線カメラの映像データはケーブルによって録画機器へと届けられます。
データの通り道は配線によって確保されているため、障害物もなく確実に伝送されます。
そのためノイズが走る心配もなく、画素数の多い映像を安定して受け取ることが可能というのが代表的なメリットになります。
・映像を高画質にしやすい
無線方式とちがってケーブルは大容量のデータを高速で送ることに長けています。
そのため無線では難しいような高画質かつ長時間の監視映像も録画することが可能です。
また、伝送速度が高いためにカメラ側とモニター側とでタイムラグが少なく、リアルタイムでの監視にも向いています。
・映像を傍受されにくい
データはケーブルの中を通るため、第三者が映像を傍受するには直接ケーブルに触れる必要があります。
ケーブルに触れるには防犯カメラの監視網の中に入ることになるため、必然的にハードルが高くなります。
また傍受されにくいためデータに高度な暗号化を施す必要がなく、これも伝送の高速化につながります。
・施工に工事が必要な場合が多い
無線のメリットの項でもご説明したとおり、ケーブルを通すには物理的な経路の確保が必要になります。
また配線回りも電源と伝送の二通りのケーブルがあるため、手間がかかりがちというのも無視できない不利です。
カメラと録画機器との間に障害物がある場合、迂回のために長いケーブルが必要になる場合もあります。
ケーブルが長くなりすぎると、今度は伝送能力が下がるなどの弊害が発生する可能性があります。
・ケーブル断線のリスクがある
伝送系の配線が物理的に破断してしまえば、せっかくの高画質な映像も録画機器に届かず意味を為しません。
これは不法侵入を企図する者にとって狙いやすい弱点でもあります。
ケーブルを切断しさえすれば防犯カメラを無力化したも同然であるからです。
第三者による意図的な切断を防ぐために、ケーブルを露出しないよう覆ったり、断線時に警報をならすシステムを取り入れるなど、配線の際に工夫する必要があります。
有線式の防犯・監視カメラ設置の難しさ
有線式の防犯・監視カメラを設置しようとする場合、前述の通り配線工事が必要となる場合があります。
エアコン用の穴からケーブルを通す、ドリルで壁に穴を開けるなどといった施工が一般的です。
こうした工事を個人で行おうとすると、迂回を考慮に入れたケーブル長の計算が必要な場合や、壁に埋め込まれている電気配線を傷つけないように注意を払う必要がある場合などには、大変な手間がかかりがちです。
エアコン穴が高所にあるため作業が困難という場合もあります。
また、家の建材に穴を開けるという行為は、雨漏りや害虫の侵入など家そのものの資産価値を損なう事態につながることもあるため、失敗の許されない慎重な行動が要求される作業でもあります。
無理に個人で行おうとするよりも、専門の工事業者に任せるのが安心確実かと思います。
まとめ
有線カメラの種類と無線カメラとの違い、それぞれの特色についてここまでご紹介してきました。
有線にも無線にも、得意とする状況と不得意な状況があります。防犯・監視カメラの導入においては、撮影する目的を明確にして、その用途に適合するカメラを選ぶことが重要です。
バリエーション豊かなカメラの特徴を把握し、どの種類が最も適しているかを判断していきましょう。