マンションやアパートなどに住んでいると、水漏れが起こったときの被害はいよいよ甚大になります。自分の部屋の損害ばかりでなく、近隣の部屋や管理会社などに迷惑がかかってしまうこともあるため、早めに手を打っておきたいところです。しかし、壁や床などの内側にある目に見えない配管からの水漏れは、なかなか気づけないのが現状です。
そこで、注意したいのが「音」です。水漏れの原因によって、屋内の各所からさまざまな音が聞こえることがあります。自宅の水場で聞き覚えのない音がする。そんな時は、どこかで水漏れが起こっているかもしれません。今回は、水漏れとそれに伴って聞こえる音についてご紹介します。
音を伴うことがある排水管・給水管で起こる水漏れ症状
建物の配管に水漏れが発生している場合、実際にはどのような音が聞こえてくるのでしょうか。蛇口や水道、トイレだけでなく、ときには壁や天井の中からの異音も水漏れのサインである可能性があります。
はじめに、水漏れによって引き起こされる音をシーン別にご紹介しましょう。
蛇口・水道からの音
■壁から「ドーン」と音がする
蛇口から出ている水を止めたとき、何かがぶつかるような硬い音が床や壁の中から聞こえることがあります。蛇口の水を止めることによって、水道管の中を流れていた水が急に止まり、パイプの中の壁に激突することで音や衝撃が生まれるのです。これは「ウォーターハンマー現象」と呼ばれ、「水撃」とも言われます。水の衝撃を受けた水道管が壁に激突して音を出す場合もあります。
【対処法】
基本的なことではありますが、蛇口の水を丁寧に止めるようにしましょう。それでも改善されない場合は、圧力軽減装置がついた蛇口へ交換したり、水撃防止装置を取り付けたりすることで対処ができます。
水圧が高い地域にある建物や、深夜の時間帯に起こりやすいといわれます。振動や大音が近隣へ伝わったり、振動でパイプを傷めてしまったりすることもあるため、何らかの対策が必要です。
■蛇口から「ブーン」
ハンドル式の蛇口を使うとこれらの音が聞こえることがあります。振動や共鳴を感じるような異音がしたときは、部品の劣化や、それに伴う水漏れを疑いましょう。
【対処法】
原因として考えられるのは、水栓コマとよばれるコマパッキンの摩耗です。きのこのような形をした金属部品で、パッキンが一緒にくっついています。劣化しやすい場所でもあるので、異常を感じたらすぐに交換するようにしましょう。
自分で交換する自信がない方は、きちんと業者に依頼し、水漏れ修理のプロの手で修理をしてもらいましょう。
天井からの音
■天井の中で「ポタポタ」
天井の中でしずくが落ちるような音がするときは、主に二つの原因が考えられます。どちらが原因なのかは、業者による調査で特定してもらいます。
・原因1
天井から水が滴る音がするとき、まず考えられるのは「水漏れ」です。パイプには、蛇口まで水やお湯を届ける「給水(湯)管」と、使った水を外へと排出する「配水管」の二種類があります。
天井で水漏れが起こっている場合、そのどちらかから水が漏れているということになります。
【対処法】
水漏れが起こっている箇所のパイプを新しいものに取り換えて修理します。天井裏での水漏れが起こると、落ちてきた水分によって天井材にシミができることが多いので、水漏れの疑いが目視できる場合もあります。天井の腐食を防ぐためにも早期の施工が必要です。
・原因2
天井からポタポタと音がするとき、水漏れ以外にも考えられるのが「パイプの伸び」です。家の中を通っているパイプには、塩化ビニル製のものがあります。しかし塩化ビニルは熱にあまり強くないため、熱湯が流れると熱でパイプが伸びてしまいます。
その現象によって、水が滴るような音が聞こえることがあるのです。
【対処法】
天井に水に濡れたようなシミができておらず、お風呂が上の階にあるときは、ほとんどの場合パイプの伸びによる異音と思われます。原因のパイプと木材が触れ合っている箇所に、布や発泡スチロールなどやわらかいものを挟むと、音は消滅します。
パイプと木材が触れていなければ音がしなくなるからです。
床からの音
・原因1
台所の床下から水音がする場合は、シンクの下のトラップ、配管のパッキンやゴム、あるいは配管自体の劣化が考えられます。トラップとは、シンクの流しの排水口の下部にあるパーツで、水を貯めることによって下水臭を食い止める働きがあります。
S型と呼ばれる曲がりくねった形状のものと、ワントラップと呼ばれるバケツ型が主流です。
【対処法】
台所のシンクに使われるゴムパーツや配管部品は、生ごみや生活排水などに長時間さらされるため劣化や汚れが起こりやすくなります。配管の劣化も、悪化しないうちに早期の対策が必要になります。劣化が起きた部分を交換し、新しい部品に取り換えましょう。
・原因2
台所の床下からの水音の原因としてもうひとつ考えられるのは、床下の給水管に異常が発生していることです。原因として疑われるのは、ウォーターハンマー現象での破損です。
配管の破損を引き起こすほどのウォーターハンマー現象は、手で回して水を出すタイプの蛇口では起こりづらいと言われています。
しかし、あまりに激しい水流を使うと起こる可能性もあります。日常的に起こると、給水管が繰り返し壁に激突して、亀裂が入る場合もあります。ちなみに、激しいウォーターハンマー現象は特にドラム式洗濯機で起きやすいです。給水を全開にした状態から、急に水を止める仕組みをしているためです。
【対処法】
一番の対策は、「ゆっくりと栓を開閉する」ことです。蛇口の水を出したりとめたりするときには、特に注意をしましょう。ドラム式洗濯機は自動給水のため、蛇口のようにゆっくり開閉することができないので、水撃防止器などの装置を取り付けましょう。
トイレからの音
■床下から「ピシャピシャ」
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異音の原因が特定できないときには
異音が聞こえてきてもその原因が特定できないときには、どうすればいいのでしょうか。水漏れがあるかどうかチェックするには、異音の原因探し以外にもいくつか方法があります。
ここでは、自分でできる漏水調査と応急処置の方法についてご紹介します。着眼ポイントを押さえて、ご自宅の水回りに漏水がないかどうか確認してみて下さい。
水漏れの確認方法と漏水調査
水漏れがあるかどうか、自分でチェックしてみましょう。水道から水を出していないのに、水道メーターの「パイロット」と呼ばれる赤い部分が動いているときは、どこかで漏水が起こっていると考えていいでしょう。
また、以下のような現象が現れたときにも漏水の疑いがあります。
●台所や浴室など、配管のある壁や羽目板がいつも濡れている
●受水タンクから水が出ていないのに、ポンプのモーターがたびたび動く
漏水が起こっている場合、水道代が高額になっていることが多いので、水道料金の振り込み用紙などを注意深く見てみましょう。自己判断では心もとない場合は、水漏れ修理のプロに調査を依頼する方法もあります。
ポタポタとした漏水を放置する危険性
ほんの少しの漏水だからといって、甘く見てはいけません。はじめは少量でも、だんだんと量が増えていくのが漏水の特徴です。判断の目安としては以下のようになります。
・蛇口からポタポタと滴る漏水で、一カ月に1㎡
・蛇口から糸のように流れるもので、一カ月に6㎡、
・水洗トイレから常に少量の水が流れるケースで、一カ月に20~40㎡
ちりも積もれば山となる式で、漏水は予想以上の量に及んでいる場合があるのです。
水漏れを発見したときの応急処置
水漏れを発見した時の応急処置には方法があります。
まず、それ以上無駄な水を漏れさせないために、一時的に水の供給を止めましょう。家中の水を止めるには、水道の元栓を閉めます。
基本的には水道メーターの横につけられていて、右に回すと閉まり、左に回すと開きます。
漏水の起きている機器のみを部分的に断水したいときには、止水栓を締めます。止水栓は各機器に取り付けられていて、ハンドル式、ドライバー式、内ネジ式の三種類があります。開閉の方向は元栓と同じです。
栓を閉めて水の流れと水漏れを一時的に止めた状態で、業者に相談しましょう。異音のする場所などを詳細に話し、きちんと修理してもらうようにしましょう。
まとめ
水道管は壁や天井、床など目に見えない場所にもめぐらされており、家の人間の気づかぬうちに漏水が起こっている場合があります。水場で水を流したときなどにおかしな音が聞こえたら、漏水を疑ってください。
・蛇口・水道からの衝撃音・共鳴音や振動音
・天井、床からの水音
・トイレでの水音、異音と同時に起こる詰まり
これらの現象が見られた場合は、漏水を起こしている可能性があるので注意しましょう。また、以下のようなことを調査する必要があります。
・水道メーターのパイロットの観察
・水場周辺の異常の確認
水漏れの可能性があれば、止水栓や元栓を閉めて水漏れを一時的に止めたあとで、業者に修理工事を依頼しましょう。