伐採届は、地域森林計画の対象である木を伐採する場合に必要です。伐採届は適切に整備がおこなわれるかを確認するために必要なもので、森林法という法律で決まっていて届け出をおこなわなかった場合は罰則もあるのです。
この記事では、伐採届が必要な場合から伐採届の提出方法についてお伝えしていきます。伐採をおこなう方はこの記事を読んで伐採届について理解しておきましょう。
そもそも伐採届の目的とは
伐採届とは、伐採・伐採後の造林が適切で安全な管理や整備をおこなわれるかを確認するという目的で、市町村長に提出する届け出です。伐採届の提出は、過剰な森林の伐採を防ぎ正しく森林整備がおこなわれるために制定された「森林法」の10条の8で定められているのです。
伐採によって適切で安全な整備がおこなわれるかどうかは、「市町村森林設備計画」に適合しているかどうかで判断されます。市町村森林設備計画とは、市町村で定めている森林の施策の方向性や指針のことです。
市町村の職員は、農林水産省が提示している「届け出制度事務処理マニュアル」に基づき、市町村森林設備計画に適合しているかを確認して、適切で安全な管理や設備がおこなわれているかを確認しているようです。
伐採届が必要になるのはどんなとき?
伐採届が必要になるのは、「地域森林計画の対象」となる木です。地域森林計画の対象かどうかわからない場合は、自治体の窓口に問い合わせることで確認できるようです。基本的に、問い合わせの窓口は自治体のホームページに記載されているようなので、チェックしてみるとよいでしょう。
なお、行政により定められた森林法に、以下のような場合は「伐採届の提出は不要」と記載されています。伐採前に、これからおこなおうとする伐採が以下に当てはまるかどうか確認しておきましょう。
<場所>
- 保安林である
<作業>
- 除伐(植栽した木の生育を妨げる木や生育の悪い木を除去すること)
- 災害による被害にともなう緊急の伐採
- 倒木や枯れ木の伐採
- 竹の伐採
- 枝打ち(よい木材をつくるために、木の成長過程で枝を落とすこと)
- 枝払い(木材を加工する際、伐採した木の枝を切り取る作業のこと)
こういう場合でも届け出の対象です
「伐採届って1本でも必要なのかな」とお考えの方もいるかもしれませんが、伐採届の有無は「伐採する木の本数」は関係ありません。以下のような場合であっても伐採届の提出は必要となります。
〇1本だけの伐採
伐採したい木が1本であったとしても、地域森林計画の対象であれば伐採届の提出が必要です。
〇低木の伐採
伐採したい木の高さは伐採届提出の有無には関係しないので、伐採届の提出が必要です。
基本的に「伐採をしなきゃ……」という状況のときは届け出を提出するのが基本です。ただ、もし伐採届が必要かどうかわからないときには、自治体の窓口に直接確認してみるとよいかもしれません。
伐採の届け出以外に許可が必要になるケースも
伐採届以外に、伐採の際に都道府県知事の許可が必要になる場合があります。ここでは、許可が必要な2つの場合について見ていきましょう。
・保安林である場合
保安林とは、水源のかん養、災害の防止といった生活環境の保全などのために指定されている森林のことです。この保安林がしっかりと機能を果たすためにも、伐採を制限しているのです。そのため、伐採しようとしている木が保安林に指定されている場合は、伐採届は不要なものの、事前に都道府県知事の許可が必要になります。
・1ヘクタール以上の開発をともなう伐採の場合
地域森林計画の対象となる木(保安林を除く)で、1ヘクタール以上の開発をともなう伐採をおこなう場合には、「林地開発許可制度」によって都道府県知事への許可が必要になります。
林地開発許可制度は、災害防止や環境保全などの森林の働きを失わないために不適切な開発を防止するための制度です。1ヘクタール以上の開発をともなう伐採は、この許可が下りた場合のみ伐採することが可能になります。
保安林や1ヘクタール以上の開発をともなう伐採をおこなう際、許可を受けるための申請書は、自治体のホームページでダウンロードすることができるようですので、これらに当てはまっている方は一度確認してみるとよいでしょう。
伐採届の提出方法
伐採届には以下のように「伐採前」に提出するものと「伐採後」に提出するものがあります。
伐採前:伐採及び伐採後の造林の届出書
伐採後:伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書
伐採をおこなう前だけじゃなく、伐採後もしっかり報告しなければならないということをおぼえておきましょう。
ここでは、これらの伐採届の提出先や提出時期、基本的な伐採届の提出方法や提出までの流れを紹介します。きちんと全体の流れを知っておけば、安心して伐採をおこなうことができるはずです。
提出する人・提出先
伐採届を提出する人と提出先は、以下のとおりです。
<提出する人>
森林所有者や立木(地面に生育している木)を買い受けた者など
※伐採する者と伐採後に造林をおこなう者が異なる場合、両者が共同で提出
<提出先>
伐採や造林をおこなおうとしている森林や立木がある市町村の窓口(自治体のホームページで確認することができるようです)
いつまでに提出するのか・必要書類
伐採届の提出期間と必要書類は、以下のとおりです。
<提出期間>
伐採及び伐採後の造林の届出書の提出:伐採開始の90日前から30日前まで
伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書の提出:造林完了日から30日以内
<必要な書類>
〇伐採前
- 伐採及び伐採後の造林の届出書
- 伐採場所の位置がわかる地図
- 伐採場所の面積がわかる平面図
- 登記簿謄本など伐採場所の権利を有していることがわかるもの
伐採前には、「伐採及び伐採後の造林の届出書」を伐採や伐採後の造林が正しくおこなわれるよう各市区町村に提出します。この書類には、森林や立木の所在地や造林の面積、造林方法など詳しい伐採計画を記載し、記載したとおりに伐採をおこなっていきます。
〇伐採後
- 伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書
- 作業前後の写真など伐採や造林をおこなったことがわかるもの
伐採及び伐採後の造林の届出書に基づいた伐採や造林がおこなわれ作業が完了したら、「伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書」を提出します。この書類には、伐採や造林の実施状況を正しく記載し、各市区町村へ報告します。伐採届は、造林しない場合でも造林以外に別の用途で使用する旨をきちんと記載し報告しなければなりません。
伐採前や伐採後に提出する必要書類は、各市区町村によって異なるため事前に確認しておくようにしましょう。
伐採届を出し終わったら、実際に伐採をおこなっていきましょう。もし、伐採に不安がある方は弊社にご相談ください。弊社では、伐採業者をご紹介しております。全国各地に加盟店がありますので、日本全国の方にご利用いただけます。
伐採届を提出しないと罰則のおそれがある!
伐採届の提出は、森林法で定められていて、もし伐採届を提出しない場合は法律違反となります。
もし伐採途中で無届が発覚した場合には、伐採の中止命令が下されることがあり、また無届で伐採をおこない造林がされていない場合は、造林の命令が下されることもあるのです。
もしそれらの命令に従わない場合は、森林法第207条により100万円以下の罰金を支払わなくてはならないこともあるので、伐採届は必ず提出するようにしましょう。
伐採をおこなう方法
手続きが済んだら、いよいよ伐採をおこないます。ここでは、自分で伐採をおこなう方法と業者に依頼する方法をご紹介します。伐採にはさまざまな道具が必要ですので、スムーズに伐採できるよう漏れなくきちんと準備しておきましょう。
【1】自分で伐採する場合
自分で伐採するときは、「高さ3メートル未満」「太さ20センチメートル未満」を目安にしてください。これ以上大きい場合は素人には伐採が難しく、ケガをするリスクが高いです。これ以上大きい木を伐採したい場合は、業者に依頼するようしましょう。
作業に適した服装:季節に合わせ快適かつ安全に作業できるものを選ぶ
- 作業着……肌を保護するため(夏場は通気性のよいものを選ぶ)
- 軍手……木くずが刺さったりケガをしたりするおそれがあるため
- 帽子……熱射病や日射病を防ぐため
木を切る道具:値段はものにより差があるが、できるだけ切れやすいものを選ぶ
- ノコギリ……チェーンソーが使えないような狭い場所でもスムーズに作業するため
- チェーンソー……大型のチェーンソーは重量があるが性能も高く切れやすい
- 除草剤……伐根が難しい場合に効率よく根を枯らせるため
木を処分する道具:できるだけ摩擦に強く丈夫な素材を選ぶ
- ロープ……木を処分しやすいようにまとめるため
※ロープは、木を倒したい方向に固定して安全に倒すためにも使用可能
後片付けをする掃除道具:作業が負担にならないよう体に合った大きさを選ぶ
- ゴミ袋……木くずや枯葉を処分するため
- ほうきとちりとり……木くずや枯葉をまとめるため
<方法>
まずは、密集した部分の不要な枝を切り落として軽くしておきましょう。不要な枝を切ったら、安全に伐採をすすめるために、「受け口」と「追い口」を幹に入れていきます。
まず、受け口を倒木方向に斜めに入れていきます。直径の約4分の1を目安に切り込んでいきましょう。続いて、受け口の反対側に追い口を入れます。だいたい受け口の3分の2程度の高さから切り込んでいきましょう。このとき、追い口と受け口との距離は最低でも2cmほど残しておきます。
失敗を防ぐため、チョークやマジックでマークを用意して事前に切り込みを入れる箇所に印をつけておくのもよいでしょう。大胆に切り込みを入れようとせず少しずつ切っていってください。
そして、木が倒れ始めたらすぐにその場を離れましょう。もし追い口を入れても木が倒れていかない場合は、追い口側から受け口側に木を押し、倒してください。
<危険性>
伐採は、きちんと作業前に確認をしておかないと事故やトラブルを起こしてしまうおそれがあります。木が思わぬ方向に倒れたり周辺の電線に接触したりするほか、木が倒れたことで近隣住民とのトラブルになったり木を放置したことで害虫被害を招いたりしてしまいます。そのようなことがないよう、伐採前にきちんと確認を怠らないようにすることが大切です。
【2】業者に伐採を依頼する場合
自分で伐採や造園をおこなわずすべて業者に任せれば、道具をそろえたりする手間もなく豊富な知識と技術力でスムーズに作業でしてもらうことができます。ここからは、業者に伐採を依頼する詳しいメリットや業者に依頼する費用相場を詳しく見ていきましょう。
- 専門知識も技術力もあるので作業が早い
- 安全確認が適切におこなわれ危険が少ない
- 道具の準備を一括しておこなってくれる
- 伐採後の造園までおこなってもらえる
- 伐採以外にも植樹や植栽などに関する相談ができる
自分で伐採をおこなうのは、倒木によるケガなど危険がともないます。安全かつスムーズに作業を終えられるよう、業者にお願いすることをおすすめします。
<業者に依頼した際の一般的な伐採費用相場>
業者への依頼を検討している方の中には、「高額な伐採費用がかかりそうで、依頼をためらっている……」という方もいらっしゃるかもしれません。そこで、伐採業者5社の伐採料金の平均値を調べたところ、以下のようになりました。
〇1本あたりの伐採費用
木の高さ | 伐採料金 |
3m未満 | 4,591円 |
3~5m未満 | 10,382円 |
5~7m未満 | 25,015円 |
※2020年10月時点
伐採は、基本的に1本からご依頼可能です。通常、本数が多く高さがあるほど費用も高くなります。上記の費用はあくまで一例で、作業に使用する道具や伐採する本数、伐採の難易度によっても費用に差が生じます。たとえば、伐採場所周辺に駐車スペースがない、遠方での作業になる、本数が多く人手が要るという場合には、料金が高くなってしまうようです。
業者に依頼したいと考えたときは、まずは弊社の無料相談窓口へご連絡ください。弊社で紹介する業者は、現地を徹底調査してわかりやすい見積書を作成いたします。
内容にご納得いただいてからの作業となりますので、不明瞭な作業や見積り後の追加請求などもありません。ご相談や調査は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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