日常の中に潜む悪意、家財を脅かす泥棒、空き巣の存在は、人間社会に生きるうえで無視のできない脅威です。
警視庁の発表によれば、平成28年時点での一日あたりの空き巣被害件数は100件を超えるとされています。これはあくまで発覚している窃盗被害の数であり、住人が気付いていない、潜在的な空き巣被害も含めれば被害件数は更に大きくなるとも言われています。
治安の良い地域に住んでいる方にとっても、空き巣は対岸の火事ではないかもしれません。いつ遭遇するか分からない空き巣から家と財産を守るには、常日頃から防犯意識を持って対策することが重要です。
今から始められる簡単な防犯対策や、防犯グッズ、監視カメラなど、自分でできる空き巣対策をご紹介します。
目次
簡単にできる空き巣対策
空き巣対策を突き詰めると、警備会社との契約や誰かが必ず留守番をするといったセキュリティの強化に行きつきます。もちろんそれらの対策は空き巣に対して非常に効果的ですが、費用や都合の面で難しい場合があることも否めません。
ちょっとした習慣づけや工夫でも、十分効果の期待できる防犯対策は可能です。今すぐにでも実践できる、簡単な空き巣対策をご紹介いたします。
留守中でも誰かがいるように装う
言うまでもなく、空き巣は留守にしている家を狙って侵入してきます。そして空き巣にとって、その家に人が居るかどうかを判断する材料は、生活音や明かり、電気メーターの動きだと言われています。そのため外出中であっても照明やテレビを点けっぱなしにしておくと、空き巣は家に誰かが居ると勘違いするそうです。空き巣側としても家屋への侵入はリスクのある行為ですから、心理的なハードルを上げることで狙うことを諦めやすくなるようです。
また、遅い時間にまで洗濯物が干してあると、家人が不在にしている時間帯を悟られる要因になるため、注意が必要です。特に一人暮らしの女性の場合、洗濯物の内容でそれを知られてしまうと非常に危険です。
出かける前はカギの確認を怠らない
これも言うまでもないかもしれませんが、外出の際にはカギが閉まっているかきちんと確認しましょう。空き巣の中には留守中の家を何軒も巡って、カギの開いている不用心な家を総当たりで探す者もいるそうです。カギや窓を破って侵入するのは技術や道具が必要で時間がかかり、物音などで人目にもつきますから、空き巣も敬遠する傾向にあります。
忘れがちなのが窓のカギですが、リビングの大窓だけでなく小窓も侵入経路になり得ます。マンションの高い階層にお住まいの場合は特に油断してしまいそうですが、ベランダによじ登ってお部屋に侵入された事例も存在します。日ごろから施錠の確認をする習慣をつけておきましょう。
日頃の習慣を見直す
合鍵を郵便ポストや植木鉢の下などに隠していたりしませんか?わかりにくい所に隠していても、第三者が手にとれる場所にカギを置いておくことは論外です。
実際に空き巣に侵入されたときのことを考えて、通帳と印鑑を別々の場所に保管しておくことも重要です。空き巣の多くは家の中の物色を短時間で済ませたがるため、捜索に時間がかかる場合は諦めて退散することもあります。逆に、テーブルの上など分かりやすい場所に少額の現金を置いておくと、それだけを盗んで満足して帰っていく場合もあるようです。
また、郵便物をポストの中にため込んでいると、長期不在を疑われて空き巣に遭うリスクが増すという傾向もあるようです。
チェック!
- ・合鍵を室外に置いておくと侵入の手助けになる可能性ある
- ・通帳と印鑑は別の場所に入れておくことで、空き巣があきらめて帰るようにする
- ・すぐ目につく場所に現金を置いておかない
- ・郵便物はこまめに回収することで、空き巣のリスクを減らす
防犯グッズで空き巣を防ぐ
ホームセンターなどでそろえられるグッズを使って空き巣を防ぎましょう。
「ガラス破り」を防ぐ方法
玄関がしっかり施錠されている場合、空き巣が次に狙う可能性が高いのが窓です。「ガラス破り」と呼ばれる、文字通り窓ガラスを物理的に破壊して、室内に腕だけを入れて窓鍵を開ける手口が存在します。一説によれば空き巣被害のうち、無施錠とこのガラス破りによる侵入が全体の8割を占めると言われています。
ガラス破りへの対策として主に用いられるのは、以下のようなものがあります。
● 防犯フィルム
防犯フィルムをガラスに貼っておくことで、ガラスが割れにくくなり破壊に要する時間を延ばすことができます。
● 防犯ガラス
防犯フィルムをガラスに貼っておくことで、ガラスが割れにくくなり破壊に要する時間を延ばすことができます。
● 防犯ブザー
窓ガラスの不自然な振動や開閉を検知して音を鳴らし、空き巣を退散させる効果があります。
● 補助錠
窓鍵だけを破錠しても窓を開けられないため効果的です。
玉砂利・防犯ステッカーで空き巣泥棒を警戒させる
物理的なセキュリティの強化だけでなく、空き巣の心理的に侵入しづらくするグッズも市販されています。
例えば、踏むと大きな足音の出る玉砂利を庭に敷き詰めておけば、音を出すことを嫌う空き巣は侵入しにくくなります。防犯カメラや警報装置の存在を知らせるステッカーなどは、たとえ実際にカメラや装置がなくとも空き巣に対する牽制になります。
空き巣は準備と計画を立ててことに及ぶことが多いため、虚仮脅しの威嚇であっても警戒を抱かざるを得ないのです。
センサーライトと防犯カメラで24時間対策
さらにワンステップ上の防犯対策として、人感センサーを搭載したライトや防犯カメラによる監視があります。これらの装置は電源確保や設置工事などの手間こそかかりますが、24時間体制で対策ができるため高い効果が見込めます。
また空き巣以外の犯罪に対しても有効な牽制としてはたらくため、費用対効果の面でも優秀と言われています。ここではセンサーやカメラの具体的な効果、有効な設置箇所などについて簡単にご説明いたします。
センサーライトの特徴と効果
センサーライトは、文字通りセンサーによって人の接近を感知し、自動で点灯する機能を搭載した照明器具です。範囲内に何か物体が入ると反応するものや、人間の体温を検知するものなど、さまざまな感知方式があります。照明が点灯することでお家に誰かが訪れたことが周囲の民家に住む人にもわかりますから、秘密裡に侵入してしまいたい空き巣にとっては大きな心理的圧迫になることでしょう。
防犯用としてだけでなく、夜間に帰宅した際に暗い玄関先で鍵を探すのにも便利です。取り付ける場合は感知する範囲、照らす範囲、照らす方向を事前に確認して決めておきましょう。
ポイント!
感知範囲が広すぎると、家の前の道路を人が往来するだけで忙しく点灯することになってしまいます。
玄関だけでなく、一戸建て住宅の場合は大窓のそばや勝手口、お風呂場の窓など不審者が目を付けやすそうな場所に設置するのも効果的です。
防犯カメラの効果
防犯カメラの設置には、センサーライトと同じく空き巣に対して心理面で威嚇する効果が見込めます。特に、一般的にライトに比べてカメラは高価なものであるという認識があるため、「防犯カメラを導入するほどに防犯意識の高い家」という図式が成り立ちます。
空き巣にとってそのような家を狙うことはただただリスクが増すばかりなので、より忌避する傾向にあるようです。またライトとは異なり防犯カメラには映像を記録として残すものもあるため、たとえ空き巣が周囲に気取られずに侵入できたとしても、のちのち記録映像が犯罪の証拠となる可能性があります。
これらの非常に高いリスクを掻い潜ってまで盗みに入る空き巣はそう多くないと言えるのではないでしょうか。
防犯カメラの種類
防犯カメラには用途に応じていくつかの種類がありますが、その中でも普及している2つのタイプについてご紹介いたします。
▶ ボックス型カメラ
箱型の筐体にレンズのついた形状のカメラです。家庭のほか、街角の監視カメラとしてもよく見るタイプです。
【特徴】
- ・見た目で目立つため、空き巣に対する威嚇の効果が高いこと
【弱点】
- ・レンズ部分でどの方向を見ているか判別できるため、死角に入られやすい
▶ ドーム型カメラ
カメラ部分を半球状のカバーで覆った比較的小型なカメラです。オフィスやお店の天井によく見られるタイプになります。
【特徴】
- ・天井埋め込み式のライトに見えるため、カメラであることを悟られづらい
- ・レンズ部分が隠れているので死角を判断しづらい
- ・ボックス型に比べて広範囲を俯瞰で撮れるものが多い
【弱点】
- ・カメラに見えないという性質上、威嚇効果の面ではボックス型に劣る
また防犯カメラの中には高度な監視機能を備えた商品も売られています。
▶ 暗視カメラ
明かりのない夜間でも監視できる機能を備えたカメラです。
【特徴】
- ・目に見えない赤外線をとらえて暗視ができる
- ・カメラの感度を上げることでわずかな光でも撮れる
【弱点】
- ・映像が白黒のことが多い
▶ センサー付きカメラ
常時録画していると映像データが膨大になってしまいます。そのため、センサーと連動して反応があったときに録画を開始するのがこのカメラです。
【特徴】
- ・センサーに反応が無いときは録画をしないため無駄な録画をしない
- ・必要なデータのみ残すことができる
【弱点】
- ・センサーが反応しないと録画しない
▶ ネットワークカメラ
ネットワークに繋がっているカメラです。複数のカメラの映像を集積、スマートホンなどでの確認できます。
【特徴】
- ・ネットワークで見ることができる
- ・家にいなくてもスマートホンで映像を見ることができる
- ・複数のカメラデータを集めることができる
【弱点】
- ・データが集まるので容量が大きくなる
防犯意識が高まる傾向にある現在、防犯カメラにも多彩なバリエーションが存在しています。目的と環境に合わせて最適なものをお選びください。
効果的な防犯カメラの設置場所と注意点
防犯カメラはただ設置しておくだけでも空き巣に対して威圧感を放つ心強い味方です。しかし、空き巣の中には防犯カメラの性質を熟知して巧みに死角に入る者や、カメラを取り付けて安心している家庭の虚をつく者もいます。空き巣にとって最もリスクが高くなり、侵入を思いとどまらせやすい設置の仕方を意識しましょう。
防犯カメラを設置するのに効果的な場所
設置するカメラがボックス型であるなら、まずは家の敷地の外からでも一目でカメラがあるとわかる、目立つ場所に設置するのがおすすめです。ドーム型のカメラであれば、視野角の広さを活かして高い場所や軒下など障害物の少ない場所に取り付けるのが良いとされています。いずれの場合もできるかぎり死角をつくらないように設置することが重要なポイントになります。
また、玄関にカメラを設置する場合はドア方向へカメラを向けるようにすると、空き巣を背後から撮影できるため威圧効果が高まります。うまく角度をとってカギ穴が映り込むようにして、空き巣がピッキングなどで鍵をこじ開けようとする一部始終を録画することも有効です。これも威圧効果があるだけでなく、実際の犯行手口を撮影することでのちのち物的証拠として活きてくる場合があります。すなわち、その空き巣が「単なる来訪者」ではなく「不法侵入を企む犯人」であると告発する内容になるわけです。
そのほか、窓の近くに取り付けておくと同様にガラス破りによる侵入を抑止する効果が見込めます。
防犯カメラ設置の注意点
設置に際して、空き巣に対する効果のほかにいくつか注意点があります。
▶ ご近所に対する威圧感
プライバシーの問題は個々人の感性によるところが大きいですが、カメラに見られることを嫌がる人も珍しくありません。防犯カメラの設置がご近所トラブルに発展してしまったといったケースは多数報告されています。なるべく善意の訪問者に威圧感を与えないよう、日ごろからコミュニケーションをとって周知を徹底するなどの対応が必要かもしれません。
▶ 防犯カメラは精密機器屋外に設置することが多いため故障や不具合が起きる可能性がある
設置工事を業者に頼む場合は、修理対応などのアフターサービスが充実しているか確認しておくと良いかと思われます。
まとめ
空き巣対策はごく簡単なものから機器を設置するものまでさまざまな方法がありますが、その根底に通じるのは「空き巣を未然に防ぐ」ことです。
実際に侵入されてしまった場合の対処はもちろん重要ですが、まず入られないこと、空き巣に狙われないことが第一です。空き巣も人間ですから、無用なリスクを冒したくないという心理を間違いなく持っています。
また空き巣という犯罪自体が、突発的なものより計画的犯行である場合が多いことも、心理的な威圧に効果がある理由の一つです。空き巣の心理の裏を読みながら、狙われにくい環境づくりをしていきましょう。