剪定は正しい方法でおこなうことが大切です。誤った方法で剪定すると、木を傷つけたり成長に悪影響を与えたりしてしまうおそれがあるからです。
本コラムでは、剪定に適した時期や上手に仕上げるコツを解説していきます。剪定に必要な道具から順を追ってポイントをおさえてご説明していくので、このコラムを読んで剪定について基本的な正しい知識を身につけていきましょう。
正しい剪定でお庭の木をキレイにあげてくださいね。
目次
使用する剪定道具
まずは、剪定に必要な道具をご紹介します。剪定したい木の大きさや仕上がりの形などによって必要なものが変わるので、しっかりと確認していきましょう。
ハサミ
剪定に使うハサミには以下のように色々な種類があります。枝の太さや場所などによって使い分けるとスムーズに剪定することができますよ。なお、ハサミ類はオイルや砥石でときどき手入れをして切れ味を保ってやるようにしましょう。
・剪定バサミ
太い枝や幹を切るために使います。上刃が動いて下刃が受け皿の役割を果たすアンビルタイプは、弱い力でもきれいに枝を切断しやすいです。両側の刃が動くバイパスタイプでは、枝を傷つけにくく、生きた枝を切るのに向いています。
・植木バサミ
剪定バサミでは切りにくいような、細かい枝や草花を切るときに使います。
・刈り込みバサミ
生垣などを刈り込んだり、枝を人工的な形に整えたりするときに使います。
・高枝バサミ
持ち手も刃も長いので、ほかのハサミでは手の届かない高所の枝を切ることができます。全体の形を整える際に必要です。
ノコギリ
ハサミでは切れない太い枝や幹などを切るときに使います。引くようにして枝を切りましょう。
脚立
高い場所の剪定をするときに脚立があると便利です。高枝バサミを使っても届かないような背の高い木を剪定したいときは用意しておきましょう。
詳しくは最低限必要な剪定道具をまとめた記事をご覧ください。
剪定方法の種類
続いて、剪定方法の種類についてご紹介していきます。剪定方法による仕上がりの違いや木に与える影響に注目しながら確認してみてください。
整姿剪定
伸びすぎた枝などを切って木の形をキレイに整える、軽めの剪定です。
切り詰め剪定
枝を短く切り詰める剪定です。木の大きさを変えたり、花付きをよくしたりするためにおこないます。
枝おろし剪定
必要ない大きな枝を切り落とします。枝をバッサリ切り落とすことになるので、もちろん剪定するのも大変ですし、木にもかなりの負担がかかります。
切った後は切り口が腐敗しないように癒合剤を塗ります。
枝おろし剪定はできるだけ木へのダメージが少ない時期におこないましょう。剪定に適した時期については、後ほど詳しく解説します。
透かし剪定
混みあった枝を間引いて、枝ぶりをスッキリとさせます。適度に透かすことで風通しがよくなり、木の成長も促進されるでしょう。
関連記事:透かし剪定の解説
刈り込み剪定
刈り込みバサミを使用して、木や生垣の形を作るためにおこないます。自然な形に整えるというよりは、人工的に形を作る剪定といえるでしょう。
関連記事:刈り込み剪定の解説
切り戻し剪定
葉が茂った木の上部を小さくするためにおこないます。伸びすぎた枝を1/2~1/3ほどに剪定し、コンパクトにします。
関連記事:切り戻し剪定の解説
剪定する枝(忌み枝)とは?
ここからは、剪定時に切ってしまうべき忌み枝についてご紹介します。忌み枝とは、樹形を損なうような枝のことです。見た目の美しさを損なうだけでなく、木の成長を妨げる要因にもなってしまいます。
剪定するときにこれからご紹介するような枝を見つけたときは、根元から切ることを意識してください。
立枝
垂直に立ち上がって伸びた枝。樹形を乱してしまいます。
下がり枝
枝から下に向かって生えている枝。樹形を乱してしまいます。
逆さ枝
ほかの枝とは異なった方向に伸びた枝。樹形を乱してしまいます。
かんぬき枝
幹を貫いて左右対称に生えているように見える2本の枝。見た目のバランスを損なってしまいます。
平行枝
複数の枝が平行に伸びている枝。下のほうの枝の日当たりが悪くなってしまいます。
懐枝
木の内側に向かって生えた枝。放っておくと枝が混みあって病気や害虫の原因になってしまいます。
からみ枝
枝同士が絡みあっている状態の枝。見た目が悪いのはもちろん、枝同士がぶつかって傷つくおそれがあります。
交差枝
枝や幹と交差している枝。見た目が不自然になりますし、枝同士がこすれて傷つく原因にもなります。
胴吹き枝
幹から細かく出ている枝。放っておくと栄養分が取られてしまいます。ただし、枝がほしい場所に生えているなら成長した1本を残しておくのもよいでしょう。
ヤゴ
木の根元から生えている枝。本体の栄養分を取ってしまいます。
徒長枝(とちょうし)
極端に長く伸びた枝。見た目を損なううえ、徒長枝にさらに小枝が発生すると光をさえぎって木の内部に十分に日光が当たらず、枯れる原因にもなってしまいます。
以上の枝が代表的な忌み枝です。これらの枝は、樹形や木の健康のためにも切ってしまいましょう。このほかにも、枯れたり折れたりした枝も切ってしまって構いません。とはいえ、切りすぎには注意して全体のバランスを見ながら剪定を進めてください。
詳しくは忌み枝の解説記事をご覧ください。
初心者でも上手に剪定するコツ
切るべき枝がわかっていても、剪定するのが初めての方だと枝を切る作業が大変かもしれません。また、剪定前にどのように仕上げたいかイメージしておくことが大切ですが、初めてだと完成形をイメージすることさえ難しいかもしれませんね。
ここでは、初心者の方に向けて上手に剪定するコツをお伝えしていきます。
高さを決める
まずは、目的とする木の高さを決めましょう。伸び出た枝を切って、目的とする高さに整えます。つまり、剪定は木の上のほうから取りかかるということです。
形を決める
高さを整えたら、次は形です。縦長、卵型、傘のような形など、樹形にはさまざまなものがあります。初心者の方だと、いきなり大きく樹形を変えるような剪定は難しいかもしれません。現在の木の形を生かして、あまり枝を切らなくてもよさそうなものにするのがおすすめです。
間引き剪定
だいたいの木の高さと形を決め、木の輪郭を作ったら、不要な枝を間引くように剪定していきます。あくまで不要な枝を切るということを意識しておけば、切りすぎを防ぐことができるはずです。現状維持を目標にするくらいでちょうどよいかもしれません。
枝の太さや生えている場所によって道具を使い分け、木全体を見ながらバランスを整えていきましょう。
剪定後のお手入れ
無事に剪定が終わったら、片付けや剪定後の木のお手入れもしっかりとおこないましょう。この最後のひと手間で、木の成長を促進することができるのです。
キレイに保つためのケア
・花がら摘みや古葉かき
しおれた花や枯れた葉を取り除く作業です。これにより木の日当たりと風通しを確保することができ、害虫の予防・発見と木の成長につながります。
・摘蕾(てきらい)
不要な蕾を取り除くことで、大きな花や果実を育てることができるお手入れ方法です。
・芽かき
不要なわき芽を取り除くことで、栄養の循環を助けるお手入れ方法です。
切り口のケア
剪定直後の切り口は、木がケガをしているのと同じような状態です。雑菌が入りやすい状態になっているので、きちんとケアしてあげることが大切です。剪定後の切り口には、癒合剤と呼ばれるコーティング剤のようなものを使用して保護しましょう。癒合剤には乾燥を防ぐ効果もあります。
詳しくは癒合剤の解説記事をご覧ください。
剪定に適した時期
剪定するときは木に負担がかからないよう時期を見きわめておこなうことも大切です。剪定に適した時期は剪定方法や木の種類によって違うので、剪定前にかならず確認しましょう。
夏剪定と冬剪定
剪定は夏と冬の2回おこなうことが多いです。木の種類によってはこの限りではありませんが、基本的には夏に軽めの、冬に大がかりな剪定をするのが一般的です。
・夏剪定(軽剪定)
夏には、日当たりや風通しの改善を目的とした軽めの剪定をおこないます。夏の剪定は木の成長や害虫の発見・予防につながります。
・冬剪定(基本剪定)
木が休眠する冬には、夏よりも大がかりな剪定をおこないます。不要な枝の剪定や葉を取り除いて、樹形を整えます。
種類別の時期剪定
基本的には夏ごろに軽め、冬ごろに大がかりな剪定をするのですが、木の種類によって適した時期は違います。特に、樹形を大きく変えるような剪定は木への負担も大きいため、できるだけ木へのダメージが少ない時期を見計らってやる必要があります。ここからは、木の種類別の剪定時期についてお伝えします。
常緑針葉樹
スギやマツなどの常緑針葉樹は、3月~4月がおすすめの剪定時期です。冬の剪定も可能ですが、木が弱りやすい時期なのでできるだけ避けてください。夏や秋に形を整える程度の軽い剪定をしてもよいでしょう。
落葉針葉樹
イチョウなどの落葉針葉樹は、暑さに弱いので涼しい時期に剪定しましょう。木が葉を落とし、休眠している12月~3月がおすすめの剪定時期です。葉が落ちていると枝の様子がわかりやすいため、剪定しやすいでしょう。
常緑広葉樹
キンモクセイやサザンカなどの常緑広葉樹は寒さに弱いので、剪定は暖かい時期におこないましょう。おすすめの剪定時期は、3月~6月にかけてです。春ごろから虫が発生しやすくなるので、虫が苦手な方は早めに済ませてしまったほうがよいかもしれません。
落葉広葉樹
ハナミズキなどの落葉広葉樹は、木が葉を落とし休眠している12月~2月に剪定をおこないましょう。春や秋の軽い剪定はよいのですが、夏場は木がダメージを受けやすいので剪定はしないほうが無難です。
果樹
果樹は、成長のペースが違うので種類ごとに適した剪定時期が異なります。冬の時期に剪定するのが一般的で、たとえばキウイやイチジクなどは1月ごろが適しているようです。
詳しくは剪定時期の解説記事をご覧ください。
自分で剪定「よくある失敗」
道具をそろえ、時期にも気をつけ、完成後のイメージを持ってきちんと剪定をしたつもりでも、プロではない人が剪定をする以上失敗はつきものです。よくある失敗例をご紹介するので、これから自分で剪定される方は参考にしてみてくださいね。
失敗1:ケガにまつわるもの
- ハサミでケガをした
- 脚立から落ちてケガをした
このように、慣れない剪定作業で思わぬケガをしてしまわないように注意してください。場合によっては大ケガにつながってしまいます。道具の使い方や周囲の状況に十分気をつけながら剪定しましょう。
失敗2:剪定後の仕上がりにまつわるもの
- 花が咲かない
- 枯れる
- 見た目がスカスカ
これらは、花芽がついた枝などの必要な枝まで切ってしまうことで起こります。切りすぎてしまわないよう、全体のバランスを確認しながら不要な枝を間引くイメージで切っていきましょう。
とはいえ、枝を残しすぎても樹形が乱れてしまいます。俗にいう木が暴れるという状態です。枝を切りすぎても残しすぎてもいけないので、ちょうどよいバランスに仕上げるのは難しいですね。
剪定をプロへ依頼するメリット
「よくある失敗」でご紹介したように、慣れない方にとって、剪定はかなり難しい作業です。ご自分での剪定に自信がない方や、剪定する時間がない方は、プロにお任せしてしまうことをおすすめします。
経験豊富なプロなら、庭木の種類に合った剪定方法や剪定時期を熟知していることでしょう。道具の扱いにも慣れており、スピーディーに作業をしてくれるはずです。
庭木のお手入れ法や次の剪定についてなど、今後の相談にも乗ってもらうことができます。もちろん、ご自身がケガをしてしまう心配もありません。信頼できる業者に剪定を依頼できたら安心ですね。
剪定業者の選び方とかかる費用
剪定をプロに任せるメリットがわかっても、数ある業者からどうやって選べばよいのか悩んでしまいますよね。プロによる剪定にはどれくらいの費用がかかるのかも気になるところです。ここからは、剪定業者の選び方とおおよその費用についてご紹介していきます。
選び方のポイント
まずはインターネットでお近くの剪定業者を調べて、公式サイトを確認してみましょう。気になる業者があったら無料相談や見積りを利用してみて、そのときの対応を見て安心して任せることができそうな業者かどうか判断しましょう。
公式サイトを見るときや相談・見積りのときに注目したいポイントは以下のとおりです。
- 公式サイトの作りがしっかりとしていてわかりやすい
- 剪定費用が明確
- 知識や経験がある(実績がある)
- 対応がスピーディー
- 受け答えが丁寧
- 相談に乗ってくれる
そのほか、実際にその業者に剪定してもらった人の口コミ評価を参考にしてみるのもよいでしょう。知識や経験が豊富で、気軽に質問しやすく、親切・丁寧な対応をしてくれる業者なら安心して依頼できますね。
費用はどれくらいかかる?
ここからは、プロに剪定を依頼したときにかかるだいたいの費用についてお伝えします。それではさっそく、庭木、生垣、植込みに分けて費用相場を確認していきましょう。
・庭木の剪定費用相場(高さによって変動)
0m~3m:3,000円~4,000円
3m~5m:6,000円~8,000円
5m~7m:15,000円~20,000円
※これ以上の大きさは別途見積りを出してもらったほうがよい
・生垣の剪定費用相場(幅によって変動)
1m未満:500円
~3m:2,000円
※これ以上の大きさは別途見積りを出してもらったほうがよい
・植込みの剪定費用相場(面積によって変動)
1平方メートルあたり:500円~1,000円
以上のように、木の大きさや面積に応じてかかる費用が変動するのが一般的です。このほかにも、木の種類や剪定方法(軽く整えるくらいなのか、大きく形を変えたいのか)、特殊な機器が必要かどうかによっても費用は変動することがあります。
また、ゴミ処理代が剪定費用に含まれている業者もあれば、別でかかる業者もあります。ゴミ処理代の相場は軽トラック1台分で5,000円~8,000円ほどです。
費用について少しでも不安なことがあったら、作業に入る前にきちんと確認しておきましょう。
詳しくは庭木の剪定費用相場の解説記事をご覧ください。
まとめ
自分で剪定するときには、仕上がりの高さと形を決め、全体のバランスを見ながら不要な枝を間引くように切っていくのがコツです。ケガには十分注意して進めてくださいね。
剪定はご自身でおこなうことも可能です。しかし、庭木の種類によって剪定に適した時期や方法が違いますし、どのくらい切ればよいのか判断が難しいでしょう。
自分で剪定することが不安だ、大変そうだと思われた方は、プロの手を借りることをおすすめします。経験豊富な剪定のプロなら、適切な方法でキレイに仕上げてくれることでしょう。