「オオスズメバチの女王や巣の大きさは?」
「刺されたらどうなっちゃうの?」
オオスズメバチは女王蜂の大きさが6cmにも達するスズメバチ最大種で、アジアを中心にアメリカ大陸でも生息が確認されています。天敵が少なく各地で増加傾向にある殺人蜂ですが、具体的な特徴や正しい対処をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
- 他のスズメバチとの違い
- 最強と言われる理由(毒性や天敵について)
- オオスズメバチの巣の特徴
- 安全策と駆除について
日常やアウトドアで刺されないために役立つオオスズメバチの生態と注意点を、画像たっぷりでわかりやすく解説します!
目次
オオスズメバチの生態
和名 | オオスズメバチ(大雀蜂) |
学名 | Vespa mandarinia japonica Radoszkowski |
英名 | Asian giant hornet / Japanese giant hornet |
分類 | ハチ目(膜翅目)ハチ亜目(細腰亜目)スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属 |
原産 | 中国 |
分布 | 東アジア、東南アジア(2019年にはアメリカでも確認された) 日本国内では北海道、本州、四国、九州、対馬、種子島、屋久島 |
オオスズメバチの女王蜂の大きさ
世界最大の蜂として注目されているオオスズメバチ。原産国の中国では6cmをゆうに超え、7cmに迫る個体も発見されています。
女王蜂:40~45mm
働き蜂:27~38mm
オス蜂:27~40mm
日本のオオスズメバチの女王蜂は4~5cmほどですが、がっしりした体格と大きな羽根で飛ぶ姿は10cm近くに見える迫力があり、他種との明らかな体格差が見られます。
オオスズメバチと他のスズメバチの違い
オオスズメバチは他のスズメバチより筋肉量が多く、頭部の大きさや厚み、大アゴの発達が目立ちます。また、下図のような色や模様なども見分けるポイントになります。
・頭楯(とうじゅん)下の突起は2つ
間違われやすいコガタスズメバチは3つ
・橙色に近い黄色と褐色と黒
キイロスズメバチは色が若干明るめ
・腹端は黄色
大きさが近いヒメスズメバチは黒
オオスズメバチに近い大きさのヒメスズメバチや、色柄が似ているコガタスズメバチはとくに間違いやすい種類です。見分けがつかないときは、巣など他の要素もあわせて判断するとよいでしょう。
オオスズメバチが「最強」な理由
食物連鎖の上位者で「最強の昆虫」の一種とされるオオスズメバチは、人間にとっても大きな脅威です。
- 複数回刺せる毒針と、高い毒性
- 一瞬で追いつく追跡スピード
- 総勢500匹で人や他種の蜂を襲う攻撃力
オオスズメバチの強さについて詳しく見ていきましょう。
種で最強!オオスズメバチの毒性
人を刺す日本のスズメバチは9種類で、中でもオオスズメバチの毒性は最強です。毒針は何度でも刺せる構造で、「太い釘が刺さったような激痛」「電気を流されたような鋭い痛み」に襲われ、激しいアレルギーショックで死に至る事例も後を絶ちません。
原付バイク以上!オオスズメバチの速度
オオスズメバチの追跡スピードは原付バイクを超える時速40kmです。もし襲撃されたらオリンピックの短距離走者レベルの速さでなければ追いつかれる計算です。
しかもオオスズメバチは動くものを追撃する性質があり、追跡距離も約30mと蜂の中で最も執拗です。
オオスズメバチの餌は他種の蜂!
オオスズメバチはコロニーを繁栄させるために餌場を独占し、ミツバチや他種のスズメバチの巣に集団で襲いかかります。ピーク時には最大500匹もの大群となり、餌場や巣を守るためなら熊や人間にも積極的に攻撃します。
幼虫の餌 | 成虫の餌 |
他種の蜂、コガネムシ、バッタ、蝶、クモなどを成虫が肉団子状にしたもの | 樹液、花の蜜、熟した果実、幼虫が分泌する唾液など |
オオスズメバチの成虫はさまざまな昆虫類を襲い、かみ砕いて肉団子状にしてから幼虫に与えます。そして幼虫たちが分泌する唾液から活力を得て、また獲物を狩りに出ます。
オオスズメバチの天敵
オオスズメバチを一方的に捕食するのは熊や野鳥です。とくに、オオスズメバチを巣ごと食べ尽くす熊は最大の天敵と認識しており、蜂が黒いものを攻撃するのは熊の急所を突くためとも言われています。
オオスズメバチの天敵
動物 | 虫 | 寄生系 |
熊 モズ ハチクマ 野生の鶏 |
オニヤンマ オオカマキリ ムシヒキアブ クモ |
センチュウ ネジレバネ 菌類 |
オニヤンマは空中でオオスズメバチを背後から襲って捕食しますが、逆に捕食されることもあります。カマキリやクモも同様ですが、カマキリは大きな鎌で有利に戦うことができます。
大型昆虫を比較するなかで「最強の昆虫はどれ?」という疑問を持つ人は多いようです。
捕食し合う天敵同士のオニヤンマなどに対し、樹液を奪い合う存在のカブトムシにはオオスズメバチが一方的に追い払われる様子が見られます。自分より大きな昆虫も捕食できるオオスズメバチですが、カブトムシには歯が立たないようです。
ここまでで、オオスズメバチの姿や攻撃性、天敵などについてご紹介しました。
日本で最も多く人間を殺傷している生物は、熊でもヘビでもサメでもなくスズメバチです。この観点から言えば、私たちにとっての最恐はスズメバチと言えそうですね。
オオスズメバチの巣の特徴と営巣場所
オオスズメバチの巣盤は最大80cmを超えるほど巨大ですが、作られるのは土中などの見つけにくい場所です。気づかずに近づいて一斉攻撃を受けるケースが多いのはこのためでしょう。
オオスズメバチの巣は大きな釣鐘型
この写真はオオスズメバチの巣を下側から見た状態です。
オオスズメバチの巣は球状でなく釣鐘のような形をしており、表面は他種の巣と同じように波模様があります。スズメバチの中でも大規模な巣を作る傾向で、育房数が8000以上のものも確認されています。
オオスズメバチの巣 | |
形状 | 釣鐘型、下部開放型 |
外皮 | 波模様 |
育房数 | 3000~5000 |
蜂の数 | ピーク時は100~500匹 |
巣を作る場所は閉鎖的な空間
蜂の巣と言えば樹木や軒下にあるイメージですが、オオスズメバチの巣は目視しづらい閉鎖的な場所に作られます。
- 山林や畑などの土中
- 木の根元や樹洞の中
- 朽ち木の下
- 生垣の奥や剪定ゴミの中
まれに屋根裏や床下、壁の中などに営巣し、発見されずに巨大化することも……。一見巣がなくても、蜂がよく出入りしているなら注意が必要です。
自力での巣の駆除はおすすめできない
オオスズメバチの巣の捜索や駆除は大きな危険が伴うため、自治体や業者への相談が推奨されます。ただし、女王蜂しかいない初期の巣であれば、市販の捕獲器や燻煙剤による対処も可能です。
スズメバチの早めの対策方法についてはこちらの記事をご覧ください。
スプレー剤や木酢液などはあくまで応急対処用ですので、オオスズメバチが頻出し続ける場合は根本解決が必要になります。地中や壁の中など、自力では対処困難な場所に巣があることが多いため、一度プロに見てもらうことをおすすめします。
駆除費用を抑えるには、巣が大きくなる前に対処するのがポイントです。スズメバチが気になったら、早めに業者の現地調査などを活用してください。
スズメバチによる死亡者が増える時期は7~9月
スズメバチの刺傷被害件数は7月から急増し、8~9月で最大数になります。
オオスズメバチの女王蜂は3~4月に冬眠から目覚め、1匹だけで活動を開始します。4~5月頃に小さな巣を作って産卵し、6月頃までに最初の働き蜂が羽化。夏にかけて仲間の数と攻撃性が上がっていきます。
ピークは夏ですが、餌が減る秋はオオスズメバチの気性の荒さが増すため、10月以降も警戒が必要です。オオスズメバチが営巣活動中の5~11月の間は、刺激したり巣に近づいたりしないでください。
蜂よけ対策!刺されないための注意点
「服装」や「行動」に注意するだけで、オオスズメバチに刺されるリスクを大幅に減らせます。どれも簡単に実行できますので、ぜひ取り入れてみてください。
スズメバチを寄せ付けない服装
スズメバチは天敵の熊の毛色に近い黒っぽいもの、動くものを攻撃する習性があります。
そのため、黒い服やひらひらした服は避けてください。
- 黒色を避けて白っぽい服装に
- 袖口や裾がピッタリした長袖長ズボン
- 蜂が留まりにくいナイロン製
- 頭や目は帽子で、手は皮手袋などでガード
被害が最も多いのは手と腕ですので、革手袋や白い軍手などでしっかり対策しましょう。
やってはいけない危険行為
オオスズメバチに刺されないためには、とにかく刺激しないことが鉄則です。公園や庭園、キャンプ場、山林付近などは危険なエリアであることを常に意識して行動しましょう。
- 巣がありそうな場所に踏み込まない
- 蜂を手で払わない
- 走って逃げない
- 大声を出さない
- 水をかけない
また、整髪料、香水や柔軟剤、ジュースやお酒のような蜂を寄せ付ける香りにも要注意です。
大きな蜂が寄ってくるとパニックになりがちですが、頭を低く下げ、そっとその場を離れましょう。近くに巣があるようなら30~50m以上移動してください。
スズメバチの攻撃サイン
スズメバチに遭遇してしまったら、下記のような威嚇行動に注意し、危険度が低いうちに退避しましょう。
スズメバチの行動と危険度
段階 | スズメバチの行動 | 危険度 |
監視中 |
巣からこちらを注視。巣の周りを旋回。 | 要注意 刺激しないで |
警戒態勢 |
数匹が飛来し、カチカチと威嚇音を鳴らして取り囲む。 | 危険! ゆっくり退避 |
攻撃開始 |
針を見せ、頭や目などを刺しにくる。 | 逃げきれず 刺される恐れ |
一斉攻撃 |
警戒フェロモンにより、他の蜂も一斉攻撃を開始。 | 取り囲まれ 救出も困難に |
オオスズメバチに刺されたときの対処法
万一オオスズメバチに刺された場合、その場に留まると追撃のおそれがあるため静かに退避し、流水で洗いながら患部をつねるようにして毒を絞り出してください。
しびれや呼吸困難などを伴うアナフィラキシーショックが起きた場合、数分で命に関わる状態に陥ることがあります。蜂毒を軽視せずすぐ受診することが大切です。
正しい対処についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。
まとめ
最大・最強と恐れられているオオスズメバチの特徴と注意点をまとめます。
- 女王蜂は海外で6cm超え、国内でも5cm近い大きさを誇る
- 体格、毒性、獰猛性、パワー、スピードは種で最強レベル
- 天敵が少ないため各地で増加傾向にある
- 巣は巨大で閉鎖空間にあり、捜索・駆除には危険が伴う
- 大きな音や動き、黒っぽい服装、匂いのするものに注意
オオスズメバチに遭遇したら刺激せず、巣への対処は駆除業者の相談窓口や現地調査を活用しましょう。
ハチ110番はオオスズメバチに関するご相談を24時間体制で承っております。巣の駆除や費用についてのご質問はもちろん、ご要望があれば地域の優良業者の手配まで即日ご対応可能です。地方から都市部まで、全国のハチ110番加盟店が迅速サポートいたしますので、LINEやフリーダイヤルにていつでもご相談ください。
(最終閲覧日:2022年3月28日)
丸沢 丸『超危険!スズメバチLIFE』講談社 2019
小川原辰雄『人を襲うハチ 4482件の事例からの報告』山と渓谷社、2019