樹木の適切な剪定はその樹種や品種によって異なります。もちろん生育条件や周囲の状況によっても異なるため、最適な剪定をしていくというのは簡単なことではありません。時には、樹木の作り方を間違えてしまうと、樹木が枯れて伐採しなければならない原因になることも…。木々を形成する基本となる枝の中で「不要」となる枝の目安の紹介をメインに、枝の伸びるパターン別に解説していきます。
剪定の基本となる考え方
剪定の基礎となる考え方として「樹木の形成を維持する」ことが挙げられるでしょう。「盆栽」に代表される針葉常緑樹の剪定を例にすれば、樹木の伸びる方向や衰えた枝葉を落とすことで、内部状態の若返りを図り、サイズやバランスを整えるのです。針葉樹と広葉樹の両方に言える事ですが、年数を経た木々の枝の中には「他の枝葉の生育を阻害する枝」や「衰えた枝」などが存在します。これらの枝を剪定することで、樹木の状態を維持し、桜やゼラニウムなどの花木の場合は咲き方にも良い影響を与えるのです。
剪定する枝の基準として「形が沿わない枝」を選び出す必要があります。以下の4点の項目は樹形を丸く保つことを妨げるだけでなく、病気や虫害の原因にもなりかねません。
ふところ枝
幹の上部、樹冠付近にある小さな横枝を「ふところ枝」と呼びます。このふところ枝は光や風の通りを阻害しますので、枝ごと切り落とします。
立ち枝・下垂枝
字の通り、上下方向に伸びた上下枝になります。主軸枝などの太い枝から伸びることが多く、放置しておくと「徒長枝」のように生長しきってしまいますので、早めにつけ根から取り除きましょう。
逆行枝
斜め方向の角度に折り返して伸びた枝も不要枝候補になります。日光・風当たりを阻害してしまうことで、樹木の病気の原因にもなります。また、生長して枝先が交差することで「交差枝」にもなりますので、早めに枝の根元部分から切り落としましょう。
車枝・並行枝
日光量や風量にあまり影響はありませんが、樹形形成や枝ぶりを良くするために剪定する枝になります。車枝は一つの箇所から四方に伸びた枝を指し、並行枝は平行に伸びた枝を指します。
果実を付ける柿などの果樹の場合、夏に伸びる「夏枝」にも注意が必要です!
剪定の目的は不必要な枝葉を切り落とすだけではありません。樹木の将来像を決めるために、早いうちに樹勢を矯正するために行う剪定もあります。足場を組み、本格的な剪定を行う必要がありますが、将来的に美しく健康的な庭木にするために重要です。
切り返し剪定
枝を内側から切り戻しをすることで、残った枝葉の発芽や葉芽を促進します。松の剪定でよく行われる「芽摘み剪定」も切り返し剪定に入ります。
枝おろし剪定
大きな枝を根元から切り取りする方法になります。ぶつ切りになってしまうと切り口が腐敗してしまう恐れがありますので、剪定の際に少し枝側に切れこみを入れるようにしましょう。
切詰め剪定
若木などに多く行われる、長い枝を切り落とすことで樹冠の大きさを調節する「芯止め」を行う剪定方法になります。
枝抜き剪定
枝が多い部分の動きを調節する方法になります。外芽の上から切り取るテクニックです。開心自然形などの横に広がった樹形を作る場合は外芽かつ横目芽を残すようにしましょう。
採光量を調節する、「三つ葉透かし」という剪定方法もあります!
アフターケアは樹木のピンチを防ぎます
剪定箇所は樹木にとって「傷口」にあたり、人間が傷口に塗り薬などを塗る様に、剪定箇所の外側には保護剤や癒合剤を散布して養生する必要があります。特に寸胴切りなどで枝元や株元の「ブランチカラー」と呼ばれる場所を痛めてしまいますと、後遺症が残る恐れがあります。樹木のケアと剪定道具のケアについて下部で紹介しましょう。
樹木のケア
樹木の剪定後のケアは大きく「消毒」と「保護・癒合」の2つに分けられます。ケア用品には様々なバリエーションがありますが、前者の消毒用散布液の代用品として、墨汁やコールタールなどが当たります。後者の保護・癒合剤代用品としては、木工用ボンドやアルミホイルなどで保護することができます。
樹木道具のケア
次回使用時に傷口から雑菌が入り込まないようにヘッジトリマーなどの剪定道具のケアも怠れません。ヘッジトリマーの使い方によって、根切り後などには木汁が刃の表面に付着することがあります。使用後は木汁を拭き取り、仕上げに砥石を片側ないし両側にかけましょう。
最近話題のバラのげんこつ剪定の際には、剪定後に葉腋や茎を保護することが重要になります。特に冬場の殺虫・殺菌のためにマシン油乳剤や石灰硫黄合剤などを使ったアフターケアをする必要があります!
剪定を行うことには「養分を分散させない」というメリットがあります。つまり、庭木だけでなく野菜やハーブなどの菜園や観葉植物においても剪定は重要になるのです。種類別に詳しい剪定方法や手順は異なりますが、菜園では一定の基準以下の花芽や花首を落とすことで全体的な実りを調整する剪定が、観葉植物においては植樹スペースの中に樹勢を収めるための剪定が有効になるでしょう。
剪定の目的は多岐に渡りますが、「樹形の維持」と「樹勢の調整」という2 つの方向性に沿って行うことには変わりありません。この2 つの方向性を持って剪定を行うことで樹木は長く美しい状態を保つことができます。もちろん剪定の際には、樹木ごとに異なる適した剪定方法の見極めやアフターケアも重要になります。正確な剪定作業をする上では、樹木や枝の状態の見極めや剪定技術を有した剪定業者を利用することも一つの手になるでしょう。