アンテナについて調べるとたくさんの専門用語が出てきます。普通に生活していたらなかなか聞くことのない、耳慣れない言葉が多いので「よくわからない……」と感じる方は多いのではないでしょうか。
その中でも今回は“利得”という言葉に焦点を当ててご紹介します。この言葉を中心にアンテナにまつわる用語を知ることで、実際に自分がアンテナを選ぶときの基準にしていただけたらと思います。
利得って何?
利得(ゲインとも呼ばれます)とは、アンテナの特性の1つで、電波の放射方向と放射強度の関係を指向性といいます。その指向性を持つアンテナにおいて、基準のアンテナと供試のアンテナがあり、両方が作る電界強度が同等になるための電力の比を利得と言います。
また、電力を様々な方向に拡散させるアンテナと、指向性があり、電力を効率良く集中させるアンテナの到達距離の差が利得の差になります。
このように、アンテナはエネルギーを一定方向に集中させることができますが、固体の種類によって変わってきます。注意しなくてはならないのが、利得が大きすぎると指向性が鋭くなりすぎたり、逆に小さいと電波を遠くに飛ばせなかったり、各方向へ不要な電波が混信してしまったりすることで、用途に合った適切な利得が求められています。
絶対利得と相対利得
アンテナの利得には基準の意味、とらえ方の違いによって、2種類の利得があります。基準となるアンテナに2種類存在します。
・アイソトロピック(等方的)アンテナ
存在はしない仮想のアンテナですが、計算上、電界強度がどの方向にも一様な強度で電波を放射するということが出せるため、実在していなくても構わなく、理論的なのが特徴のアンテナです。しかし、仮想ではあるので、UHFアンテナの利得は測定できません。
・λ/2ダイポールアンテナ
使用する周波数の波長の半分の長さ(λ/2)のアンテナが一番効率の良いものとされていて、受信機、送信機共に、最大電力をキャッチしやすい長さなのでλ/2を使用しています。
アンテナの片側を大地に肩代わりしてもらうタイプのものもあります。これは、八の字に放射するため、等方的ではなく、左右非対称で、アイソトロピックアンテナよりも高い利得を持っています。
また、ダイポールアンテナの電界強度は、構造に複雑さはなくシンプルであるので、目安が立ちやすく、シミュレーターで正確に計測がしやすいアンテナです。
そして、アイソトロピックアンテナを基準にした利得を絶対利得、λ/2ダイポールアンテナを基準にした利得を相対利得と言います。
カタログでよく見るdBとは
dBとはデシベルと読み、電力の比を対数で表す単位ベルの10分の1の単位です。
アンテナ利得では、同じ電界中で、被試験アンテナと基準アンテナの両方を受信した時の電力の比をdBを使って表しています。
絶対利得はアイソトロピックの頭文字のiを取って、dBiと表し、相対利得はダイポールの頭文字dを取って、dBdと表すそうです。
また、dBdは、dBと表記することもあるようです。
ダイポールアンテナは、直角方向が最大放射になるという特徴を持っており、アイソトロピックアンテナよりも強い電波を放射できるわけですが、その差の比率をカタログで見るとき、それが、相対利得比dBdでの利得の表記なのか、絶対利得比dBiでの表記なのかに注意しなくてはいけません。
特に、dBとだけしか表記されていないものには、何のアンテナを元にしているのか考える必要があります。ここを見落としたり、見誤ったりしてしまうと、dBiの方がdBdよりも2以上数字が大きくなるので、結果を勘違いしがちです。
例えば、dBiという単位で表記されている場合、絶対利得であり、文献によって異なりますが、2.14を引くと相対利得になります。これを忘れてしまうと、数値が大きいほど受信感度が何倍も大きくなり結果が変わってくるので気を付けましょう。
ビーム幅と利得
ビーム幅は、電磁波の場所によって異なるので、一般的に電磁波の位置からの角度で表されています。ビームの中身は電波のエネルギーです。
先ほどの、ダイポールアンテナを並べ、放射部を長くすると、垂直面のビームが鋭くなり、ダイポールアンテナの横幅を拡げると、水平面のビームが鋭くなります。ビームが鋭くなることで、放射エネルギーが集中し、電波が遠くまで届きます。これをアンテナの利得が高いと言います。
また、アンテナから放射される電磁波の放射強度が最大の点から低くなる点の間の角度を半減ポイント、または、3dBビーム幅と呼び、利得の高いアンテナほど小さい3dBビーム幅を持つようです。
これは、通信距離の拡大や混信の低減のために用いられることが多いです。3dBビーム幅には、低い電力で電界強度の強いものを得られるというメリットがありますが、放射された電磁界での効果が及ぶ面積や受信可能な電磁界の入射方向が小さくなってしまうというデメリットもあるので覚えておくといいかもしれません。
利得の高いアンテナの方がよく思えるかもしれませんが、必ず利得の高いアンテナが高い性能を持っているというわけではありません。アンテナが使われる場面によって望ましい指向性や利得は変わってきます。
携帯電話のアンテナであれば、どんな姿勢で使うのか予測不可能であるため、等方性の指向性、遠く離れた場所から通信するパラボラアンテナであれば、より利得の高い、鋭いビームを持った指向性が好ましいのです。また、無線LAN通信はアンテナの性能が大きく影響するため、通信環境を考慮した上で適切なアンテナを選ぶことが大切です。
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