家や会社、学校などさまざまな建物にはアンテナが設置されています。スマートフォンや携帯電話、テレビ、ラジオなどの家電にはアンテナが必要で、私たちの生活には欠かせない存在です。
形もいろいろありますが「代表的なアンテナの形と言えば?」と聞かれたら、おわんの形をしたパラボラアンテナか、魚の骨に例えられる八木アンテナと答える人が多いのではないでしょうか。
みなさんはこの2つのアンテナの違いはご存じですか?今回はそれぞれの特徴や得意分野をご紹介します。この記事を読んで今後のアンテナ選びにお役立ていただけたらと思います。
生活に必須のアンテナ
無線通信をするときに必ず必要なのがアンテナです。英語でantennaと書き、昆虫の触覚という意味をもちます。アンテナは電波の入り口と出口の役目をしていて、現代ではテレビ・ラジオや、携帯電話、各種ワイヤレス・データ通信など私たちの生活では欠かせない技術です。
電波の入り口と出口とは受信用と送信用のアンテナに分かれているということで、この違いは“かけてもいい送信電力の違い”です。一部の優れたアンテナは送受信の両方を担いますが、一般的な使い道ではどちらか一方の役目のみです。
また、アンテナは使用する周波数に合う長さでないと電波を効率よく放射したり受け取ることができません。長すぎても短すぎてもいけません。もし正しくつけていても電波が弱い、複数の部屋にアンテナ線を配線するなど電波を増幅する必要がある場合はブースターをつけるなどの対策をする必要があります。
代表的なアンテナには、以下のものがあります。
- パラボラアンテナ……衛星放送に使われる
- 八木アンテナ(八木・宇田アンテナ)……テレビアンテナとして使われる
- ホイップ(ロッド)アンテナ……携帯電話に使われる
- ダイポールアンテナ……アマチュア無線などに使われる
この中でも今回は身近な存在であるパラボラアンテナと八木アンテナにスポットを当ててみていきましょう。
衛星放送の受信に役立つパラボラアンテナ
パラボラとは“放物線”を意味し、アンテナの内部が放物線のように半円になっていることからこの名前がつきました。また、その形状がお皿のような形をしているので英語でdishと呼ばれたり、ディッシュアンテナとも言われています。
一般的には衛星放送を受信するアンテナのことを指し、BS放送やCS放送を見るときに使われます。
パラボラアンテナを想像するときに特徴的なお皿の形を思い浮かべるかと思いますが、そのお皿の手前、中央部についた小さなお玉のようなものがあります。それが受信機で、放物線が描く波長の焦点は光が集まる点としての性質を持っているため、この性質を活かしてアンテナに届いた電波が受信機に集まるようになっています。
パラボラアンテナの特徴として“指向性が鋭い”ということが挙げられます。指向性とは電波・光波・音波などの強さが発信源からの方向によって異なる性質のことを意味し、その波を受信する装置が特定の方向からの大きな波に大きな感度を示す性質のことをいいます。
この指向性が高いので電波のくる方向へある程度正確にアンテナを向ける必要があります。アンテナの方向調整は難しく、きちんと合った方向に設置しなければ衛星放送が受信できません。
他の特徴として、お皿のような形のため高利得で側面や後方への電波の漏れが少ないことと、効率よく電波の電力を扱えることが挙げられます。
最近では、マンションなどの共同住宅では各住居でパラボラアンテナを設置する必要がないよう、共用のパラボラアンテナをあらかじめ設置して配線によって各住居へ衛星放送が見られるようにしてあるところが多くなっています。
また、光ケーブルの普及によってパラボラアンテナの数は減っていますが、宇宙通信、電波望遠鏡、災害時の臨時衛星回線などで活躍しています。これは光ケーブルが遠距離の通信が得意ではないためです。
お皿に似ている反射器の大きさも様々で、私たちがよく見かける家庭用の衛星放送のサイズから、数十メートルのもの、電波望遠鏡になると100メートル以上のものまであります。
目にすることが多い八木アンテナ
私たちが生活していて屋根の上などで一番目にするアンテナではないでしょうか。アナログ放送が終了し、地上デジタル放送になった今も各家庭で使われています。1926年に発明されたテレビを見るときに使われるアンテナで、八木秀次と宇田新太郎の共同で発明されたため“八木・宇田アンテナ”とも呼ばれています。
実物や写真で見たことがある方もいるかもしれませんが、長さが異なる3つの棒が1つのアンテナになっている形で、短い棒から導波器、放射器、反射器になっています。見かける形として上下二段あるものがあると思います。上がUHF帯用で下が周波数の弱いVHF帯用になっています。
パラボラアンテナと同じく指向性が高いため、電波を送っている送信局に合わせなければ受信できません。テレビを見るために最初に合わせるチャンネルとは、各局に割り当てられた電波の周波数のことで、これを合わせると放送が見ることができます。また、八木アンテナの場合、素子と呼ばれるエレメントは数が多いものほど利得が高くなります。
単純な構造なのに高性能であることは、発明された当初は日本では評価がされていませんでした。この性能を評価したのはアメリカで、戦時中にアメリカ軍のレーダー機能を飛躍的に向上させたともいわれています。現在では世界中で八木アンテナは利用されています。
日本では主に地上デジタル放送を含めたテレビ放送やFM放送の受信やアマチュア無線、業務無線の基地局用などで使われていますが、その活躍は通信用としても幅広く用いられ、自衛隊のレーダー輻射器に用いられるものもあります。
最近ではデジタル放送化に伴いVHFアンテナからUHFアンテナに変わりましたが、デザインアンテナといったスタイリッシュなアンテナを出すメーカーもあり、その評価は今後も高いまま使われ続けていくでしょう。
パラボラアンテナと八木アンテナの違い
見た目が違う
- パラボラアンテナは丸いお皿のような形
- 八木アンテナは魚の骨のような形
電波の拾い方が違う
- パラボラアンテナは水平方向、垂直方向の弱い電波も集めて大きな信号に変える
- 八木アンテナは水平方向のみを拾う
使われる場面が違う
- パラボラアンテナはテレビだとBSやCSなど衛星放送。ほかは宇宙通信、電波望遠鏡、災害時の臨時衛星回線など広範囲
- 八木アンテナはテレビだと各局の放送。ほかはFM放送の受信やアマチュア無線、業務無線の基地局用など
まとめ
ご紹介した2つのアンテナは、形は丸いお皿のようなものと棒が組み合わせてできているものとで全然違いますが、どちらも指向性が高いといった部分が同じです。
用途は大きく分かれており、地デジなどテレビを見るときに使われるのが八木アンテナで、BSやCSなどの衛星放送を見るときに使われるのがパラボラアンテナであることはわかっていただけたかと思います。自分が見たい放送によってアンテナを選ぶ必要があります。
また、どちらも方向や場所が重要であり、自分で設置することは難しいためアンテナ製品の設置を検討される場合にはアンテナのプロにお願いすることをおすすめします。
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