最近、自分で養蜂をしている人が増えているのをご存知でしょうか。興味はあっても「自分で育てるハチ。その蜜の作り方なんて、面白そうだけど素人には難しそう……」とお思いの人も多いのではないでしょうか。
じつは、養蜂のやり方はそれほど複雑なものではありません。きちんと事前に知識を蓄えれば、素人からでも気軽に養蜂にチャレンジすることができます。
今回はこれから自分で養蜂をしてみたい!という人のために、ミツバチの育て方や捕獲方法、おすすめの巣箱など、事前に知っておきたい情報をご紹介いたします。楽しくハチを育て、おいしい蜜をいただきましょう!
目次
セイヨウミツバチとニホンミツバチがいます
ハチの蜜の作り方について、まずご紹介したいのはハチの種類についてです。養蜂で育てることになるミツバチですが、日本で育てることができるのは「ニホンミツバチ」と「セイヨウミツバチ」の2種です。
セイヨウミツバチとは
セイヨウミツバチは、日本においては一切野生化しておらず、人間の飼育管理下にしか生息していない、非常に珍しい生態をもつハチです。まさに養蜂のためのハチで、世界中でセイヨウミツバチの蜂蜜が栽培されています。日本には明治時代にやはり養蜂を目的として輸入されました。
セイヨウミツバチの体の色は全体が黄色っぽい色をしており、家畜として品種改良されているため攻撃性はなく、逃げることもほとんどありません。
しかし、天敵や病気には弱く、飼育する場合はこまめで高等な管理を必要とします。そのため、趣味で養蜂を始める初心者にはあまりおすすめできない種類です。
ニホンミツバチとは
全体的に黒っぽい腹部が特徴のニホンミツバチは、外来種であるセイヨウミツバチとは違い、元から日本に現存していた野生種です。蜜の生産性はセイヨウミツバチに比べるとどうしても低く、商業的な養蜂家にはほとんど飼育されません。
しかし、ニホンミツバチはもともと野生種ゆえに病気や天敵に強く、セイヨウミツバチのようなこまかな管理を必要としないため、育てるのが容易です。また、蜜の味もよいため、趣味で養蜂をしている愛好家に好まれる種類となっています。
個人で養蜂をするならニホンミツバチを飼育するのがベターですが、どちらを飼育する場合も自分が住んでいる都道府県に「蜜法飼育届」を提出する必要があります。提出のルールは各自治体で異なるので直接連絡して確認するのがよいでしょう。
ミツバチを育てる大切な巣箱とはなに?
ここからはニホンミツバチを育てる前提で話をさせていただきます。ニホンミツバチを飼育するにはまず巣箱を作る必要があります。この巣箱によってハチの蜜の作り方が変わるので、巣箱は非常に重要なものです。
巣箱はどんな種類がある?
ニホンミツバチの巣箱にもさまざまな種類があります。丸太をくり抜いただけの「丸洞」、もっと複雑なものであれば、箱の中にニホンミツバチが巣を作るための枠を垂らす「巣枠式」、ハチが巣を作るのに合わせて巣箱を下に重ねていく「重箱式」などが代表的です。
巣の仕組みによって蜜の生産性や管理のしやすさが変わります。もっとも一般的に使用されているのはおそらく「重箱式」の巣箱でしょう。
おすすめは重箱式巣箱
重箱式の巣箱は、飼育の管理や蜜の採取が非常に楽で、初心者にはおすすめの巣箱といわれています。飼育というよりも、野生のミツバチに快適な巣箱に住み着いてもらうのが、重箱式巣箱の養蜂のイメージです。
ネットでも情報が多く載っていたり、通販で重箱式巣箱のキットが手に入ることもあるので、そういった意味でも初心者向きの巣箱といえるでしょう。
重箱式巣箱を作ろう!作り方を解説
いいハチの蜜の作り方にはいい巣箱が欠かせません。重箱式巣箱は「重箱」「巣門枠」「底板」「天井部分」の4つの部品からできています。巣箱の大きさにはとくに制限はありませんが天敵のオオスズメバチに食い破られないように厚めの板を使用するようにしましょう。
重箱式巣箱はミツバチが下に向かって巣を作るのに合わせて箱を足していく仕組みになっているので底がありません。しかし、地面に直に巣箱を置いておくわけにもいきませんので、底板が必要になります。底板は巣箱より大きな板であれば、どんなものでもかまいません。
次に巣門枠です。これは重箱と底板の間に設置する、巣の出入り口になる門を作るための枠です。この巣門枠で注意するのは、巣門の大きさです。
門の高さが7mmを超えてしまうと、オオスズメバチが侵入できるようになってしまい、せっかく育てていたニホンミツバチが襲撃されてしまいます。
とはいえ、あまり門を狭くしすぎても門で渋滞が起きてしまい、こもった暑さと湿気でミツバチがやられてしまう原因になりかねません。巣門は「高さ7mm以下、幅10mm以上」を意識して作りましょう。
巣門枠の縦横の大きさに合わせて2段か3段ほどの重箱を組み、最後にスノコ板の天井を乗せれば完成です。
ミツバチを捕獲!ネットで購入もできます
ニホンミツバチはほとんどが野生で生息している種です。飼育するためには野に生きているニホンミツバチを捕獲しなければなりません。
狙うのは古くなった巣を飛び出して、新しい巣を探しているミツバチ。引っ越し中のミツバチを無理やり捕獲することもできますが、一般的にミツバチの捕獲は、「新たな家をこちらで用意してそこに住み着くのを待つ」という方法をとります。
巣箱を用意する際には、「ハチが新しい巣を探し始める3月~5月の時期を逃さない」「なるべくたくさんの巣箱を色んな場所に用意する」「蜜蝋や待ち箱ルアーなどを使って巣箱に誘引する」などの条件を満たしましょう。ミツバチは作った巣箱に住み着いてくれるはずです。
また、偵察部隊の少量のハチが出入りしているのを見ても、まだ巣に手を加えてはいけません。
もうミツバチが住んでいると勘違いして巣を動かしてしまい、結果逃げられてしまう初心者が多いようです。50匹~100匹程度のミツバチの出入りが見られるまでは、黙って待っているようにしましょう。
しかし、時期を逃してしまったなど、どうしても初心者には捕獲が難しい場合もあるかもしれません。最近ではネットで養蜂用のミツバチを購入することもできるようなので、捕獲できなかった場合の最終手段として、考えておいてもいいかもしれません。
ここまでがハチの蜜の作り方です。ではいよいよミツバチから出来上がった蜜を分けてもらいましょう。
ミツバチから蜂蜜を分けてもらおう
一生懸命捕獲して育てたハチの蜜。作り方の次に、ミツバチが作った蜜を採取する方法をご紹介します。この蜜の収穫作業を「採蜜」といいます。
ニホンミツバチを重箱式巣箱で育てた場合、ミツバチの習性によって上段の巣箱が蜜の貯蔵庫、下段の巣箱が幼虫を育てる生活域というように区分けされています。なので、上段の巣箱を取り除けばミツバチ達の生活域を崩すことなく、採蜜ができるのです。
とはいえ、巣の一部を崩してしまうことには変わりありません。巣の中の働きバチはほとんど攻撃してくることはありませんが、巣の周囲を警戒しているハチは攻撃性が高いので、刺されないようにしっかり防護しておく必要があります。
ハチが蜂蜜を作る理由は?
ハチの蜜の作り方をご紹介してきましたが、そもそもハチはなぜ蜜をつくるのでしょうか。ハチの蜜を必要としているのは巣の中にいる幼虫たちです。働きバチが花の蜜から作り出した蜂蜜は、幼虫にとっては成長に欠かせない食料なのです。
また、蜂蜜は幼虫のエサというだけではなく、もしものときの群れの非常食としての役割ももっているようです。ハチにとって蜂蜜は群れの繁栄に欠かせない重要なものであることをよく理解して、その恵みを分けてもらっていることを忘れないようにしましょう。
まとめ
養蜂はハチの蜜の作り方のコツさえつかめば、個人でもしっかりおいしい蜂蜜を作ることができる、楽しくてお得な趣味です。
個人の養蜂で育てている人が多いニホンミツバチは、もともと日本の野生種です。病気にも強く、人がこまかに管理をしなくても快適な巣を提供できてさえいれば、私たちに蜜の恩恵を与えてくれます。
しかし、ハチの攻撃性については気を付けなければいけません。温厚なミツバチですが、採蜜で巣を壊す際には攻撃を受けてしまうかもしれません。
また、ミツバチを狙うオオスズメバチなどの危険なハチが近づいていることもあります。危険なハチを見つけたら、業者に駆除の相談をするのをおすすめします。