ネズミは人間よりも頭がいいという説があります。小さな見た目に反して、私たちが想像する以上の知能があるため昔から厄介な害獣とされてきました。種類によってネズミには乳幼児程度の感情もあるといわれており、芸を覚えるなどの躾も可能です。
そして何より、ネズミは知能に加えて抜群に優れた野生のカンも持ち合わせています。そのため、安易な方法では駆除がうまくいかない場合が多いのです。
今回は、そんなネズミの知能の高さの秘密と、彼らの賢さに負けない効果的な駆除のポイントについてご説明します。ねずみ駆除を自分でどのようにやろうか迷っている方は、ぜひご一読ください。
ネズミが「人間より頭がいい」とされる理由とは
昔から使われていることわざや伝承などには、ネズミの頭の良さがあらわされたものがいくつかあります。
ネズミは昔から「大黒天の使い」とされ、実際に大黒ネズミという種類のネズミがいます。ちなみに大黒天とはみなさんご存知の七福神の1柱で、大地と農業の神様、ひいては財宝・福徳開運の神様として信仰されています。単なるネズミにこれほど有難い名前を冠するとは、ちょっと不思議ですよね。
なぜネズミが神の使いとされていたのか?その由来については、米など作物を食べてしまう食害の脅威が農業への影響と直結し、やがて信仰の対象となった説などさまざまありますが、ネズミの知能の高さゆえに人間から一目置かれるようになったという説もあります。
そんなネズミの能力の中でもひときわ有名なのが、危険察知能力の高さです。
- 火事の前にはネズミがいなくなる
- ネズミは沈みかかった船を見捨てる
- 地震の前にはネズミがいなくなる
この辺りは昔から特に有名なようですね。
現代になっても、大きな災害や事故などが起こった場所からは、その直前にネズミ集団で去っていくのが目撃された、というような一説が流れることがあります。人間にはないこの野生のカンには感心してしまいますよね。
このように、ねずみの危険察知能力は、昔も今も人々に強い影響を与えています。
では、「ネズミ=賢い」という説は、科学的にも実証できるのでしょうか?
ネズミが賢い理由は?記憶力と適応力にあり
ネズミの知能の高さは、科学的・数字的にもはっきりと実証できます。ネズミが賢いといわれる最も大きな理由は、学習能力と記憶力にあるのです。
ネズミは体重の中で、脳の重さが占める割合が人間よりも大きいのが特徴です。かかった罠には2度かかることはないという研究結果もあり、学習能力がとても高いことが知られています。
新しい環境に置かれたときは、それまで経験したさまざまな出来事に関する記憶を駆使して、環境に順応・対応することもわかっています。ちなみに、ネズミは同じげっ歯類のハムスターよりも賢いそうですよ。
ネズミの知能を迷路に入れて測る実験は有名ですが、かなり複雑な迷路の中に入れられても、ネズミはたった9回の試験で正しい道を見つけることができるといいます。これは優れた記憶力あっての結果ですね。
さらに驚くべきことに、視覚・聴覚・嗅覚・触覚を奪った状態で同じ実験をしても、ネズミは正しい出口を見つけることができたので、筋肉のカンを働かせて活動したと考えられました。ここは完全に一般的な人間をゆうに超えた能力であるといえるでしょう。
また、長い距離と短い距離のどちらの道を選ぶかという実験では、数十回の実験の後、かならず短い道を選ぶようになるということもわかっています。移動効率もバッチリというわけです。
そして、日本にいるネズミの中でもとくに頭がいいといわれているのは、クマネズミです。
家屋にいるクマネズミは集団で関係性を構築しながら暮らすことが知られます。台所などにある食べ物を狙うわけですが、最初から数匹で標的に向かっていくことはしません。
まず、偵察役のネズミが一匹、巣から標的までのルートを慎重に選んでいきます。しばらくすると、数匹一気に巣から出てきて、偵察役が通ったルートと全く同じ場所を通って目標地点までたどり着きます。帰るときも行きと全く同じルートを通り、一目散に巣へ帰ります。
つまりクマネズミは、偵察役を先に送り(役割分担・チームワーク)→安全が確認できたときに人間には聞こえない周波数の鳴き声を発生させ(言語的やりとり)、後発隊は安全なルートを選んで(情報理解・共有)目的地までたどり着いていることになります。
やはり、ネズミは人間が思っているよりもずっと頭のいい動物であるといえるでしょう。
駆除でもネズミの賢さは厄介
このようなネズミの知能と能力は、駆除する側の私たち人間にとっては非常に厄介な障壁となります。ほかの害獣・害虫と違ってとても賢いせいで、なかなか思うように駆除できないケースが多いのです。
1.そもそも罠に引っかからない
粘着シートなど、設置の方法を工夫しないと、ネズミはそう簡単には罠に引っかかってくれません。明らかに罠とわかるような形状のものだと、最初から警戒して全く寄り付かないということもあるようです。
また、毒餌の毒をかぎ分けて、まったく食べないということもあるようです。
2.同じ仕掛けではひっかからなくなる
駆除をおこなうたびに毎回同じタイプの仕掛けを作っていると、仕掛けに慣れてしまい、涼しい顔で避けて通っていくこともあります。ネズミは学習能力が高いので、「この罠はこうやって回避すれば大丈夫」ということを覚えたら忘れないのです。
3.裏をかいてくることもある
前述のとおり、ネズミは危険察知能力が高いので、人間の本気の駆除の裏をかいてくることもあります。とくに「気配」に対しての感覚が敏感のようで、こちらの気合や殺気をしっかり察知すると全く出てこなくなるなど、あまのじゃくな一面もあるようです。
いわゆる「ラットサイン」で不利にならないよう、フンをあえて落とさないようにするなど、極力気配を察知されないようにするツワモノもいるようです。こんな賢いネズミに住みつかれてしまった家は、駆除に苦戦を強いられているうちにネズミ算式に繁殖が進んでしまうことになり、たまったものではありません。
賢さに負けない!徹底的にネズミに対処する方法は?
ネズミとの知恵比べのような方法で駆除をするのは、とても難しい場合があります。賢いねずみに負けないための対処法は、物理的な駆除だけでなく、「ねずみが嫌いな空間づくり」も併せておこなうことです。
ネズミは賢い動物なので、自分たちが住みづらい環境を敏感に見分けることもできます。その場所を「住みにくい家」と思わせることができれば、ほかの場所に移らせやすくなります。
- 忌避剤の使用
- 罠の設置(定期的に設置場所や仕掛けを変える)
- 毒薬設置(嗅ぎ分けられているようであれば種類を変える)
- 超音波、電波発生器を設置(近隣への影響に注意しましょう)
これらの駆除・忌避の方法と合わせて、
- ・家の穴や亀裂を全てふさぐ
- ・ネズミの隠れ家になりやすい、ものが散乱した部屋は綺麗に掃除する
など、ネズミの侵入経路や快適空間をつぶしていくのが好ましいです。
これらの手段を取ってもどうしようもない場合は、ネズミ駆除業者へ依頼してみるのがベストです。
まとめ
ネズミはとても頭がいいので、ちょっとやそっとの駆除方法ではまったく効果が表れないケースも少なくありません。
かといって、放置しておくと糞害や食害、感染症による健康被害などが発生する危険もあるので、見て見ぬふりをするのは危険です。
また、最初の駆除でつまずいてしまうと、ネズミが罠に慣れて効果的な駆除しづらくなるうえ、警戒心を強めてしまって次の駆除も思うようにいかないといった悪循環が発生する場合もあります。
予想以上に賢い動物であるということを念頭に置き、自力での対応が難しいときには、業者など専門家に相談してみるといいでしょう。