ミツバチは工夫に工夫を重ねて生活をしています。その工夫のひとつに、蜂球という少し奇妙な現象があります。これは群れを存続させるために重要な役割があります。その意味を知った後で蜂球を見つけたら、小さなミツバチの努力を感じることができるでしょう。
蜂球とはどのようなものか、そして近くに蜂球をみつけた場合、どのように対処していけばよいのかを知っていきましょう。
目次
蜂球ってなに?
蜂球(ほうきゅう)とはたくさんのミツバチが集まって塊のようになった状態のことです。巣ではない木の枝などにミツバチが集まって、ひとつの球のようになります。もちろんただハチが1ヶ所に集まるだけの現象ではなく、蜂球を作るのには意味があります。
分封蜂球と熱殺蜂球の2種類がある
蜂球と呼ばれる現象は2種類あります。ひとつは「分封蜂球」(ぶんぽうほうきゅう)といい、ミツバチが巣を分けるときにできる蜂球です。もうひとつが「熱殺蜂球」(ねっさつほうきゅう)で、これはニホンミツバチがスズメバチを蜂球で取り囲み、熱で殺すときの蜂球です。
それぞれの蜂球でどんなことが起こるのは、この先で詳しく紹介します。まずは熱殺蜂球から見ていきましょう。
ニホンミツバチだけの秘儀・熱殺蜂球とは
熱殺蜂球はスズメバチを殺傷するためにミツバチがおこなう攻撃ですが、じつはニホンミツバチに特有の行動です。外来種のセイヨウミツバチは熱殺蜂球のやり方を知らないのです。
ニホンミツバチの生態をスズメバチとの関係で見てみると、蜂の種類が多い日本の特殊な環境がニホンミツバチに与えた影響がわかってきます。
ニホンミツバチとスズメバチの生態
熱殺蜂球をおこすニホンミツバチの生態は、身近にいた天敵の存在によってつくられました。その天敵が、ミツバチを食べてしまうスズメバチです。ニホンミツバチは厳しい環境下で生き残っていく中で、スズメバチに対抗できる独特の生態を獲得したのです。
ヨーロッパ原産のセイヨウミツバチであっても、スズメバチが天敵なことにかわりはありません。しかし日本にはじつに17種類ものスズメバチが生息しており、ほかの地域と比べても過酷な環境だったといえるでしょう。日本で生き残るために頑張ってきたニホンミツバチの努力が伝わってきます。
どのようにしてスズメバチを殺すのか
ニホンミツバチがスズメバチに対抗するときは、針で刺すのではなく「熱」で対抗します。ニホンミツバチはおよそ49度まで耐えられるのに対して、スズメバチが耐えられるのはおよそ45度までです。
この差を利用して、ミツバチが耐えられるぎりぎりの46度から48度ほどの高温を作って、スズメバチを蒸します。
夏場の気温と比べても10度以上高いこの高温を作り出すために、ニホンミツバチは蜂球でスズメバチを取り囲みます。取り囲んだうえで羽根を震わせ、摩擦熱で蜂球の中を高温状態にするのです。60分もするとスズメバチは死んでしまいます。
自宅に蜂球を発見したらどうする?
自宅などに現れる蜂球は、分封蜂球という種類のものです。分封蜂球を作っている蜂は、危険性がほとんどないといって大丈夫です。
特別に何かすることがあるとしたら、周囲に巣が作られていないかをチェックすることでしょう。分封蜂球ができた後に起こることや、巣を作られる可能性など、気になる点について解説します。
蜂球は通常数日で消える
蜂球は新しい巣を見つけるまでの休憩なので、1日から数日が経ったら別の場所に移動して、なくなります。ミツバチは、春に巣で新しい女王蜂が生まれたら、親の蜂は働き蜂の一部を引き連れて巣を出て、新しい巣を作るための旅に出ます。
これを分封(ぶんぽう)、もしくは分蜂といいます。分封蜂球は、新しく巣を作る場所が決まり、新居の建築が終わるまで別の場所で待機している軍団だと考えるとわかりやすいです。
新しい巣には注意
注意したいのが、この分封蜂球は新しい巣の近くで作られるという点です。巣が作られると、それを狙ってスズメバチが近づいてくることもあり危険なので、巣が作られたら駆除するのが無難です。巣を探すときは分封蜂球の付近で以下の場所をチェックしてみましょう。
ミツバチが巣を作りやすい場所
- 屋根裏
- 倉庫の中
- 床下
- 軒下
- そのほか密閉度の高い空間
分封蜂球のミツバチは攻撃してこない
蜂球で集まっている蜂を、とくに警戒する必要はありません。引っ越しのためにハチは自分の身体のなかに蜜をため込んでいるので、攻撃するほど動くことができません。分封蜂球の蜂の攻撃性は低いため、近くを通るくらいなら大丈夫だと考えてよいでしょう。
危険な蜂の種類|蜂に狙われない予防策
ミツバチの巣があると、スズメバチが寄ってきてしまうことがあります。スズメバチは針で刺すときの毒の量が多く、攻撃性も高いので、見つけたら警戒が必要です。ここでは蜂の攻撃対象にならないようにし、巣を作らせないための方法を紹介します。
黒い服や甘い匂いは蜂を引き寄せる
蜂は黒くて動くものを集中的に攻撃する傾向があります。また木の樹液をエサとしているので、甘い匂いにも敏感です。蜂がいそうなところにいくときや、蜂の駆除をするときは服装と香りに注意し、白っぽい服と無香を心がけましょう。
巣作りを予防するには「忌避剤」と「木酢液」が有効
巣を作らせないためには、蜂が寄り付かなくなるものを使います。蜂用の忌避剤(きひざい)はスプレー型で市販されているものが多く、殺虫スプレーと兼用になっていることもあります。
また木酢液は天然由来の液で、これをペットボトルなどの容器に置いてにおいが出るようしておけば、蜂が嫌がる空間を作れます。
どちらもホームセンターで手に入る道具です。軒下や屋根裏など、蜂が巣を作りやすい場所に対してこれを使っておくと安心です。
もしすでに蜂の巣ができてしまってお困りの方は、弊社にご相談ください。ミツバチ・スズメバチ・アシナガバチなど、蜂に対応できる業者をご紹介いたします。まずは無料相談窓口から、ご用件をお聞かせください。
まとめ
蜂球は巣分けのための分封蜂球と、巣の防衛のための熱殺蜂球があります。分封蜂球は巣を探すあいだに羽根を休めるために作られ、熱殺蜂球はスズメバチを倒すためにおこなわれます。同じ蜂球というなまえでありながら、別のものをさすことがあるのですね。
熱殺蜂球は巣の中で起こることなので、人間に直接影響はありません。分封蜂球は身近な場所で見かけることはあるかもしれませんが、危険ではないので心配する必要はない現象です。
ただし蜂球の近くで巣が作られる場合があるので、ミツバチがよく巣をつくる箇所をチェックしておきましょう。