「スズメバチは何を食べてどのような暮らしをしているの?」
「スズメバチが活発になる時期はいつ?」
「スズメバチはどのようなところに巣をつくるの?」
当記事を読んでいただければ、このような疑問がすっきり解消されます。
なぜなら、スズメバチの基本生態から種類ごとの細かな生態の違いまで徹底的に解説しているからです。
具体的には下記4つを解説します。
- スズメバチの基本生態
- 4種類のスズメバチの生態の違い
- 蜂毒の危険性
- スズメバチと遭遇したときの対処法
ぜひ読んでいただき、スズメバチの生態を正しく理解しましょう。
スズメバチを正しく知れば、ハイキング中、町なかなどでばったり遭遇したときにも落ち着いて身を守れるようになりますよ。
▼主な著書
・『虫<自然>は友だち』 新日本出版社 2004年
・『おどろきのスズメバチ』 講談社 2013年
・『スズメバチの真実』 八坂書房 2018年
目次
4つの観点から見るスズメバチの基本生態
スズメバチは「近づいただけで襲ってくるとても凶暴な蜂」と思っていませんか?
果たして本当にそうなのか、まずは以下の4つの観点からスズメバチの生態を紐解いてみましょう。
- 活動時期
- 活動時間
- 攻撃性
- 巣
①活動時期:最も活発になるのは7~10月
スズメバチは4~11月頃まで活動しますが、特に7~10月の間は活発になります。
春に生まれた幼虫が成虫になり、働き蜂として飛び回るようになるからです。
そして9月中旬頃に新しい女王蜂候補が生まれると、働き蜂たちは巣を守るためにさらに活発に飛び回り、攻撃性も非常に高くなります。
このような理由から、夏から秋にかけての時期は人が刺される被害が多発し、駆除依頼も急増します。
弊社がおこなった調査によると、受付月別のスズメバチ駆除件数は8月が最多、次いで9月7月となっており、3ヵ月の合計が全体のおよそ72%を占めていることがわかりました。
以下ではスズメバチの活動時期を時期別に詳しく解説します。
もっと知りたいと思った方はぜひ読んでみてください。
スズメバチの1年間
スズメバチの1年間をわかりやすくイラストにしました。
まずは以下をご覧ください。
スズメバチの巣は女王蜂たった1匹から始まります。
巣を作りながら何度も産卵を繰り返し、数百~数千匹の働き蜂が暮らす巨大な巣を作りあげます。
しかし女王蜂の寿命は1年間なので、秋の終わりには死んでしまいます。
一方でその年の秋に生まれた新しい女王蜂は生まれた巣を離れて越冬します。
越冬後は前年の巣を使わず、新しい場所で新たな巣を作ります。
スズメバチの女王蜂の生態・駆除方法はこちらをご覧ください。
冬の蜂の巣の状態についてはこちらをご覧ください。
➁活動時間:昼間に活動し夜間に巣に戻る
スズメバチは人間と同じように日が昇ると同時に活動を始めて、巣の外にエサを探しに出かけます。
昼間は日差しが強くなるので、朝よりも動きは鈍くなりますが、活発に飛び回ります。
そして日が暮れると巣に帰っていきます。
多くのスズメバチはこのようなサイクルで生活していますが、モンスズメバチだけは夜間も活動しているので注意が必要です。
モンスズメバチの生態は「【要注意な4種類のスズメバチ】見た目・生態・巣の場所や形の違い」のなかで詳しく解説します。
雨や低気温の日は昼間でもやや不活発になる
スズメバチは日中に活動しますが、雨や気温の低い日は巣の中でじっとしている個体が多くなります。
スズメバチは寒さに弱いのに加えて、翅が水分を含むと重くなり飛べなくなってしまうからです。
梅雨があけた7月以降に一斉に活動を始めるのは、このような理由も関係しています。
スズメバチの夜の状態はこちらをご覧ください。
➂攻撃性:刺激しない限り襲ってこない
冒頭でも触れたようにスズメバチは「近づいただけで襲ってくるとても凶暴な蜂」と思われがちです。
しかし、実際は巣やスズメバチを刺激しない限り襲ってくることはありません。
「黒色の服を着ていると狙われやすい」説もありますが、ただ黒色の服を着て歩いているだけなら襲われることはほとんどないです。
スズメバチに攻撃されやすい状況や、黒色が狙われやすいといわれる理由は「もっと知りたい!スズメバチの生態Q&A」のなかで詳しく解説します。
ちなみに、人を刺すのはメスの蜂だけです。
なぜなら、毒針はメスの産卵管が進化したものだからです。
④巣:巣の場所や形は種類によって異なる
多くのスズメバチは軒下や庭木に丸いボール型の巣を作ります。
なぜなら雨風をしのげて敵からも見つけられにくいからです。
しかし、種類によって巣の形や作られる場所が微妙に異なります。
種類ごとの巣の特徴は次章で詳しく解説するので、引き続きご覧ください。
【要注意な4種類のスズメバチ】見た目・生態・巣の場所や形の違い
日本に生息するスズメバチは17種類。
今回はそのなかから人を刺す危険性が高い4種類の生態や巣の特徴を解説します。
イラストを交えてわかりやすくご紹介するのでぜひ読んでみてくださいね。
他のスズメバチの種類についてはスズメバチの種類をまとめた記事をご覧ください。
オオスズメバチ
オオスズメバチはスズメバチのなかでも最強といわれる凶暴な種類です。
生態を簡単にまとめたのでご覧ください。
見た目 | |
体長 | 女王蜂:4~4.5センチメートル 働き蜂:2.7~4センチメートル |
活動時期 | 5~10月 |
巣の形(完成形) | つりがね型 ※通常巣の全体はほとんど見えない |
巣の場所 | 土の中や木の根元などの閉鎖空間 |
活動場所 | 山間部や里山 |
非常に気性が荒く、獰猛な性格です。
活発な秋の時期になると、人が巣の近くを通っただけでも威嚇・攻撃してくることがあります。
さらに巣が土の中にあるため、普通に歩いていると気付きにくいのも危険なポイントです。
ハイキングや登山の際は足元にも十分注意し、きちんと整備された指定コースを歩きましょう。
未舗装の道や手入れされていない茂みには、巣が隠れていることもあるからです。
キイロスズメバチ
キイロスズメバチは家の軒下や木の枝に巣を作る、人間に身近な種類です。
生態を簡単にまとめたのでご覧ください。
見た目 | |
体長 | 女王蜂:2.5~3センチメートル 働き蜂:1.7~2.5センチメートル |
活動時期 | 5~11月 |
巣の形(完成形) | ボール型(表面はマーブル模様) |
巣の場所 | 初期:木の穴や床下、屋根裏などの閉鎖空間 中~完成期:家の軒下や庭木などの開放空間 |
活動場所 | 場所を問わない |
キイロスズメバチは働き蜂の数が少ない作り始めの頃は木の穴や床下などの閉鎖空間に巣を作り、巣が手狭になると出入りのしやすい庭木や軒下に「引越し」する習性もあります。
そのためあるとき急に巨大な巣が出現し、初めてキイロスズメバチの存在に気付くケースも多いようです。
キイロスズメバチはオオスズメバチに次いで危険な蜂といわれます。
人の生活圏内にも巣を作るので、もし見つけたら早めに駆除業者に駆除してもらいましょう。
モンスズメバチ
モンスズメバチは日本での生息数はそれほど多くないものの、凶暴性ではすでにご紹介した2種類に次ぐ蜂です。
生態を簡単にまとめたのでご覧ください。
見た目 | |
体長 | 女王蜂:2.8~3センチメートル 働き蜂:2~2.8センチメートル |
活動時期 | 5~10月 |
巣の形(完成形) | つりがね型 巣の下側が大きく開いている |
巣の場所 | 木の穴、屋根裏や床下などの閉鎖空間 |
活動場所 | 雑木林や里山 |
モンスズメバチはセミを主食にしているため、雑木林などの自然が多い場所に生息しています。
おもに自然の木のうろなどに営巣しますが、民家の屋根裏に営巣するケースもあります。
また、キイロスズメバチと同様に巣が手狭になると、引越しをする習性があります。
しかしモンスズメバチは引越し後も人目につきづらい場所に営巣するため、気付いたときには巨大な巣ができていて、働き蜂の数も膨大になっているケースが少なくありません。
さらに大きな特徴として、モンスズメバチは主食のセミを狩るために夜間も活動します。
夏の夜間に蜂が飛んでいたら、モンスズメバチだと思ってよいでしょう。
コガタスズメバチ
コガタスズメバチは人間の生活圏内で遭遇しやすい種類です。
生態を簡単にまとめたのでご覧ください。
見た目 | |
体長 | 女王蜂:2.5~3センチメートル 働き蜂:2.2~2.8センチメートル |
活動時期 | 5~10月 |
巣の形(完成形) | ボール型(表面はマーブル模様) |
巣の場所 | 軒下や庭木などの開放空間 低木や茂みの中にあることが多い |
活動場所 | 人の生活圏内 |
コガタスズメバチは庭の茂みの中や軒下など人の生活圏内に巣を作ります。
そのため、庭木の手入れ中や日常生活のなかで意図せず刺激してしまって刺されてしまうケースも多いようです。
性格はスズメバチのなかでもおとなしいほうですが、刺激したり巣にいたずらしたりすると一斉に攻撃してきます。
巣に気付いたら早めに駆除業者に連絡して、被害を受ける前に駆除してもらいましょう。
緊急性の高いスズメバチ駆除のご相談は、年中無休対応のハチ110番のご利用が便利です。
ハチ110番では、お電話いただいたあとすぐに、お近くの蜂駆除業者をお探しします。
毒針攻撃も生態のひとつ|蜂毒の危険性とは?
スズメバチの「毒針」攻撃も、自らの身を守るためにとる行動(生態)のひとつです。
しかし人間が刺されてしまうと、命に関わる重篤な症状を引き起こすことも……。
この章では蜂毒の危険性と共に、刺されてしまった場合の対処法を学びましょう。
特に危険なのは刺されてすぐのアレルギー症状
蜂に刺されると痛みや腫れなどの症状があらわれますが、通常は数日経てば収まります。
しかし体質によっては刺されてすぐに息苦しさや冷や汗、めまい、動悸などの激しいアレルギー症状があらわれることがあります。
このような急性のアレルギー症状を「アナフィラキシー」といい、そのなかでも血圧の急激な低下などの重篤なショック症状を「アナフィラキシーショック」といいます。
アナフィラキシーは蜂に刺されるのが2回目以降の人にあらわれやすい傾向があります。
いちど蜂に刺されると体内で蜂毒に対する抗体が作られますが、多くの人がもつのは体に大きな悪影響を及ぼさないIgG抗体です。
しかし人によっては特異的なIgE抗体が作られ、再び同じ種類の蜂に刺されると、IgE抗体が入ってきた蜂毒を除去しようとする「抗原抗体反応」が起こります。
そのため、2回以上蜂に刺されると激しいアレルギー反応が出やすくなります。
過去に蜂に刺されてアレルギー反応が出た方が、登山やハイキングに出かける際は、家族や同行者に蜂毒アレルギーがあることを伝え、アレルギーがあるとわかるカードなどを身に着けておきましょう。
主治医に相談して薬やエピペン(アドレナリン)なども携行しておくと安心です。
実は初めての蜂刺されでも危険!
アナフィラキシーは、場合によっては初めての蜂刺されでも発症するおそれがあります。
例えばいちどに複数箇所を刺された場合や、太い血管や神経系が集まる首や頭を刺された場合などです。
さらに、以前アシナガバチに刺されて免疫のある人が、次にスズメバチに刺されるとアナフィラキシーを発症するおそれもあります。
スズメバチ毒とアシナガバチ毒には共通のアレルゲン物質が含まれているためです。
万が一に備えてポイズンリムーバーを携行しておく他、近くに救急対応が可能な医療機関があるかどうかを調べておくと安心ですね。
ポイズンリムーバーとは
ポイズンリムーバーは傷口から毒の吸出しをおこなう器具で、医師の手当を受けるまでの応急処置として効果的です。
あまり聞きなじみがないかもしれませんが、現在はアウトドアショップを始め、ドラッグストアや大手通販サイトでも購入できます。
ただ、頭部のように毛髪により真空状態になりにくい箇所には向かず、水を流して刺された箇所をつまむように毒を絞り出します。
もしスズメバチに刺されたらすぐに医療機関へ!
もし自分や同行者、家族がスズメバチに刺されてしまったらすぐに最寄りの医療機関を受診して、医師の適切な処置・治療を受けましょう。
どうしても緊急の来院が難しい場合は、以下の応急処置をおこなったうえで、できるだけ早く医療機関を受診してください。
スズメバチに刺された場合の緊急応急処置 |
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【参照】
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ただし、多くの蜂はこちらから刺激しない限り襲ってきません。
蜂や巣を見つけても「蜂に近づかない」「巣に近づかない」「蜂や巣を触らない」ようにすれば刺されるリスクを大幅に減らせます。
蜂の生態を理解し、自分や周囲の人の身を守りましょう。
詳しくは蜂に刺された際の症状や対処法をまとめた記事をご覧ください。
もっと知りたい!スズメバチの生態Q&A
この章では、スズメバチの生態をさらに深堀りし、Q&A方式で解説していきます。
スズメバチ対策に役立つ内容もあるのでぜひ参考にしてくださいね。
スズメバチは普段何を食べているの?
スズメバチは成虫と幼虫で食べるものが異なります。
成虫はウエストがくびれていて飲み込めないので、木の樹液や花の蜜、人間が捨てたジュースの残りなどを吸っています。
昆虫も狩りますが、自分は飲み込めないため、かみ砕いて肉団子にして幼虫に与えます。
幼虫はあごが大きく噛むことができないので、成虫がかみ砕いてくれた昆虫の肉団子をそのまま丸飲みします。
その代わり、体から出る分泌液を成虫に与えます。
分泌液は栄養豊富で成虫の重要な栄養源になります。
このように幼虫と成虫が互いにエサを与え合う習性を「栄養交換」といいます。
スズメバチに天敵はいるの?
最強生物といわれるスズメバチにも天敵がいます。
以下に代表的な生物を挙げてみました。
・クマ
蜂蜜を求めて巣を襲うイメージがあるかもしれませんが、実際は巣の中の成虫や幼虫まで丸ごと食べてしまいます
スズメバチの毒針も、クマの厚い毛皮には敵いません。
さらにスズメバチが活発になる夏から秋は、クマが冬眠に備えて栄養を蓄える時期でもあります。
スズメバチからすると最も怖い相手といえるでしょう。
・オニヤンマ
トンボのなかでも大型のオニヤンマはスズメバチよりも高速で飛び回り、ときにはスズメバチを捕らえて食べてしまうこともあります。
しかしスズメバチもオニヤンマを食べることがあるので、互いに捕食関係です。
・カマキリ
大きな鎌でスズメバチを抑え込み、針を出す暇を与えずに食べてしまいます。
しかし空からの攻撃は弱点で、反対にスズメバチに捕食されてしまうことも。
オニヤンマと同様に、互いに捕食関係です。
・クモ
高速で飛ぶスズメバチはクモの巣に引っかかっても突き破ってしまいますが、糸の粘性が強く動けなくなってしまう場合もあります。
動けなくなったスズメバチはやがてクモに捕食されます。
スズメバチの天敵の詳しい例はこちらをご覧ください。
女王蜂も人を刺すことはあるの?
女王蜂も毒針をもっているので、人を刺すおそれはありますが、攻撃よりも子孫繁栄を優先しているため、めったに人を刺すことはありません。
そもそも外に出て飛び回るのが巣作りする春だけなので、人に遭遇する機会も限られています。
ただし、おとなしいからと油断して巣を刺激すると刺される危険性はあるので、むやみに近づくのはやめましょう。
さらに冬場、まれに干している洗濯物にくっついて暖をとっていることがあります。
近くで蜂が飛んでいるときは、念のためよく確認してから取り込むとよいでしょう。
スズメバチはどのようなときに攻撃するの?
スズメバチは以下のような行動をとったときに攻撃してきます。
要注意なのは何でも触りたがる小さな子供です。
民家に巣を作る種類もいるので、止まっている蜂を見ても触らないように繰り返し伝えましょう。
スズメバチを怒らせてしまう3つのNG行動 |
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しかし、種類によってはエサ場や巣に近づいただけで威嚇してくるスズメバチもいます。
そう聞くと「たまたま近づいてしまったらどうやって身を守ればいいの?」と思いますよね。
実は怒ったスズメバチはすぐに人を刺すわけではなく、攻撃までにいくつかのサインを出します。
攻撃までの流れを見てみましょう。
スズメバチが攻撃するまでの流れ |
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➂の段階ではすでに臨戦態勢に入っているので、速やかにその場を離れましょう。
少なくとも、集団で一斉に攻撃されるような最悪の事態は防げるはずです。
スズメバチの行動範囲についてはこちらをご覧ください。
スズメバチはにおいに敏感って本当?
スズメバチはフェロモンを通して仲間と情報共有するなど、においにも非常に敏感です。
山に入るときはもちろん、巣が近くにあるときも、香水や化粧品、整髪料の使用を避けましょう。
またジュースやお菓子、お弁当のにおいにも寄ってくることがあります。
知らぬ間にジュースの缶に入り込んでいることがあるので、アウトドアの際は十分注意してください。
特に清涼飲料水は好んで蜂が寄ってきやすいので、野外で飲むのは避けたほうがよいでしょう。
「黒色は蜂に狙われやすい」といわれるのはなぜ?
「黒色の服を着ていると蜂に狙われやすい」
「蜂に遭遇したらまず頭や目を守るのが最優先」
などの話を聞いたことがある方も多いでしょう。
黒色が蜂に狙われやすい説には所説ありますが、以下の2つの説が有力なようです。
- 蜂の視界が白黒で、明るいところで動く色の濃いものは目立つから
- 敵に黒色の生き物が多いから(クマや人間など)
参照:
・NHK子ども科学電話相談「ハチはどうして黒いものを襲うの?」
・教えて『ハチ博士』ハチとうまく付き合うために
山に入るときや近くに巣があるときは、なるべく白など薄い色で、ぴったりした服装がおすすめです。
襟や袖口が大きく開いていると、蜂が入り込んでくるおそれがあります。
服の素材は木綿製よりもナイロン製のほうが滑りやすく蜂が止まりにくいのでおすすめです。
色の濃い頭は同じく薄い色の帽子を着用しておきましょう。また頭髪はスズメバチの攻撃対象なので要注意です。
蜂の毒針はいちど刺したら終わりって本当?
ミツバチの針はいちどきりですが、スズメバチの針は何度でも使えます。
ミツバチの針にはかえしがついており、1度刺すと抜けない仕組みです。
抜こうとすると針につながった内臓ごと引きちぎられて死んでしまいます。
しかしスズメバチの針にはかえしがなく相手の皮膚に引っかからないので、何度でも出し入れできます。
このような毒針の仕組みも、スズメバチが最強といわれる理由のひとつです。
生態から考える、スズメバチから身を守る3つの対策方法
最後はスズメバチから身を守る3つの対処法を解説します。
日常生活で鉢合わせしてしまった場合はもちろん、ハイキングや登山で野山に入る場合にも役立つ内容です。
ぜひ読んでいただき、正しい対処法を身に着けてくださいね。
巣や羽音に気付いたらかがんで静かに後ずさりする
カチカチ音やぶんぶん聞こえる羽音は威嚇サインです。
万が一遭遇してしまったら、それ以上刺激しないように、元来た道を戻るように後ずさりして離れましょう。
スズメバチは横のすばやい動きに反応しやすいので、動くときはかがんで姿勢を低くし、ゆっくりと静かに移動してください。
少なくとも20メートル離れれば、ある程度危険を回避できるはずです。
間違っても怖いからと走って逃げたり、大きな声を出したり、手で振り払ったりしないでくださいね。
単独行動を避けて、なるべく複数で行動する
野山に入るときは、できるだけ複数人で行動しましょう。
1人だと、スズメバチに刺されてしまったときに助けを呼べず、命に関わることがあるからです。
ただし、あまり大きな集団になると振動や声でかえってスズメバチを刺激してしまい、攻撃される危険性が増すので注意してください。
できれば3~4人程度で行動するのがよいでしょう。
そのなかから引率するリーダーや保健担当者を決めておくと万が一のときも慌てずに済みます。
さらに全員がスプレー式殺虫剤・携帯電話を携帯しておくのに加えて、最低限の応急処置知識も頭に入れておきましょう。
茂みや木の近くでむやみに騒がない
オオスズメバチのように土の中や木の穴に巣を作る種類もいます。
目に見えないだけで近くに巣があるおそれもあるので、茂みや木の近くではむやみに騒がないようにしましょう。
特にカブトムシなどがいる樹液の出る木にはスズメバチも集まってくるので、そのような木が近くにあるときはご注意ください。
まとめ
スズメバチは「怖い」「凶暴」というイメージが先行していますが、実際は近くにいても刺激しない限り攻撃してきません。
しかし驚いて手で振り払ったり、慌てて逃げたりしてスズメバチを刺激し、刺されてしまう人が後を絶たないのが現実です。
スズメバチの生態をきちんと理解すれば、危険を回避できます。
正しい知識を身に着けて、万が一鉢合わせしてしまったときにも、落ち着いて対処できるようになりましょう。
とはいえ、スズメバチはやはり危険な昆虫です。
もし身近にスズメバチの巣があったら、自分でなんとかしようとせずプロに相談してくださいね。
スズメバチの巣の駆除方法、業者の駆除費用等はこちらをご覧ください。
- 丸沢丸『超危険! スズメバチLIFE 図解とマンガでわかる最凶生物』講談社、2019
- 中村雅雄『スズメバチの真実:最強のハチとの共生をめざして』八坂書房、2018
- 小川原辰雄『人を襲うハチ 4482件の事例からの報告』山と渓谷社、2019